『万引き家族』レビュー

 今回は、是枝裕和監督『万引き家族』(2018)のレビュー。これは夏が近くなると見たくなる映画で、2回目、3回目となると、あぁここでこうだったのか、と新たな発見がある。最初に見た時は、家族の繋がりが不明だったが、今回見て、はっとしたことがたくさんあった。
 特に印象的だったのは、安藤サクラさん演じる信代のセリフで、事情聴取で死体遺棄について聞かれた際、「捨てたんじゃないんです、拾ったんです。捨てたのは他にいるんじゃないですか」(正確には引用していない)という言葉である。この家族のつながりは、血のつながらない、おそらく同じ虐待という境遇にあった者たちであり、子どもを「拾う」と表現している。だから、ここで「社会」に向かってこのように言ったのだ。また、城桧吏さん演じるショウタは、「学校は勉強ができない奴が行くところなんだ」と言うが、警察官に、学校は勉強だけじゃなくて友達との出会いがあるんだ、と教えられる。しかし、ショウタはこの後、学校の友達の話を一度もしない。自分で本を読んで釣りの方法を学んでいるのだ。学校が勉強だけじゃなくて友達との出会いもある、だから学校に行かないのはダメだ、という大人は学校で出会う友達が誰だけ狭い世界かということを考えていない。ショウタはすでにいろんな大人に出会い、いろんなやり方で一生懸命生きていたのだ。
 この映画の特徴は、社会と完全に対立した家族を描いているのであるが、一見何も考えずに世間の言われるがままに世界を見ていると、彼らのような生き方は誰も理解できないだろう。しかし、この映画のような視点で見ると、我々は最後の警察官たちの側にいたのであり、さらにそれを「常識」であると思っていたことに恐怖を感じる。こうして「世間」の側に立って、彼らを殺してしまうのだ。だから虐待も貧困も自殺もなくならないのかもしれない。最後のシーンで、佐々木みゆさん演じるゆりちゃんが空を見上げて少し口を開ける。その瞬間映画は終わる。彼女は何を思っているのか、見る者たちは考えさせられる。

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