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生かさず殺さずの就職活動 

「就職活動ってさ、卒業してからがいいんだよね」だって、さぁ卒論とかあって忙しいじゃん。なんて言いながら俺にとっての本命クンが合格くれるのかやっぱり気になる。本命クンは面接のとき、皆に質問して、皆に目を合わせていたから絶対受かるか分からない。だから俺は第二志望の企業なんかにエントリーなんてしている。それに絶対決して誰かを特別扱いなんてしない。単なる「就活生」として接しているだけだ。
 22日の昼、他の企業からの野獣のような圧迫面接からの帰り、本命クンからメールがあった。「今から面談できるか?」「うぃっす、30分後に行きまっす!」、、、、、、嘘だ。本当は5分で行ける距離だけど、圧迫面接で傷ついた俺の足はなかなか動いてくれない。自慢のサーフ系ボディビルダーの肉体をアピールポイントにしていたけど、下半身が貧弱すぎる、顔が北京原人みたい、南佳也には全く似ていませんと言われて、俺は前が見えなくなるほど泣いていた。けど、本命クンを待たせちゃダメだよな。重い腰を上げ本命クンのところへ向かう。
「おい、どうして泣いているんだ」「うぃっす、、、、、少し目が、、、」気にする必要なんか全くないのに、あの言葉がずっと胸に突き刺さっている。「少しあっち向いててくれませんか」「どうしてだよ」「少し、泣きます」。
 20分以上?30分以下?泣いたら落ち着いて、ようやく本命クンとの面談が始まった。すると、いきなり「はい、プレゼント」なんていいながら封筒を渡してきた。何かなと思って開けたら、すっげー!合格通知じゃん。
けど、喜んでいたのもつかのま、「これから面接してもらうから」だってさいくらなんでも急すぎるぜ。でもそんなこと言える訳ないから、「ウレシイっす!面接したくてたまらないっす」すると、「じゃあ今からたっぷり聞きまくるからなぁ」だって。でもさぁ、いきなり面接で、しかも封筒をわざわざ手渡しするのって少し変わった会社だよなぁなんて思いながら階段を上がって面接室へ向かう。ノックは三回とかいうけど、正直言われなくても勝手に三回ノックしてるから、マナーであると明言する必要あるのかなぁ、なんて考えていたらとうとう部屋の前に着いた。俺は、元気よく挨拶しながら席に向かう。
「君が拓也君だね」、「うぃっす、サーフ系ボディビルダーの拓也です」「そうですか、お座りください」
 何だか今までの面接とは雰囲気が全く違うぜ。肩書も年齢もかなり上の人だってことは想像つくけど、種付け競パン姿のまま合ドラ仕込まれてマジ狂いな拓也の自己PR写真を見ても表情一つ変えない。もしかして、拓也が激エロなモロホスト過ぎて興奮を隠すためにわざと素気ない態度取っているのかな(笑
「拓也君、エントリーシートに書かれていること以外の志望理由、自己PRをお願いします」「、、、、、、、、、、、、、うぃっす」
 そこから先の記憶は何も残っていない。ただひたすらに間髪入れず質問されまくり過去掘られまくり言葉飛びまくり白目剥いて吠えまくり。だいたい、エントリーシートに書いていないことなんか聞くなよな。考えに考えたことなんだからそれ以外のネタはないんだよ。
 「……接は以上となります」「何か最後に一言ありますか」「うぃっす、特にありません」「本当にいいんですね」「はい」「、、、、、そうですかありがとうございました、何かご縁がありましたらまた、では気を付けてお帰り下さい」「うぃっす、本日はありがとうございまっす」
 拓也のもとにお祈りメールが届いたのはその日の夕方頃だった。落選した理由はよく分からないけど、拓也はエントリーシートはちゃんと書いているし筆記試験も対策済みだぜ。面接はウリで培ったトークスキルで乗り越えられると思うから隙は一切ないはずだ。一体何がいけないのか分からないぜ。でも面接までは進むから俺のやり方は間違っていないはずだぜ。面接はしょせん運とアドリブ力で何とかなるって言うから対策講座も受けない。ていうか今更キャリアセンターに頼るのなんか後ろめたいんだよなぁ。だいたい、誰かに頼るとか女がすることだからできるわけねーよ。
はぁ、結局俺は生かさず殺さずの就職活動を続けていくんだろうなぁ。




頭がおかしくなりそうなので今はここまでにしておきます。

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