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中村椋第十曲集「群青劇」解説

「群青劇」とは

群青劇_歌詞カード

2020年10月25日にリリースされた中村椋10作目のアルバム。

V系的サウンドと歌声、平沢進っぽいシンセとバカデカいティンパニ。
見た目は新宿ゲバルトのような学ラン。

収録曲は10曲。
別に10作目に掛けたわけではなく平沢進のオマージュ。
(平沢進のアルバムはだいたい10曲なのを真似した)
1反群像のブルース(Anti crowd blues)
2狂人たち(Lunatics)
3夜光性廃棄場(Noctilucent dump site)
4私という名のレプリカ(Replaceable person A)
5眠らない静物学者(Critical goodbye)
6苺売りの少女(The little strawberry girl)
7触手の恋(Tentacle's spectacle)
8放課後パリサイド(After school is parricide)
9蒼より黎く(Dawn from blue)
10春の後日(The future of spring)

1曲ずつ解説していくわね……

一曲目「反群像のブルース」

軍歌みたいな曲をローファイな感じでアルバム頭に据えたかった。

聞く人が聞けばわかるが
「同期の桜」と
「バージンブルース」と
「くちびるデモクラシー」が合体したような曲になってる。

この曲は是非大音量で聴いてほしい。
できれば街宣車くらいの感じで聞いてほしい。

冒頭のサイレン音は何種類も試して「これぞ」という物がなかったので、
試した音全部を混ぜて使っている。

歌詞カードは歌詞を覆うように演説文が配置されている。
読みにくいだろう?
これね、中村椋の常套手段。

群衆を嘲笑い
テクノロジーの副流煙で汚れた街の目を覚まさせる
演説するこの男は何者か?

二曲目「狂人たち」

2時間で作ったこの曲が原型。

左右を飛び交うピコピコの嵐。デンデンデンデーンと鳴る大太鼓。
1曲目で音量をデカくしてるとイントロでビビるかもしれない。ごめんね。

この曲だけシンセはsynth1じゃなくてファミシンセⅡを使っている。
これもフリーシンセなので安心されたし。中村椋は削減の男なのだ。

Bメロに当たる部分で左側から聞こえる謎の声は1曲めの演説を逆再生したものであまり意味がない。
本当はもっと危ないものをサンプリングするつもりだったけど危ないので止めた。

歌詞は、ある学生のよくある朝の風景を描写している。
曲名の元ネタは筒井康隆の「虚人たち」。

三曲目「夜光性廃棄場」

これ核P-MODELでしょ!?と言われてしまうかもしれない。

確かに平沢進と同じSynth1使ってるしフレーズの作り方も真似してる。
サビでは総勢20人の中村椋がバカコーラスやってるし、
ギターソロはいかにもデストロイ。
まぁ、許して。

この曲は全編Amだけ。
コード進行がめんどくさかったので。
進行しないことにした。

この歌詞を書いている頃、
ライチ光クラブの聖地が神奈川の夜光町と知った。
工場の煙突が立ち並ぶ街に学校があったら、
どんな灰色の生活を送るのだろうと思い歌詞を書き上げた。

大人になっても行き先は定められていた。
されど学校からこぼれ落ちてしまっては生きていけない。
今日も孤立した集団は
抑圧に耐え続けるだけの時間を過ごす。
教育と洗脳は何が違うのか?

四曲目「私という名のレプリカ」

ここからしばらくV系風味が増していく。

でもこの曲に関してはあまり特筆すべきことがない、
普通にいい曲。個人的には一番好きかも。歌いやすいし。

現在、MVを作ってもらおうと企んでいる。
中村椋の絵コンテ待ちである。ごめんなさい。

ある女性がいた。
彼女は苦しんでいた。
彼女は恋人に裏切られていると感じていた。
何度も遁走を画策した。
そしてついに彼女は成し遂げた。

仮タイトルは「成長痛」だったが
曲構成に対して曲名が素っ気なさすぎに感じたので変更。

曲名の元ネタは森博嗣の「夏のレプリカ」と
連城三紀彦の「私という名の変奏曲」。

五曲目「眠らない静物学者」

このアルバムで一番の難産曲。
ギターリフのズクズクがタイミング合わなくて苦労するわ
間奏の変拍子は難しいわ
メロディは高くて声出ないわで大変。

7弦ギターを使ってます。珍しく。
本当はあまり使いたくなかったんだけど
ズクズクやるなら7弦がいいわよね。やっぱりね。

「恋人の遺体」を静物画に見立てている。
歌詞中に「果実」「シャボン」
「オリフィス(砂時計のくびれ)」「夢見鳥(蝶)」
が出てくる。
これらは人生の空しさを表した静物画である
ヴァニタスでよく使われるモチーフなのだ。


彼は恋人を救いたかった。
しかしあまりにも彼は無力だった。
彼の後悔は彼自身を捻じ曲げてしまう。

六曲目「苺売りの少女」

ザ中村椋といった感じの曲ではないでしょうか。
早いシャッフルでリードがギター。
主人公は病んでる女性っぽい。

メロディがアホほど高い。
HiEとか出てるし。
でも不思議と歌いやすい。
変な曲。

マッチ売りの少女が元ネタということで、
アンゼルセン童話モチーフが歌詞中に登場する。
「赤い靴」「人魚」「パンを踏んだ娘」
「人魚」という歌詞に見覚えがある人は偉い。
この曲の主人公はレプリカ子の友人だった。

彼女もまた苦しんでいた。
酒に溺れた親。
生活費は無く。
教師に相談した。
生き延びる術を手に入れた。
酷い教師だ。


買ったことないから知らないけど
一回苺って安くない?教師酷すぎない?

七曲目「触手の恋」

曲名だけはだいぶ前からあった曲。
かなり自分の好みに仕上がった。
これもあまり特筆すべきことが無いかな。

歌詞も


貴方を弄ぶ幾つもの指の一つで構わない
その他大勢の僕でいい


に全てが詰まってる。

八曲目「放課後パリサイド」

ハイ出た難産曲その2。
サビが苦しいし早い。

こちらも7弦ギター使ってます。
かっこいいよね、7弦ギター。

間奏でテンポが遅くなるんだけど、
なんでテンポを遅くしたのか自分でもよくわからない。
気付いたら間奏が遅かった。
このアルバム唯一のシャウトコーナーもあるよ。

彼もまた彼女を助けたかった。
悩む彼の前に現れた男。
男は彼女を助ける術を伝えた。
それは全てを消すことだった。

九曲目「蒼より黎く」

平沢進風味な曲を足したいなと思い作った。
サビのディレイが特徴的でそれっぽいでしょう。

ギターフレーズは一番最初に弾いたデモテイクが良かったので
そのまま使ったった。
もう弾き方覚えてない。

彼は成し遂げた。
望みの全てを壊し尽くした。
苦痛の全てを焼き払った。
そして夜が明ける。

十曲目「春の後日」

アジアンなテクノポップなやつでハッピーエンドを演出したかった。
もちろんハッピーエンドではないけど。
そもそもエンドしてないけど。

イントロで何やら喋っているのは
中村椋が般若心経を唱えたものをサンプリングして
切り刻んで並び替えてメロダインに流し込んで形を整えたもの
流石に本職のお経をサンプリングするのは罰当たりすぎて自分で唱えたよ。
そもそも般若心経をサンプリングするのがどうかと思うけど。

曲名の元ネタはたまの「夏の前日」。

つまりどういう話なのよ?

凄くざっくり言うと

恋人を亡くした後悔を引きずった男が
別の男をそそのかして街を破壊させる話

です。

零れ話

・ジャケットの工場写真はメンディさん御提供
 本当に助かりました。ありがとうございます。

・ジャケットで持ってる遺影の女性は
 AIで作られた「存在しない人物」をたくさん集めて合成した
 「この世で最も存在しない女性」の写真です

画像2

・学ランはヤフオクで買いました
 どっかの中学生のお下がりを着て闊歩する32歳

・M3のwebページにバナーを載せた
 見てない方も多いと思うのでここに供養する

群青劇_バナー

・どうしても右綴じの歌詞カードにしたくて業者を探したが
 少数で対応してくれるところがなく
 仕方ないので全数中村椋が焼いて梱包してます

・Twitterで「#中村椋第十曲集_群青劇」と検索すると
 制作進捗を追うことができますよ

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