海外でビジネスをするには・・・⑤経営計画書を作ってみる
おはようございます。
1月から、自分の経験や体験を通じて感じた「日本の会社は、こうやれば、もう少し海外ビジネスをうまくできる」を書き始めました。
前回は、「自走式組織で社員が暴走しないようにするためには?」について書きました。
今日は、「経営計画書はどのように作成すれば良いのか?」について書いていきたいと思います。
社長が暴走するのを防ぐ
前回の「社員が暴走しないようにするためには?」に対して、今回は「社長が暴走しないようにするためには?」について、です。
皆さんも御存知でしょうか?社長って暴走してしまうんです。
社長って、私の偏見ですが、「ええ格好しい」なんです。
「ええ格好しい」なので、「年商〇〇億円」っていう言葉が好きで、ついつい受注や売上に執着してしまいます。受注のためには価格を下げることも躊躇せず、利益なき売上を増やしていきます。そして、受注への執着はどんどん強くなり、顧客与信を甘く見積り、「怪しい」顧客からの受注を増やしていきます。すると、「怪しい」顧客からの債権はなかなか回収できず未回収債権が積み重なっていきます。
一方、「ええ格好しい」なので、PL(損益計算書)を良く見せることにも執着します。長期未回収債権があっても引当金を計上せず、キャッシュを生まない利益を増やしていきます。こうして、PL上は利益があるのにキャッシュはなく、会社の資金繰りが逼迫していきます。
「そんな奴おらんやろ!」
あなたは、そうおっしゃるかも知れません。
しかし、残念ながら、本当に居るんです。
私は、前職で、「ええ格好しい」の社長を少なくとも2人知っています。
私は、台湾現地法人の社長就任時、自分自身が「ええ格好しい」の社長になってしまうことを非常に恐れました。そして、そうならないためには、どうすれば良いかを必死で考えました。
そして、私が言動に矛盾のないように、また、部下が私の矛盾に気づいた場合に指摘できるように、経営計画書を作成することにしました。
つまり、私から部下への「約束」として経営計画書を作ったのです。
方針をシンプルに伝える
小山昇氏の書籍を参考にして、見様見真似で経営計画書を作成しました。
できる限りシンプルに、分かり易く、会社としての判断基準を示すことに心を砕きました。
そして、私が導いた判断基準は、“Sales is vanity, Profit is sanity, but Cash is reality.”、です。
つまり、「キャッシュフローに貢献するか否か」に基づき物事を判断・決定する方針を宣言しました。
そのうえで具体的な行動指針として、以下の「DON’TS (やらないこと)」を決めました;
与信の低い客とは取引しない🙅
儲からないジョブは受注しない🙅
片務契約は受諾しない🙅
言い換えると、方針はキャッシュフローを稼ぐこと、そのための具体的行動指針がキャッシュを稼げない仕事をしないこと、ということです。
在職中、この方針と具体的行動指針をとにかく繰り返し伝えました。
ルールを明確にする
しかし、上記の具体的行動指針のうち、問題を生じるのが「与信」です。
社長や営業が、受注したいがために「身勝手な」与信判断をするのです。
そんな「身勝手な」与信判断を防ぐため、私は、顧客与信審査を客観的指標に基づいて行うことにしました。
具体的には、取引信用保険を購入し、保険会社からの顧客与信評価に基づいて、取下げ条件や受注可否を判断・決定しました。
つまり、与信評価の素人である社内ではなく、与信評価のプロである社外の力を「買った」のです。
また、受注審査や債権管理を担当する営業管理部門に「NO」と言える人を配置し、社内ルールの運用を徹底しました。
特に売上債権の回収状況をしつこくフォローすることで、例外を許さない社内ルールの運用体制を整えていきました。
キャッシュフローに関する社内ルール違反者を厳正に処罰する、といったことも行いました。
こうした取り組みは、売上債権回転期間を大幅に改善させました。
売上債権回転期間は就任前には6.4個月でしたが、就任4年間で約4個月も短縮し2.6個月となりました。
説明及び更新
経営計画書は、中国語が話せなかった私が、社員に自らの考えを正確に伝えるためのコミュニケーションツールとしても役立ったと思います。
就任4ヶ月後には経営計画書初版を社員に公表しました。
以降、毎年1月に更新版を作成しました。
更新版を社内で公表する前には、管理職に対して修正要求の聞き取りと説明会を開催しました。経営計画書の更新を通じて、管理職が「Ownership(当事者意識)」を向上してくれることを期待しました。
「言ってることと、やってること、違うやん!」
そのように部下に思われることが、私には一番こたえます。
皆さんも同じでは?
なので、経営計画書に書いていることを頑張って守ろうとする。
小山昇氏の言う通り、紙に書けば「守るべきこと」が明確になるのです。
だから私は皆さんに、経営計画書は作るべき、とおススメします。
ということで、今回、私が言いたかったことをギュッと要約すると;
社長は経営計画書を作るべき
方針はシンプルに伝えよう
ルールは明確にしよう
この記事が誰かの助けになれば嬉しいです。