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005 曖昧な時の話

* story

二人がまだ、お付き合いをする前、“彼女と彼女”という関係になる前の、曖昧だった時の話です。

* couple

———交際2年、もうすぐ三十路。
29歳の槍場さんと28歳の両刀さんは、おねえさんとおばさんが交わる年頃を迎えつつ…、周りからは「彼氏はまだかー!」「結婚はまだかー!」「いい男紹介しようか?!」「嫁にもらってやろうか?!」「高望みしてると賞味期限切れるよ?!」と煽られている真っ最中。あ〜、コドモの恋みたいに「好き!」だけで気楽に暮らせたらいいのに、オトナの恋愛は生活も人生も隣り合わせ…。そんな彼女たちの日常。

〈005〉 staff
story:Lpaca Nakamura
author:Lpaca Nakamura, Ching Nakamura
illustrator:Ching Nakamura




〈005〉


この当時の
ネコちゃんとヤリバさんはまだ曖昧な関係。

どちらからも付き合おうってならない。

ヤリバさんは、

(ネコちゃんのこと大好きだけど
ネコちゃんは私のことどう思っているのかな…)

で、頭がいっぱい。

好きなのを伝えすぎたら、
自分の方が相手を好きって思われたら
恥ずかしいし自分の負けみたいだから

それに…

だから
「私たちの関係が曖昧なままでもいいよ」
っていうフリをしている。

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或る日の 槍場 陽達の日記

○月△日 (×曜日)

一緒にいる時間は充実していると思う。多分お互いに相手のことは好き。
…だといいなって思っている(冗談っぽく好意を示してくれたりもするけど本当のところはわからない)
添い寝をしてキスをして………してもらうたび、させてもらうたび私は幸せな気分になったり落ち着いた気分になったりする。
なんとなくこの心地いい関係がずっと続くといいなって思う
…けど付き合うっていうのはよくわからないから私たちはともだち。
世間ではこういう関係をなんて呼ぶんだろう
でも私気づいているよ。あなたがこの曖昧な関係をすこしずつ不満に思い始めているの。
それでもこのまま私のそばにいてくれるために我慢しようとしてくれていることも。

多分…だけど、単純に「付き合っていないのにそこまでは」…とか、「彼女でもないのに変だよね」とか、「付き合っていたら別だけど」とかって言われることが増えたり、なんとなく自分の機嫌を扱い損ねているときが増えたみたいに思うの。

「付き合おうって言いそうになってやめた」とか「付き合おうって言われたらすぐにって思ってる」とは言うけど「付き合おうよ」とはいわないの、悩まずに済んでありがたいようなもう一歩頑張ってほしいような…よくわからないや

この不思議な関係が終わる日のことを考えた
そうしたら付き合っているわけでもない、私の寂しさをうめてくれるやさしい人にいなくならないでほしくて泣いちゃった
なぜだろう?手に入れてしまった温かさを手放すのが惜しい?
…というのも正直なくはないか。
でもそれ以上に多分私はあなたが好き

好きだからそばにいてくれるだけであたたかいきもちになる
本当に好きなのかな?本当の好きってなに?
自分の好きに自信がもてないのに先の約束をするのは怖い
私は…どうすればいいのかな



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○月○日 (○曜日)

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