一人暮らし、Gとの闘い【画像なし】
19:00 遭遇
その日はいつもと変わらない日常で、在宅勤務を終えた後、少しLINEの返事をし、TVを見ながら夕食を食べていた。今日もいい一日だったなと洗面所に向かったとき、目の端に違和感があった。
Gが、ひっくり返って死んでいる。
私はシェアハウスに住んでおり、ここでは、個室、共用のキッチン、トイレ、シャワールーム、洗面台が使える。
Gがいたのは洗面台の前。他の住人が殺すだけ殺して、回収し忘れたのだろうか(そんなことある?)
Gは大嫌いで苦手だが、動かないやつはなんとかできる。ティッシュをかぶせておそるおそる回収し、ゴミ箱に捨てた。
21:00 遭遇②
夕飯の片づけをしたあと、部屋に戻ってYouTubeを見た。すると再び目の端に違和感があった。
いる。しかも動いてる。
1日に2度も遭遇するなんてことがあるだろうか。生き返ったのかと思うくらい、さっきのやつとサイズも形もそっくりである。
私は急いで共用倉庫に常備されているゴキジェットを取りに行った。しかし、ない。誰かが部屋に持ち込んでいるのか、洗面台のやつを倒した後、うっかり部屋に持ち帰ってしまったのか。
私は急いで「ゴキジェット 代用品」で調べた。台所用洗剤、ハイターなどが出てくる。すぐさま共用キッチンから使えそうなものを全て持ってきた。
22:00 消失
やつはしばらく天井を走っていたが、急に動きが鈍くなった。体がからまったかのように折れ曲がり、触覚の動きも遅い。そしてついに、動かなくなった。
もしやと思い、部屋のあちこちにおいてあったブラックキャップの中を覗く。ブラックキャップの殺虫成分は1日以内に効くと聞いたことがあり、その効果が出たのかもしれないと思ったからだ。
だが、特にかじられたような形跡はない。関係ないのかと思い再度天井を見上げると、
いない。どこにもいない。
ブラックキャップを覗いていたのなんてせいぜい10秒くらいだし、天井から壁までも結構距離がある。どこへ消えたのか。急に恐怖感が増す。
以前プログラマの人が、バグを直してないのにバグが直ってる恐怖を、Gが消える恐怖で例えていたが、後者の方が数百倍怖いのではないかなどと考え始める。
私は部屋の真ん中でしばらく臨戦態勢をとっていたが、1時間してもヤツは現れなかった。
23:00 一時休戦
このまま待ってても埒が明かないので、一旦お風呂に入ることにした。恐る恐るシャワーセットを手に取り、中身を確認してから部屋を出た。関係ないはずなのにシャワールームも隅々まで確認してしまう。
入浴後、部屋に戻って再度部屋を見渡したが、いない。スキマから外へ出たのか、隣の部屋に移動してたら申し訳ないななどと思いつつ、とりあえずTVを見ることにした。
0:00 再会
30分ほどTVを見ていると、本日3度目の違和感。
ついに出た。
さっきと違い、目線ほどの高さをうろうろしている。台所用洗剤もハイターも、攻撃するには絶好の位置だ。
しかし、勇気が出ない。私がGで何より嫌なのはあのすばやさなのだ。アリやカブトムシではありえない、あのスピード感が本当に無理なのだ。攻撃して走り回る姿を想像するだけで手が震える。
ヤツはずっと目線より下にいてくれたが、私はしばらく恐怖で手が出せなかった。
1:00 決着
ヤツは壁から床を経て、腰くらいの高さの棚へ移った。その棚には私の貴重な保存食がわんさか入っており、この部屋で最も入られたくない場所だった。ヤツが棚の側面へ回ったとき、ついに危機感が恐怖を押しのけた。
私はヤツにむけてハイターを噴射しまくり、逃げた先の床へ台所用洗剤をぶちまけた。動きが鈍くなったところに、再度ハイターをかけまくった。泡の中にうっすら見える茶色い背中が、動かなくなった。
終わった…
1:30 終戦
私はそのまま、泡にくるまれたヤツを、ウェットティッシュにくるんでごみ箱に捨て、絞った雑巾で床を拭きはじめた。床は拭いても拭いても泡がのこり、結局深夜に10回以上、部屋と洗面台を往復することになった。
30分くらい後片付けをし、少しの安堵と大きな疲労を感じながら、私はベッドに入った。部屋の床は今までになくピカピカになり、塩素の匂いが充満していた。
こちらの記事を参考に、書かせて頂きました。https://cancam.jp/archives/609664