擬人法
どうも、ナカです。
『擬人法』
「動物などをまるで人間みたいにあらわす方法。例えば<鳥が歌い、花が笑う>のような表現」(ドラえもん はじめての国語辞典:小学館より)
鳥のさえずりの美しい様が、まるで森公美子の歌声のように感じられないだろうか。
季節が移り変わり、最適な気候で咲き誇る花たちが、まるで笑顔を満天にしているように感じられないだろうか。
かなり日本語に習熟した高等な表現だと思うのだが、まさか5歳児の口から飛び出してくるとは。
『ドングリが風呂に入る』
おや、何の例えだい?
風呂を覗く。
本当にドングリが風呂にいる。
まぁ、先ほど
長女「ドングリちゃ~ん、お風呂入りましょうね~。」
という猫撫で声が聞こえていたのだが、まさか、と取り合っていなかった自分が甘かった。
妻に事情を聞くと、帰りの道端でドングリを拾ってきたから、お世話をするらしい。
走り回ったりしないし、こりゃあ良いペットを選んだなーと思っていたら、
長女「1週間だけの居候なんだよ」
とのこと。
急にドングリが、人に言えない事情を抱えた、さすらいの流浪人に見えてくるから、前情報って重要。
1週間と言えども、共同生活を送るとなれば、衣・食・住の手当ては必須だ。
≪衣≫
ピンク色の風船の口の部分を切ってスカート風にはかせる。ズレないように輪ゴムでとめて、一丁上がり。ストレッチ素材でやや肌寒さも残るこの季節にもピッタリだ。
≪食≫
人間の雑食を与える。
一緒に食卓に座り
長女「ドングリちゃーん、ご飯ですよ~。食べましょうね~。」
と、ごっこ遊び。
さすがにドングリに穴を開けて、米粒を詰め込むようなマネはしなかった。
≪住≫
服のもとになった風船の残りで、
長女「ドングリちゃんのベッドちゃん☆」
らしい。そして、ベッド以外に部屋・家具など無い。居候には、あてがうワンルームなど無い。これくらいの扱いで充分なのだ。
ついに昨日、約束の1週間を迎えた。
近所の公園でお別れらしい。
長男「ドングリ植えてあげるんだよ。大きな木が生えてくるかなー?」
前日までは、一つ屋根の下、家族同様、人として接していたのに、別れの日からは、また植物扱いらしい。世知辛い世の中だ。
穴を掘って、ドングリちゃんを入れ、土をかぶせて、おや、丁寧にタンポポの花も添えて、献花ならぬ献枝(その辺に落ちていた枯れ枝を手向ける)をして・・・。
父は思った。
「これは埋葬だ。」
ドングリちゃんも1週間の居候生活で温水に浸けられる拷問を受け、まさか命まで奪われるとは想像していなかっただろう。
居候を失った3人の勇者達。本日は海へ向かう。
長男「見てみて~、クラゲがいた~。陸に上げといたよ!」
ここに、また新たな犠牲者が。
子どもって残酷☆
ー完ー
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