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【危機は転機だ!わたしの人生リノベーションepi.1】 松武陽子 『人生のどん底に届いた合格通知』

子どもの頃から、どこか自信がなかった。
いつの間にやら空いていたこの心の穴を埋めてくれるものを探して、勉強してそれなりの大学もでた。海外に旅にだっていった。結婚もして、出産もして、仕事して、思いつくことはなんでもやってみた。

それでも、埋まらない心の穴。
資格を取れば、今度こそ変わるだろうと、一級建築士の試験を受けた。
3歳になる息子を育てつつ、仕事もしながら時間を作って勉強。
試験期間の最中、不妊治療先の病院でわかったのは、自分がステージ3の癌だったということと、待合室でとった電話に告げられた学科試験合格の通知でした。


プロフィール

松武陽子(以下陽子) 1977年福岡生まれの福岡育ち
2015年、建築デザイン設計事務所 ㈱キュリアス・マインズを設立、現在は代表取締役、一級建築士
2022年にリノベのまち門前の長屋一角に事務所をかまえる。
セルフリノベーション、空き家再生、空き家活用を行いながら、活気あふれる人々とエリアリノベーションに取り組んでいる。
2025年3月からリノベのまち門前にある古民家『シェアハウス チャンドラポメロ』で、人生初のシェアハウス生活をスタートさせる

一級建築士の資格を取ったのに、何も変わらないなんて。


—— 陽子が今の人生にたどり着くために起こった人生の転機を教えてください。

陽子:「一番ショッキングだったのは、自信を得るために、一級建築士の資格を取ったのに幸せじゃなかったこと。複数回あった試験、第1次の合格を聞いたのが、発覚した癌の摘出後の検査にいっていた病院の待合室だったんです。多分、試験勉強の最中に悪化していたと思うのですが、全く気づかず、その通知を受けた時も、どうしてこんなに幸せになれないんだろうって、愕然としました。」

7月に第1次試験を受験、ステージ3の癌が発覚
8月に摘出手術、合格の通知。
9月に第2次試験を受験。

3歳の子供を育てつつ、働きつつ、癌治療を受けながら、建築士の試験を一発で合格してしまう能力の高さにも驚愕ですが、当時資格を手にした彼女が感じていたものは、合格の喜びを超えた深い落胆だったようです。

持つだけではダメなのか??

陽子:「幸せになるはずなのに、これはちがうのか・・・。どうしてこんなに幸せになれないんだろう・・・。最高位の資格を手にしたにもかかわらず、何もかわらない現実。堂々と生きられる!自分のことを好きになれる!きっと心の穴が埋まる!そう信じてつき進んできた道の先にあった現実に打ちひしがれました。一級建築士という肩書きをもったボロボロの体で『幸せっていったいなんなんだろう』という問いが生まれた瞬間は人生のターニングポイントだったように思います。」

死にたいわけじゃなかった!


—— すごいシナリオで生きてきてますね。

陽子:「言うのも恥ずかしいんですけど、あの頃は子供が生まれてからも、あまりの満たされなさにずっと”死にたい死にたい”って思って生きてました。思えば、本気でそれを考え始めた頃に、病気が発覚したんです。
そしてその時に気づいたのが『死にたいんじゃなかったんだ!わたしはわたしらしく生きたかっただけだったんだ!』ということでした。
でもそんなこと誰も教えてくれなかった。ママ友もたくさんいたけど、死にたいなんて相談できるような相手もおらず、病気になっても大丈夫?とか無理しないでね?とかやさしい声をかけられることはあっても、自分の求めている本質的な問いにこたえてくれるような人との出会いがなかったんです。

だから、卒業制作も納骨堂をつくっていました。

若い頃から、どうやったら自分らしく生きられるのかが知りたかった。生きることに一生懸命になりたかっただけだったんです。そのために、死とは何かをたくさん学んでいた大学時代でした。
そんなことも思い出しながら、あらためて、自分らしい人生とは何かを探し求めるようになった時、自分の心の穴が埋まり始めました。」

人がそんな気づきを得た先には、きっとお遍路さんにでてみたり、世界を旅してみたりとそれぞれの多様な道が広がっているかと思います。
彼女が今日、この門前町にてまちづくりに取り組むようになったのは、どんな想いがあったのでしょうか。

その人らしく生きられる環境をつくりたい


—— ある意味命をかけて得た”建築家”というカテゴリーの中で、これからどんなことを訴えていきたいですか?

陽子:「家が好きとか、居場所が好きとかって人が、意外と少ないなと感じています。家は帰って寝る場所になっている。そんな現代の日本で、まずはその人の手に届く範囲から”好きなものに囲まれて生きている自分のことを許せる空間や文化”を作りたいなと思っています。
わたしが昔から関心があるのは、建築というものを含めた人の営みについてでした。だから、そこに生きる人が、その人らしく生きる環境を作っていきたいし、そう思っている人たちの応援をしたいと思っています。その想いが、このリノベのまち門前で行われているまちづくりの根幹にあるものと重なっているからこそ、ここで活動しています。

そういう意味では、実は一級建築士というのは、自分にとっての職能ではありますが、あくまでも自分の想いを叶えていくためのツールの一つ。

その肩書には自分自身が納まりきらない感じがしていて、本当にしっくりくる自己紹介については今もなお模索中なのかもしれません。」

無邪気な笑顔でそう締めくくった陽子。
彼女が見つめる先にあるのは、暮らしの環境を整えていくことを切り口に、自分らしい人生を送る人が増えていく未来でした。

ここ、リノベのまち門前ではもち前の建築に関する知識と溌剌とした人柄で、主に空き家の修繕や利活用、そのためのDIYや各種イベント時にリーダーシップを発揮し、チームを率いています。

彼女が経営している《株式会社キュリアス・マインズ》の事務所は、まちの長屋の一角にあります。
築100年になる長屋を工夫し、1Fを居心地のよいカフェ空間に改装。
インテリアやまちづくりの本やカタログを中心に蔵書。自分の暮らしに想いを馳せる時間と空間を提供しています。

また、2025年2月より、まちのシェアハウス《チャンドラポメロ》にてシェアメイト在原みどりとの共同生活を新たに始めた陽子。暮らしの環境設計を謳う彼女の変化は今もなお継続しているようです。門前町で見かけたら、ぜひ話を聞いてみてください。また新たなおもしろエピソードに出会えるはずですよ。

詳細情報各種はこちらから

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聞き手:清水亜希子
執筆/撮影:山田博揮

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リノベのまち門前
福岡県直方市直方359−2
活動日 金〜日
MAIL:info@rtown-mz.com
TEL:09054598490 (やまだ)

さぁ、人生をリノベしよう!


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