(保存版)つくば市「平成29年度市政運営の所信と主要施策の概要」
平成29年3月つくば市議会定例会の開会に当たり,予算及び議案等の提案に先立ち,平成29年度の市政運営に対する所信の一端を申し上げます。
はじめに
昨年11月の市長選挙から,早や3か月が過ぎましたが,今では,多くの職員も私の考える市政について,真摯に受け止めてくれており,私は,そんな職員の誠実さを感じています。
市の方針や重要施策を審議する庁議での議論も,自由に活発なものとなり,庁内の雰囲気も変化してきました。職員が明るくなったという声が,市民からもたくさん届いています。
市役所の職員は非常に優秀です。私が掲げた公約を,どうやって実現させて市政に反映させるか,一生懸命考えて誠実に取り組んでくれています。
だからこそ,首長が出す方向性が非常に大事であると思っています。首長が明確な基準もなく場当たり的な行政運営をすれば,職員は戸惑い,市政は停滞してしまいます。そして,目指す方向性を誤れば,市全体が危機に陥ることになってしまいます。
現在,日本では,「格差の拡大」「高齢化の進展」「子育て環境」「地球環境の保護」「若者の就業」など様々な課題が山積し,つくばでも同じような課題がたくさんあります。子育てについては,保育士不足,公設民営の学童保育など,まさに放置されてきた問題が保護者を限界まで追い詰めています。西武筑波店の撤退のみならず,中心市街地においてもあらゆる対応が後手に回っています。周辺市街地においても衰退の一途をたどり,不便さを訴える市民の声はないがしろにされてきました。
今のつくばは,危機的な状況にある。これが私の認識です。地方交付税が減り,財政状況も決して明るい見通しがあるわけでない中,市民生活を守る政策も打ち出されてこなければ,明日に対して積極的な攻め手の政策も,どちらもなされてこなかった。予断を許さない状況にあります。一刻の猶予もない政策課題が,ひとつやふたつでなく山積しています。新年度,私は市長として,これらの課題に正面から向き合い,どんなに課題が多くともひるむことなく,言い訳をすることもなく,市民と対話をしながらすべてを自分の責任において全力で取り組んでいく,そんな市政運営を行っていきます。
秀峰筑波義務教育学校の建設の遅れの問題では,PTAや地域の皆さまと対話を積み重ねて開校時期を決定しました。就任後,教育長がリーダーシップを発揮してくれたことは大きな力になりましたが,それでも出した結論が,全員が満足する結果でないことは認識しています。ひとつの正解が存在しない中,様々な声を踏まえて,何よりもこどもたちを第一に考え,現時点で最適と思われる判断をしました。
すでに他の分野においても,そのような課題がたくさんあります。全員を満足させることはできない。その中で丁寧な対話を積み重ねることが,市民第一の市政につながることであり,その積み重ねが,私が掲げる「世界の明日が見えるまち」として,「世界の明日は,つくばを見ればいい」と言われるような数多くの「つくばモデル」につながっていくと考えています。それでは,市民第一の市政による「世界の明日が見えるまち」の重点施策について申し上げます。
重点施策について
(1) 安心の子育て
少子高齢化が進み,日本は人口減少社会に突入しました。そのような中,つくば市でも2035年の25万2千人をピークに人口減少に転じると予測されています。
しかしながら,つくば市は,つくばエクスプレス沿線を中心に,人口が増加している数少ない自治体の一つです。私は,これを機に,安心の子育てができるまち「つくば」の魅力を高める施策を強く進めていきたいと考えています。
待機児童をなくすため,施設整備を進めるとともに,保育士の確保にも力を注いでまいります。
そのために,民間保育士一人あたり月額3万円の補助による処遇改善を行います。
これまでの市政は,民間に枠を用意させて待機児童を解消させる,と言ってきました。しかし,民間で保育士が確保できないことが問題になっている中で,枠を用意して問題を解決しているかのように言っているのは,誠実な行政の態度とは言えません。
私はこれまで,民間保育所の皆さまと様々な対話を積み重ねてきました。表面的ではなく,問題の本質がどこにあるかを考えたとき,官民格差を是正し,他産業と比べても約11万円低いと言われている保育士の給与に触れないわけにはいきません。
おそらく,日本の自治体で月額3万円の直接的な処遇改善をしているところはほとんどありません。本来は国の仕事だと思っていますが,国がやらなければ自治体が歯を食いしばるしかありません。現場を守るために,市民の生活を守るために,子育て世代への投資を促すために,つくばが日本をリードしていく,その意思表示です。
これら「子育て」に関する施策を,一元化して強力に推進するため,「こども部」を設置したいと思います。縦割りではなく,子育て世代への必要な情報とサービスを市民に提供し,安心して子育てができる「つくば」を作っていきます。
(2) 未来を担うこどもを育てる教育
かつて,イギリスのブレア首相は就任の演説の際に政策の3つの優先順位を問われ「教育,教育,そして教育だ」と答えました。私にとっても,任期中の最優先課題は教育です。
だからこそ,「人が人とつながって社会を作る力」である「社会力」の提唱者,門脇教育長を選任しました。
もちろん学力をつけることは大事ですが,これからの正解のない時代を生き抜いていく中で,自分自身が社会にどういう働きかけをしていけるかということが,人格形成においても,また,本当の意味で世界を動かしていく人材を育てることにおいても必要なことだと考えます。
私はこれから,門脇教育長とともに「学力から社会力へ」を提唱し,「社会力」を伸ばす取組を,強く進めていきます。
同時に,教育インフラへの投資は積極的に行っていきます。「秀峰筑波義務教育学校」の建設の遅れは検証する必要がありますが,老朽化が進む学校等の改修などは,教育環境を整えていく上で大切なテーマであり,学校等適正配置計画の見直しも進めていきます。
(3) 市民と地域に寄り添い,ヴィジョンを描く
筑波地区,大穂地区,豊里地区,桜地区,谷田部地区,茎崎地区,それぞれの地域の可能性を見つめ直していきます。各地区に「(仮称)相談センター」を設置し,研究学園にある市役所まで来なくても,様々な要望を各地区で受けられる仕組みを作ります。
あわせて,「(仮称)周辺市街地振興室」も設置します。旧市街地をどうすれば再生できるか,地元の皆さまと一緒に考え,地域の未来を描いていきます。
一方,中心市街地であるつくばセンター地区を含めて筑波研究学園都市建設によって開発されたエリアでは,大型店舗撤退や公務員宿舎廃止等で都市機能が大きく変化しています。これらのエリアについても,「(仮称)学園地区市街地振興室」を設置し,中心市街地の活性化などを検討してまいります。
そして,公共交通体系の見直しを進めていきます。「車がなくてもどこにでも行けるまち」を実現するため,地域でどういう声があるのか,そしてどういう交通体系であれば持続可能であるか,時間がかかっても,しっかりと声を聞き,市民の足として利便性を高めていくことを目指します。
(4) 筑波研究学園都市の使命を果たすため
1963年の筑波研究学園都市の閣議了解から54年,つくば市の誕生からは30年が経とうとしています。
しかし,つくばは果たして「世界のつくば」への期待に応えられるまちになっているでしょうか。科学技術が市民の幸せにつながっているかというと,それを体感できる部分は多くはないと思っています。
科学技術で市民の生活を向上させることは,研究学園都市が果たすべき使命の一つであると考えます。科学技術と情報を,市民の生活の向上に活かす取組を進めるために「政策イノベーション部」を設置したいと思います。政策イノベーション部において,市内の大学や研究機関等とも連携を深めながら既存の政策に変化をもたらし,筑波研究学園都市ならではの施策展開を目指します。
(5) 行政の見える化(総合運動公園問題の検証)
昨年の12月議会にて,総合運動公園問題について,どこで何が決定され,どう進められたかを検証し,この問題の完全解決を目指すとお話ししました。
本年1月に,つくば市総合運動公園事業検証委員会を設置し,現在調査を進めています。そして,4月過ぎには検証結果が提出される予定です。
この問題の検証を通して行政の課題を明らかにし,市政の重要施策の決定についてのルールを作り,それを行政経営の指針とし,行政経営の適正化・透明性の向上を図っていきます。
会議公開条例の策定や,公文書管理の指針等も定めていく中で,検証可能な行政運営を行います。
平成29年度予算の概要
つくば市の財政を取り巻く環境は,決して楽観視できるものではありませんが,「世界の明日が見えるまちつくば」の実現を目指して,さまざまな政策を展開するため,「選択と集中」の観点に立ち,限られた財源の効率的な配分に努め,市民が真に求めているものを重点的に施策化する予算編成を行いました。
その結果,平成29年度当初予算の規模は,
一般会計 876億7,200万円
特別会計 465億8,401万6千円
水道事業会計 71億9,339万円
合計 1,414億4,940万6千円となっております。
このうち,一般会計における前年度当初予算との比較では,60億5,800万円,7.4%の増となっております。
歳入面では,市税のうち,個人市民税,固定資産税などについて増加が続いており,市税全体では,前年度比5.3%の増となっております。
歳出面では,保育士等処遇改善費補助金の新設や,民間保育所運営委託料などの民生費が伸びているほか,リサイクルセンター建設事業やクリーンセンター設備改良事業などの大きな事業を進める衛生費については,前年度と比較し,40億1,372万6千円,77.4%の大きな伸びとなっております。
平成29年度の重点施策
市民に寄り添い,「世界の明日が見えるまち」を目指して進めていく平成29年度の重点施策について申し上げます。
平成29年度の市政運営は,私が公約に掲げた6つの柱で取り組んでまいります。
まず1つ目が,「徹底した行政改革 ~市民第一のつくば~」
2つ目が,「安心の子育て ~こどもとママパパにやさしいつくば~」
3つ目が,「頼れる福祉 ~すべての人が自分らしく生きるつくば~」
4つ目が,「便利なインフラ ~広いのに近いつくば~」
5つ目が,「活気ある地域 ~地元で頑張る人と会社が報われるつくば~」
6つ目が,「誇れるまち ~『一緒に住まない?』と誘いたくなるつくば~」
です。
(1) 徹底した行政改革 ~市民第一のつくば~
まず,1つ目の柱である「徹底した行政改革 ~市民第一のつくば~」を進めていくためには,市役所が,その名のとおり,市民に役立つところとなることが必要です。
市民参加のまちづくり,行政の見える化,職員の人材育成と,その能力を十分に発揮できる職場環境の整備を進めていきます。
具体的な取組としては,
市民にとって市政を身近なものとして感じてもらうため,地域の声を聴き,ひとりひとりの市民と直接交流できる場となる「会える市長」と題した市民と市長のタウンミーティングを進めていきます。
また,市民の市政への参画を促進するために,審議会等への市民公募委員導入に関する指針等の策定を進めていきます。
本年2月から「ふるさと納税の返礼制度」を開始しました。ふるさと納税で寄せられた寄附金は,市民活動団体が行うまちづくり補助事業や,「つくば市未来構想」に掲げるまちづくりを実現するための事業等に活用してまいります。
更なる「見える化」を図るため,会議の公開についての条例を制定し,市民の皆さまと情報を共有してまいります。
まちづくりのためには,職員の人材育成が欠かせません。これまでの職員研修に加え,真に行動するリーダーを育成するための「リーダーシップ開発プログラム」を導入するほか,各地区に設置する「(仮称)相談センター」は,OJTでの人材育成の場として,市民に寄り添うとはどういうことなのかを,職員が肌で感じる場所にしていきます。将来性のある若手職員をここに配置し,縦割りを超えて課題解決に向けて動く力をつけることで,市政の中核を担う人材に育っていく機会にもしていきます。
また,ひとりひとりの職員の力を十分に発揮するため,職員の仕事と家庭生活の両立を支援するため,「(仮称)ワークライフバランス推進室」を設置し,働きやすい職場環境等の整備や女性の活躍の推進を,業務改善と並行して進めていきます。
(2) 安心の子育て ~こどもとママパパにやさしいつくば~
次に,「安心の子育て ~こどもとママパパにやさしいつくば~」についてですが,妊娠,出産,子育てに切れ目のない施策を展開して,安心して出産できる環境を作り,未来を担うこどもを育てる教育を進めていきます。
具体的な取組としては,
まずは,待機児童の要因である保育士不足解消のため,民間保育所等の常勤保育士などへの処遇改善策として,公立保育所との賃金格差是正を含めた助成を行うほか,受皿の拡大などに努めていきます。
また,公設民営児童クラブの保護者負担軽減などの放課後児童対策を行うとともに,学童クラブ施設の新設,学校の空き教室における学童の受け入れなどを実施し,受け入れの拡大を図ります。
児童の通学の負担軽減を図るため,バスで遠距離通学している児童を対象にバス代相当分の補助を行います。また,春日学園については,スクールバスを運行します。
つくばエクスプレス沿線の,(仮称)葛城北部学園,(仮称)みどりの学園の建設事業については,進捗を常にチェックしながら,平成30年4月の確実な開校に向け,事業を進めてまいります。
教育環境と保育環境の整備充実を図るため,小中学校,幼稚園,公立保育所及び児童館の適切な運営と維持管理,必要な修繕工事,通学路整備などの教育子育てインフラへの投資を行っていきます。
安心して子育てができる環境を作るため,不妊でお悩みの方には,男女ともに不妊治療費を補助し,経済的負担の軽減を図っていきます。
母子健康包括支援センターでの保健師等による相談支援,つくば市バースセンターにおける安定的な出産の場を確保する周産期医療体制の整備を推進してまいります。
産後ケア事業については,母親の心身のケアや育児不安のサポートを行い,産後も安心して子育てができる体制の確保を図ってまいります。
さらに,子育て期には,雇用主に対して厚生労働省育児休業給付金や男性の育休取得などの活用促進を啓発していきます。
(3) 頼れる福祉 ~すべての人が自分らしく生きるつくば~
次に,「頼れる福祉 ~すべての人が自分らしく生きるつくば~」についてです。
安心して暮らせる社会,ゆたかな老後,障害があっても自分らしく学び,生活できるための環境づくりなどを進めてまいります。
具体的な取組としては,
ひとり親家庭の医療費については,外来自己負担金の無償化を開始します。生活保護対策や臨時福祉給付金支給事業など,ナショナル・ミニマムの維持に必要な施策にも着実に取り組みます。
「健幸長寿日本一をつくばから」事業では,若い世代からの生活習慣病予防や重症化予防,介護予防などの取組を展開してまいります。
また,介護を必要とする高齢者等が,できる限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができるよう,さらに地域包括ケアシステムを推進し,医療・介護・予防・住まい・生活支援などを一体的に提供していきます。
障害のある児童生徒の安全確保と,学校生活や学習の支援のために特別支援教育支援員を増員するとともに,「(仮称)特別支援教育推進室」を設置し,きめ細かいケアをしていきます。
もちろん,児童生徒だけでなく,障害者と障害児が自立した日常生活や社会生活を営むことができるよう,障害福祉サービスに係る給付等の支援も行っていきます。
なお,動物愛護については,犬・猫の殺処分ゼロを目指し,関係者の意見を集約しながら動物愛護の施策展開を図っていきます。
(4) 便利なインフラ ~広いのに近いつくば~
次に,「便利なインフラ ~広いのに近いつくば~」についてです。
公共交通の充実による市民の利便性の向上を目指すとともに,災害と犯罪に強いまちづくり,生活インフラの整備を進めてまいります。
具体的な取組としては,
つくバスについて,現在の路線の安定的な運行を進めながら,利用実績,運行路線などを検証し,「幹線プラス支線」による交通ネットワークを形成するという考え方に基づき,改編を進めていきます。
つくタクは,予約の電話がつながりにくい,予約が取れないという課題の解決に向け,予約センターの体制強化,車両の増台を実施します。
自転車の移動が楽しいまちづくりの取組としては,吾妻地区に自転車専用レーンを整備するほか,学識経験者,市民,自転車関連団体の代表者等で構成する自転車のまちつくば推進委員会の意見等を伺いながら,自転車安全利用促進計画に基づく取組を進めます。
災害と犯罪に強いまちづくりへの取組では,つくばエクスプレス4駅周辺への防犯カメラの設置,LED防犯灯の通学路への優先的設置,土砂災害警戒区域や浸水想定区域などに避難情報を伝達する防災行政無線の整備等を進めてまいります。
また,消防力強化のため,救助工作車及び消防ポンプ自動車の配備,消防団詰所の整備などにも取り組みます。
さらに,つくば市耐震改修促進計画に基づき,木造住宅耐震診断士派遣事業,民間の住宅及び特定建築物の所有者に対する耐震化への啓発活動事業等を行うとともに,市有建築物について耐震化率の向上も図ってまいります。
生活インフラの整備としては,ペデストリアンデッキと,その街路灯の改修設計,河川の改修,幹線道路の整備なども着実に進めます。
リサイクルセンター建設,クリーンセンター焼却処理施設の改良事業により,ごみの効率的な処理や最終処分量の減少を進めます。
水道及び下水道事業については,経営の健全化を図り,未整備地区への施設整備,老朽化対策及び耐震化対策等を計画的に進めてまいります。
(5) 活気ある地域 ~地元で頑張る人と会社が報われるつくば~
次に,「活気ある地域 ~地元で頑張る人と会社が報われるつくば~」についてです。
新たな産業を創出する取組,農業を支援する取組,若者がつくばで働き生活する仕組みづくりを進めていきます。
具体的な取組としては,
つくばでの創業や事業拡大支援など,新しいビジネスが始まるまちとなる取組を進めるとともに,Society5.0社会実証支援事業など最先端の科学技術の推進と支援についても取組を進めます。
また,地元企業の育成に結びつく入札制度の改善をするべく,検討を進めます。つくばの中小企業の高い技術を大企業の製品開発などにつなげるなど,マッチングのための機会を戦略的に増やしていきます。
農業の支援については,農業経営を取り巻く環境が変化する中で,地域農業の持続的発展を担う農業経営者の育成や,新たに農業分野に参加を希望している人材の支援に引き続き取り組むとともに,農業担い手支援事業,水田農業構造改革対策事業などに力を入れ,農業で食べていけるまちづくりを推進します。
また,イネ縞葉枯病拡大抑止対策を実施していきます。
若者に対し市内企業を紹介し,就職面接会などの開催による若者の市内定着化に係る取組をさらに進めます。
筑波山を中心とした自然環境資源を活用し,身近な自然環境について考える自然体験事業を推進するとともに,イノシシ対策のための捕獲報奨金を新設するなど,豊かな自然を未来に引き継いでいく取組を進めます。
(6) 誇れるまち ~「一緒に住まない?」と誘いたくなるつくば~
最後に,「誇れるまち ~『一緒に住まない?』と誘いたくなるつくば~」についてです。
豊かな住環境と景観づくり,文化芸術と伝統が薫るまちづくり,スポーツでつながるまちづくり,つくばの資源を活かした観光の振興を進めてまいります。
具体的な取組としては,
売却される国家公務員宿舎跡地等に地区計画等を決定し,緑豊かなゆとりある都市環境を誘導するとともに,つくば市無電柱化条例に基づき,電柱が無い良好な都市環境を誘導していきます。
また,住宅地と一体となって良好な景観を形成し,公共の用に供する景観緑地の設置を進めるなど,豊かな住環境と景観を守っていきます。
文化芸術の拠点であるノバホールやつくばカピオを会場として,つくば国際音楽祭や芸術文化公演,市民文化祭など,市民が身近に感じられる文化芸術の振興を図るとともに,これら施設の維持管理及び改修を計画的に進めてまいります。
平成31年度開催の「いきいき茨城ゆめ国体・ゆめ大会」では,つくば市でも競技が実施されますので,実行委員会を設立し,市民・企業・団体・行政の協働による国体の成功に向けた取組を進めます。
また,筑波大学や研究機関,団体等と連携を図りながら,すべての市民が,いつでも,どこでも,体力や年齢,趣味や目的に応じてスポーツに親しむことができる環境づくりに取り組むほか,各種スポーツ教室や,つくばマラソンなどの大きな大会等の開催により,「スポーツで“つながる”まち つくば」を目指します。
世界のつくばとしての観光・国際拠点づくりでは,国内外から多くの会議参加者が訪れるよう,学術会議支援補助等により学術会議の開催を支援し,地域経済の活性化やPRを図るとともに,外国人による日本語弁論大会も実施します。
観光面では,筑波山にウェブカメラを設置し,リアルタイムの情報配信を行うなど,観光PRを推進するとともに,筑波山地域ジオパークや科学技術の集積といった資源を活かし,世界を魅了するまちに向けた取組を進めます。
むすびに
平成29年度は,市制30周年の節目として,これまでの先人たちの努力を一旦ここで結実させ,そこから,次の一歩を踏み出していくような一年にします。市民の皆さま,議員の皆さま,そして職員ともきめ細かに対話を積み重ねながら,進めてまいります。
最後に,私が掲げる,市民に寄り添う,市民第一の市政とはどういうことか,お話をしたいと思います。
今から10年ほど前に,市民から1通のメールをもらいました。その方のお子さんは出産時の医療事故で重症仮死により脳死に近い状態になり,呼吸器とともに24時間介助が必要な状況になりました。大変な状況の中,つくば市役所に支援のための相談に行っても,前例がないから様々な補助が出せない,との一点張りでした。
例えば,重度身体障害者訪問入浴というサービスがあります。当時,このサービスは障害「者」のみが対象で,障害「児」,つまりこどもは利用できませんでした。ご両親にとって,複雑な機器に気をつけながら入浴を行うことは大変なことです。こどもも対象にして欲しいというリクエストもなかなか聞いてもらえませんでした。重度障害児のための吸引器や移動用のバギーも,前例がないとのことでなかなか認められませんでした。お母さんは,「娘がこのような状態になって辛い思いをし,どうして役所でまたこういう辛い思いをしなきゃいけないんですか?」と窓口で涙を流すような状況だったとのことです。
雛姫ちゃんと名付けられたその子は,ちょうど私の長男とほぼ同じ時期に生まれていました。私はそのメールを読んでいても立ってもいられなくなり,その方の自宅に伺いました。24時間,ひとときも目を離せない状況の中で,お父さんは誰を恨むわけでもなくおだやかに,「この子の支援だけを求めているわけじゃないんです。この子は,いつまで生きられるかわからない。だからこそ,次に同じような状況で生まれたこどもや家族が悲しむことがないように改善してもらいたい。それが,この子が生きた証になると思うんです。」そう話してくれました。
ご両親の思いを受け,私も微力ながら働きかけをしました。ご両親の懸命な思いが結実し,訪問入浴の対象がこどもにも拡大となりました。お父さんから,これらのことによって「生活の質が上がって在宅介護が素敵なものとなり,その後,事故などで同じような状況となった他のご家族も本当に助かっている。」との言葉をいただきました。
雛姫ちゃんは,昨年12月に天に召されました。10年間一生懸命に生き,ご家族を幸せにし,周囲の人も幸せにしました。そして,今も,後に続くこどもたち,ご家族の力になっています。まぎれもなく生きた証を残してくれました。
我々には,雛姫ちゃんが残してくれたものを,どうつなげ,広げていくかという使命があります。それは,訪問入浴の対象者の範囲,重度障害児のための吸引器,移動用のバギーの話だけではありません。悲しい思いをする人を一人でも減らし,誰もが包まれ幸せな社会を実現することこそが,雛姫ちゃんに,そして名前は出なくとも様々な分野で大変な苦労をし,涙を流してきた市民に対し応えることになります。
誰もがその当事者になり得るからこそ,想像力とやさしさを持って,市民に接することこそが,市民に寄り添う市政です。今,職員も同じ思いを持ってくれています。
どのような境遇にあろうとも,つくば市に生まれてよかった,住んでよかったと,心から思える市民第一の市政を目指し,新年度に向けて,全身全霊を掛けて市長職を全うすることをお誓い申し上げ,所信と致します。
平成29年2月22日 つくば市長 五 十 嵐 立 青
国立国会図書館インターネット資料収集保存事業で収蔵された、当時のつくば市の当該ページはこちら。
前市長時代の平成28年度以前の市政方針・所信表明はこちら。
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