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(保存版)「令和6年度市政運営の所信と主要施策の概要」

つくば市ホームページの「市長の部屋」コーナーにある「市政運営の所信と主要施策の概要」では、過去のものが消えてしまうためアーカイブの意味合い、掲載がPDFでスマホなどで読みやすいものではないことからテキストで転記しました。
なお以下の本文では追々、把握できる範囲で、令和6年時点でのつくば市ホームページで施策等が公開されている箇所へのリンクを追加していきます。

令和6年3月つくば市議会定例会の開会に当たり、令和6年度の市政運営に対する所信を申し上げます。


はじめに

1月1日に起きた能登半島地震により、犠牲となられた方々にお悔やみを申し上げるとともに、被害に遭われた皆様に改めてお見舞い申し上げます。つくば市では1月3日から2名の職員が現地での支援活動を実施して以降、茨城県や関係機関等からの要請に応じた職員の派遣や支援物資・市営住宅の提供などを続けています。

国連のグテーレス事務総長が「異常気象がニューノーマルになりつつある」と危機感を示すとおり、世界中で気候変動等による自然災害が激甚化・頻発化しています。つくば市でも昨年6月に観測史上最大級の大雨による被害が発生するなど、市民一人ひとりの防災に対する意識をより一層高めながら、安全で安心できる生活を守ることが重要な課題となっています。このため、令和6年度は防災情報を盛り込んだハザードマップを改訂し全戸配布するなど、地域の防災力強化に取り組んでいきます。また、気候変動対策は不可逆な世界の潮流であり、官民を問わず環境分野への取組が求められる中、つくば市でも脱炭素先行地域への選定や気候市民会議の開催など、ゼロカーボンシティの実現に向けた歩みを進めています。多くの市民の熟議により作り上げられた気候市民会議の提言に象徴されるように、令和6年度も対話を重ねながら様々な施策を市民とともに創っていきます。

昨年5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが変わり、様々な行事や地域のまつりが再開されるなど、新型コロナ対策は一つの区切りを迎えました。新型コロナにより、それまで当たり前だった対面での活動や交流が制限されたことから、顔と顔が見える場で生まれる「つながり」の重要性を改めて認識させられました。令和6年度は、地域やコミュニティにおいて様々な「つながり」をつくるために、地域にある既存の公共施設等を利活用して、多くの人が気軽に立ち寄り、交流し、居心地よく過ごしてもらえる「たまり場」や「居場所」となる拠点を増やす施策に力を入れていきます。
さらにスーパーサイエンスシティ構想で目指す社会の実現に向けて、先端的な科学技術を市民生活に活かす取組や、障害者や高齢者への支援、子育て環境の充実など、市民が「今」必要としている様々な施策を行うことで、「市民の多様な幸せづくり」を進めていきます。

つくば市は、令和5年1月1日現在の住民基本台帳に基づく調査において人口増加率が全国1位になりました。つくば市が「選ばれるまち」となっていることが数字として表れている一方で、新たに必要となる行政サービスを適切に提供する等、人口増加に伴う様々な課題にも取り組む必要があります。児童生徒の急増に対応するための学校施設の新築や増築、渋滞対策検討など、都市の基盤となるインフラの整備や改善に取り組むとともに、周辺地域やつくばならではのクラフトライフの魅力などを発信することで、中心部から市全域に向けた遠心力を生み出す各施策も推進していきます。

市長就任から7年が経ちました。この間、新型コロナウイルスによるパンデミックや気候変動等による大規模な災害などの影響を受け、市民の暮らし方や考え方も変化をしてきています。令和6年度もこれまで一貫して掲げてきた「世界のあしたが見えるまち」というヴィジョンのもと、「誰一人取り残さない」包摂の精神に基づき、市民との丁寧な対話を積み重ねながら、ともに創る市政を進めていきます。

令和6年度当初予算(案)の概要

それでは、令和6年度当初予算案の概要について御説明します。
令和6年度当初予算は、

一般会計 1,118億400万円
特別会計 368億8,555万7千円
水道事業会計 107億6,257万4千円
下水道事業会計 169億3,468万5千円

合計が、1,763億8,681万6千円としました。
一般会計は、前年度当初予算と比較し、32億9,400万円、3.0%の増と過去最大規模の当初予算額となりました。
歳入のうち市税については、人口増加等に伴う個人市民税や固定資産税の増加により、1.7%の増を見込んでいます。
歳出については、保育所や小・中学校等の整備など安心できる子育て環境の充実をはじめ、小・中学校や公共施設の長寿命化事業や、既存施設のリノベーションや交流拠点の再整備による地域のたまり場・居場所づくりなど、市民が必要としている様々な支援を行い、「市民の多様な幸せづくり」を進めていきます。

令和6年度の主要施策

次に、令和6年度の主要施策について御説明します。

(1)徹底した行政改革 ~さらに市民第一の市政へ~

まず、「徹底した行政改革」としては、様々な地域課題の解決に向けて、先端的サービス等によりスーパーシティ構想の実現に取り組んでいきます。また、生成AIの活用や行政分野のデジタル化に取り組むことで、住民サービスの質の向上を目指していきます。
具体的な取組としては、市長・市議会議員選挙オンデマンド型移動期日前投票事業を実施します。投票所までの移動が難しい高齢者や障害者が投票しやすい環境を整備していきます。
また、生成AIの利活用を推進することで職員の日頃の事務作業の軽減を目指し、保育所入所事務における電子通知システムの導入などの事務手続きの電子化に取り組んでいくことで、職員の事務効率を向上させ、住民サービスの向上に向けた取組を進めていきます。あわせて、昨年12月に開設したつくば駅前市民窓口センターの運営により、多様なライフスタイルに合わせた住民手続きの利便性向上を推進します。

(2)安心の子育て ~こどもとママパパにもっとやさしい子育て環境~

次に、「安心の子育て」としては、妊娠・出産・子育て・教育まで、一貫した相談支援体制や多様な学びの場を創出することで、親子一人ひとりに寄り添った育ちの場を提供していきます。
具体的な取組としては、全ての妊産婦、子育て世帯、こどもを対象とし、多様な課題に対する一体的な相談支援体制を備えた「こども未来センター」を設置するとともに、乳児の健康管理や保護者の育児不安解消のため新たに1か月児健診事業を始めます。
また、1歳児の担当保育士を国の配置基準よりも手厚く配置する民間保育施設等に対する人件費補助や、公立幼稚園プレイルームへの空調設置の設計、児童数が急増する中根・金田台地区における小学校建設を進めるなど、保育の質や教育環境の向上を図ります。
児童生徒の好奇心を刺激し興味を広げ実体験を通した学びを得るため、芸術文化に実際に触れる機会を新たに作るとともに、児童の安全・安心な放課後の居場所であり多様な経験や活動機会も得られる「アフタースクール」の事業モデルを新たに構築します。
さらに、校内フリースクールの設置を市内全ての小・中・義務教育学校に広げ、専任職員の配置を倍増させるとともに、高等学校への遠距離通学負担軽減のための支援金事業を開始することで、保護者や児童生徒一人ひとりに寄り添った多様な育ちの場を創出していきます。

(3)頼れる福祉 ~すべての人が自分らしく生きる社会~

次に、「頼れる福祉」としては、高齢者、障害者や病気を有する人が、住み慣れた地域で自分らしく生活できる環境づくりやこどもの貧困対策などの充実により、すべての人が幸せを実感できる社会の実現を推進します。
具体的な取組としては、高齢者補聴器購入費用の一部助成により高齢者の生活の質の向上を図り、高齢者タクシー運賃の助成対象者を現行に加え80歳以上のすべての 方に拡大することで、積極的な外出や社会参加を促進し、人生 100 年時代を多くの人 が元気に活躍し、いきいきと暮らせるよう取り組みます。
また、障害者の自立した生活を支援するための障害者団体等への補助金の拡充や、若年がん患者の療養生活に要する費用の一部を助成し、障害者や病気を有する人が住み慣れた地域で安心して自分らしい生活を送ることができるよう支援します。
発達に不安があるこどもたちについては、成長過程に応じ、切れ目なく支援を行うための児童発達支援センター開設に向けた改修設計を実施します。さらに、貧困世帯や悩みを抱える家族の不安の軽減や、こどもたちが安心して学習し生活できる環境づくりのため、つくばこどもの青い羽根学習会を拡充し、こどもたちの支援の充実を推進します。

(4)便利なインフラ ~快適で持続可能なインフラ整備~

次に、「便利なインフラ」としては、公共交通政策の見直しを行うとともに、自転車のまちづくりを推進します。また、安全・安心で持続可能なインフラの維持管理を進めます。
具体的な取組としては、現在の「つくば市地域公共交通計画」の点検・評価を行うとともに、昨今の課題である運転士の労働時間改善に伴う運転士不足を踏まえた市域のバスネットワークの見直しについて検討します。引き続き、通勤通学時間やニーズの多い時間帯を考慮したつくバスのダイヤ改正や停留所の新設を図るほか、周辺自治体との広域連携も視野に利便性向上策を検討し、実施していきます。
また、市道の渋滞緩和・解消に向けた対策を進めるとともに、公共交通網を補完する移動手段として自転車の活用を推進するため、シェアサイクルポートの増設を行います。
安全・安心で快適な都市基盤を整備するため、長寿命化計画等に基づき、道路、街路、河川及び橋梁の整備維持管理を行うほか、メモリアルホールの老朽化した設備等を更新します。
また、市民の生命・財産を守り、災害に強いまちづくりを推進するため、救急車や消防ポンプ車等の緊急車両の更新を行うとともに、高機能消防指令センターのシステム及び設備更新を着実に進めていきます。

(5)活気ある地域 ~つながりを力に活気ある地域へ~

次に、「活気ある地域」としては、地域課題の解決や地域活性化につながる市民の主体的な取組の事業化や収益化に向けた支援をするとともに、地域の産業や農業を持続的に発展させていくための施策を着実に進めていきます。
具体的な取組としては、労働者協同組合の設立時の運営費用を補助することで、市民協働による継続的かつ安定的な事業の実施を支援します。また、地域の特色を生かした新たな仕事や生活を生み出す「クラフトライフ」を実践する人材を伴走型支援により育成し、周辺市街地の活性化をさらに進めていきます。
地元産業の持続的な発展に向けては、市内に産業用地を確保し、新たな産業集積拠点を形成するための調査等を実施し、企業誘致に対する取組を進めます。また、既存の市内中小事業者の働きやすい職場環境づくりを支援するため、男性労働者の育児休業の取得促進に取り組む市内の中小事業者に奨励金を交付します。
農業に関しては、国・県の補助事業の対象外だった農業者の農業機械等の入替や新規導入を促進する市独自の補助制度を創設することで、安定した農業経営の確立を支援します。
市内の森林に関する新たな取組としては、里山林整備推進事業を活用して整備した森林の適正な維持管理のために、森林の所有者と借りたい人を結びつける「森林バンク制度」の構築を進めることで、所有者以外の人たちも維持管理に参加する持続可能な制度を構築するとともに、市民の交流・活動等を行う「たまり場」としての森林の利活用を推進します。
今年4月には、みどりの地区に「つくば市民・学校プール」を開設します。小中学校の水泳授業や市民が気軽に水泳ができるスポーツ施設として利用できるだけでなく、併設したコミュニティスペースを活用してもらうことで、地域の交流・活動を促進します。
昨年11月に旧筑波東中学校にオープンした「サイクルパークつくば」は、自転車利用等に関する高い専門性やノウハウを有する指定管理者に運営を委託することで、自転車利用者のニーズに合わせたサービス提供と安定した運営体制を確保します。自転車をきっかけに施設の利用者を増やすことで、地域を訪れる人を増やし、活気ある地域づくりを進めます。

(6)誇れるまち ~つくばの魅力をともに創る~

次に、「誇れるまち」としては、市民や事業者と連携・協力して脱炭素社会を実現する取組を進めます。また、既存施設をさまざまな人が集まり交流が生まれる場所に改修し、緑豊かな自然も生かすことで、つくばの魅力を高めていきます。
具体的な取組としては、第3次つくば市環境基本計画の中間見直しと、地球温暖化対策実行計画(区域施策編)の改定を一緒に行い、さらに昨年実施した気候市民会議から提出された提言書に対する実行計画の策定も併せて行うことで、より実効性と効率性の高い計画に昇華させていきます。
また、脱炭素先行地域に選定されたつくば駅周辺のモデル地区で、事業者や地域住民と協力しながら2050年のカーボンニュートラル達成に向けて先進的な事業をともに進めていきます。
中央図書館では、市民に親しまれている松林を生かしながら、更なる中庭の活用に向けた改修工事を進め、図書館懇話会の提言に示される「市民の居場所となるサードプレイスとしての滞在型図書館」の実現に向け、新たなモノ/コトを生み出す居場所づくりに取り組みます。
さまざまな人が集まり交流が生まれる場所にするため、筑波北部公園はインクルーシブ遊具を大規模に設置し、特色ある公園へ再整備を行うとともに、TX沿線開発地区等に魅力ある公園、緑地等を整備するとともに、市民ニーズに合わせた既存公園施設の修繕を行い、良好な環境を維持します。また、県から移管を受けた洞峰公園は、市民等と協議しながら、筑波研究学園都市の貴重な自然環境資産を未来に継承していきます。
他にも、引き続き、誰もが使いやすくつくば市にふさわしい陸上競技場や、アウト ドア体験施設としての筑波ふれあいの里キャンプ場の整備を進めるなど、まちの魅力を高めていきます。

以上、令和6年度の市政運営の所信の一端と主要施策の概要を申し上げました。

むすびに

昨年欧州連合やスペイン政府が主催する会議に招待され、今後の社会のあり方や、社会的連帯経済について各地の市長と議論を深めてきました。
「社会的連帯経済」というのは一言で言えば、自由な市場の競争に任せて貧困や社会の格差の拡大を放置するのではなく、人間と環境を中心において、民主的な運営をすることによって持続可能な社会と経済を目指す動きです。
そのベースには、「社会をよい方向に変えていく意思に基づく開かれた対話」があります。

冒頭、世界的な気候危機に対して6回の市民による対話を経て提言が出された気候市民会議に言及しました。
気候市民会議は全国的に実施されてきていますが、そのプロセスでは無作為抽出で市民に手紙を送り、「会議に参加してもいい」という方を集め、そこから住まいや年代のバランスを考慮してメンバーを決めます。この「参加してもいい」という意思表示の割合を応諾率というのですが、これまで実施してきた自治体の平均的な応諾率はおよそ2.5%でした。
つくば市ではもう少し上がるのではと考えていましたが、結果は11.4%と、文字通り桁がちがう数字となりました。つくば市民の気候危機に対してアクションを起こすための意識が示された数字であり、大変心強く感じました。
そして、参加者は専門家の科学的事実に基づく説明を踏まえて、繰り返しの対話を積み重ねました。自分の考えをただ押し通すのではなく、他者の意見に耳を傾け、合意点に達するために提案を少しずつ修正していき、まとめあげていきました。
このように気候市民会議は、社会的連帯経済に連なる「社会をよい方向に変えていく意思に基づく開かれた対話」の象徴的な場でした。

世界では残念ながら逆の動きが起きてしまっています。ひたすら自らの正義のみを主張することで、増幅された憎悪が大きな分断を生み出し、戦争まで引き起こしています。昨年つくばを訪れたグランディ国連難民高等弁務官は、彼のキャリアの中で現在が最も厳しく困難な時期だと述べていました。

このような状況があるからこそ、我々一人ひとりが努力を加速させる必要があります。市民の命と生活を守りながら、多様な幸せをつくるために、今まで以上に議会のみなさま、そして市民との対話を積み重ねていきます。
新年度も「世界のあしたが見えるまち」へ前進するために全身全霊で市政運営にあたることをお誓い申し上げ、所信とします。よろしくお願い致します。

令和6年2月 13 日 つくば市長 五 十 嵐 立 青


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