『センス•オブ•ワンダー』感想
レイチェル•カーソンの『センス•オブ•ワンダー』(上遠恵子訳 新潮社)を読んだ。カーソンの最後の著作で、70ページほどの短いエッセイだ。カーソンの甥のロジャーとの、自然の中での素晴らしい体験が書かれている。
この本は単なるエコロジストの主張の類ではない。自然の中での体験の素晴らしさをありのままに綴っている。浜辺のカニを探し、雨の森の中の匂い、鳥が奏でる音楽など、カーソンの美しい文章に引き込まれ、まるで自分がそこにいるように感じる。
特に素晴らしいと思ったことは、子どもとの自然の接し方だ。自分が鳥や植物の名前に詳しくなくても、その感動を子どもと一緒に共有することが大切だと教えてくれる。自分が知識を持っていることは、自然の中で味わう匂いや音の感性を持つことに比べたら、ほとんど重要ではない。名前がわかることに越したことはない。でもそれは、自然の魅惑のほんの一部でしかないということだ。
我々は時に、知識を持っていることをマウントしたり、持っていないことに対して劣等感を抱いてしまったりする。しかし、一歩自然の中に繰り出せば、それがどれほどつまらないことか、分かるだろう。
子どもの頃に体験した自然は、生涯忘れられない思い出で、それがきっかけに、たくさんのことを吸収するようになる。自分が将来子どもと接することがあったら、カーソンのように一緒に自然を楽しみたい。自然の中にきっといつも人は飛び込みたくなるのだろう。