『701号室 vol.2』
開演前のご挨拶
本日はご来場、誠にありがとうございます。
今夜のショーの内容は、とてもシンプルです。
私たちgoateatspoem.[ゴートイーツポエム]がセレクトした音、芝居、空間の組み合わせによるただのプライベートな『現象』と思っていただけたら幸いです。
ステージからは皆様のことがよく見えます。
お集まりいただいたすべてのお客様の中に流れている目に見えない時間軸の速度さえも。
今夜、皆様それぞれの時間軸に、『しるし』をつけさせていただきます。願わくばその『しるし』が、皆様のそれぞれの今夜以後の日々が美しく、実り多く、楽しい毎日にすることを、心から願っています。
最後に、開演の前に、以下のプロローグをお読みくださいませ。今夜、この場に訪れるのは私たちとお客様以外にも、目には見えないお客様も多数ご来場予定しております。
最初のお客様は、とあるピアニスト。
目を閉じて見える世界と、
目を開けて見える世界が、
今夜、繋がります。
それでは、間もなく開演致します。
最後までごゆっくりご鑑賞のほど、
よろしくお願い申し上げます。
当ホテル総支配人より
プロローグ ① 〜 3つの分界点 a,b,c 〜
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a. あの世とこの世
b. 現実と虚構
c. 過去と現在
現象の境目に存在する分界点(a,b,c)を直線で結んで現れる三角形の中心点から、任意の一辺の中点とを結んだその直線上にある建物。
『SERIAL HOTEL (シリアル・ホテル)』
街の人はもちろんのこと、遠方からの旅行客、ビジネスマン等で、一年を通して、多くの人々がこのホテルを訪れる。どこにでもあるごく普通のホテルだが、ある一定の特別な条件を満たす夜に、ここはもう一つの別の世界(パラレルワールド)と繋がる『特別な部屋』なるものが出現する。
その『特別な部屋』での宿泊を目的に訪れる人々の中には生ける人間ばかりではなく、死者、この世に未練や後悔を残した幽霊、魂、または概念そのものだったり、時には、様々な人々の大切な思い出だったり。
今夜、ある一定の特別な条件を満たした特別な部屋、それが『701号室』。
プロローグ ② 〜死の世界から現の世界へ〜
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2021年6月29日(火) 午前4:21 @死の世界
・シリアルホテルのプライベートビーチ。
間もなく日の出。夏。空気はひんやりと冷たい。辺りが徐々に暗闇から青白くなり始めていく。
・一枚の楽譜を手にした一人の痩せた女性。亡くなる前は技巧派天才ピアニストとして、世界中を旅していた。誰もたどり着いたことのない美しい音の組み合わせを求めることに取り憑かれ命を落とす。その直後、死と引き換えに求めていた美しい音の組み合わせを手に入れる。叶うならば現の世界に戻って、愛する人に、その曲を聴いてもらいたい思いに取り憑かれたまま、死後の世界のシリアルホテルへ向かう。
・死後の世界の明け方のプライベートビーチと現の世界のシリアルホテルはつながっている。ピアニストD氏は思い切って海へ最後の譜面を握りしめて飛び込む。
2021年6月29日(火) 午後4:21 @現の世界
・夕方、現世の615号室内。この部屋の宿泊客はまだ到着していない。この日、誰が来るのかをD氏はあらかじめ知っている。室内のグランドピアノで、最後の曲を試し演奏するD氏。徐々に慣れてくる。曲名は『美しいとは』。ドアが開く音の方へ振り返るD氏。
そこに立っていたのは、命を絶つ前のD氏。
死後の世界のD氏が、現の世界に届け、残したかったものとは一体何だったのか。
音楽とは、自己愛とは何なのか。
2021.06.29.18:30 チェックイン
001 615号室:ピアニストD
002 真夏の雨
003 301号室:小説家の声
2021.06.29.18:45 チェックイン
004 一日
005 現のカーニバル
006 615号室:ベルボーイの指輪
2021.06.29.19:45 チェックアウト
次回、8/26(木)『701号室 vol.3』開催決定。ゲストにApsu shusei(文様作家/怪談蒐集家)を迎えて、夏の夜、怪談話、アンビエントな夜。
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