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「愛の不時着」

 かなりかなりの遅ればせながら、「愛の不時着」を観了。このドラマのためにNetflixに加入した友人たちからのおススメもあり、話題作なのだから観ておかなくっちゃね~というくらいの軽い気持ちで観始めたら、見事にハマってしまいました。韓流ドラマにハマったのは「ファンジニ」以来、数年ぶり。トータル24時間ほどのドラマを丸4日で観てしまい、その後もお気に入りのシーンをスマホで見直すという、ネトフリ廃人と化してしまいました。

 ご存じの通り、パラグライダーに乗っていた韓国の財閥令嬢が、竜巻に巻き込まれて非武装地帯から北朝鮮に不時着し、北朝鮮の軍人に助けられ、やがて二人は恋に落ちるというラブストーリーですが、笑い、アクション、銃撃戦、南北問題、家族問題、加えてコロナ禍で海外旅行も夢のまた夢のこのご時世、スイスの大パノラマ映像も楽しめ、ヒョンビン超カッコいい、キュンキュンシーン満載と、これでもかというくらいにぶっこんできます。それでもちゃんと一つのドラマとしてまとまっているのが、本当にすごい。セリフも無事回収されており、もう完全に負けました、参りました。

 基本はラブストーリーですが、二人の思いが深まるにつれ、相手のことを思いやる会話に変わってゆくのが、なんともまぁ、美しいこと。「新明解国語辞典」によると、「恋愛」とは「特定の相手に対して他の全てを犠牲にしても悔いないと思い込むような愛情をいだき、常に相手のことを思っては、二人だけでいたい、二人だけの世界を分かち合いたいと願い、それがかなえられたと言っては喜び、ちょっとでも疑念が生じれば不安になるといった状態に身を置くこと。」だそうですが、まさにその通りの主人公たちの言動に、久しぶりにそんな心境になってみたいもんだと、しみじみ思ったのでありました。

 そしてこのドラマの大きな特徴は、北朝鮮の暮らしの細かな描写と、北朝鮮の人々に対するまなざしの温かさ。通常ではなかなか知ることのできない北朝鮮の様子は、脱北者からしっかりと取材したに違いありません。また、親子や兄弟などの関係が、韓国においてはかなり冷ややかに描かれているのに対し(財閥の跡目争いもからむので、止むを得ない部分もありますが)、北朝鮮では密接なものとして描かれています。韓国では失われつつある純朴さや伝統的な家族関係が、北朝鮮にはまだ色濃く残っているのではないかという、北朝鮮へのノスタルジーが感じられます。「南北が統一したら」というセリフがちょくちょく出てくるので、「統一」を意識して作られていることは確かでしょうが、資本主義の最先端である南と、民族としての美点を残す北。足して2で割るくらいがちょうどいい、と制作者が感じているのではないかと思いました。

 また、セリフに出てくる「愛」や「夢」、「希望」や「未来」といった言葉が自然で、うすら寒さが感じられなかったのも特筆すべきところ。これは主人公たちが深く悩みながらも現実に立ち向かい、「南北問題」という大きな課題にも向き合って、真剣に生きている証なのかもしれないと、自分の日常をちょっと反省したのです。つい自分のことばかりを考え、自分の周囲に問題がなければそれでいいと思い、年を重ねると共に「愛」や「希望」を忘れ、「未来」を「夢」みることからすっかり遠ざかっていたと。現実を受け入れて淡々と生きていくのがベストと思い、諦めの気分が漂う今日この頃でしたが、夢を持って生きていたいとか、誰かのことを心から大切に思ってみたいとか、これまでならちょっと照れくさかったようなことを考えていることに驚きます。

 1本のドラマでこれだけいろいろなことを考えさせられたのは、久しぶりのこと。視聴者が観たいと思うシーン満載のラブストーリーでありながら、様々な思いも抱かせてくれる、最高のドラマでした。・・・日本のドラマを見る気持ちになれるかな。 

 



 

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