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ニンジャ実況空間、R・E・A・L体験の入口にて

 2018年12月末、私は5年(?)の間眺めるのみだった小説「ニンジャスレイヤー」実況#njslyrタグの大海原に本編感想という小さな01水飛沫を立て、あてもなく漕ぎ出した。その後特筆すべきアクティビティもないのだが、それでも#njslyr電子海における数度の実況体験は確かなR・E・A・Lを内包していたのだ。

1. 電子的矮小存在

 私がニンジャスレイヤーという作品を知ったのは、いつだったか、ニコニコ動画のコメント欄に飛び交う「忍殺語」がきっかけだった(恐るべき悪魔城TASの系譜、カー〇ィがドゥエリストになる動画だった)。

 ニコニコ大百科から当時の@wikiに飛び、時系列順リストに従って「キックアウト・ザ・ニンジャ・マザーファッカー」を読んだ。その時私はまさに胸ぐらを掴まれてネオサイタマへ連行され、灰色のメガロシティに渦巻くニンジャの暴威を見せつけられ、さらにそれを上回るニンジャスレイヤーの暴威、そして人間性を見せつけられた。ネタ成分を求めて読み始めたつもりだったが、純粋なエンターテインメント小説としての魅力に一発で取り憑かれ、以降のログも次々と読み漁って行った。

 その後連載に追いついたのは「マスター・オブ・カブキ・イントリーグ」連載中で、「デス・トラップ、スーサイド・ラップ」からリアルタイムとなり、以降は#njslyrタグを見ながら連載を追っていた。アカウントは持っていなかったが、夜更かしして見届けた10100017、そして嘔吐したのだ、ネヴァーダイズなど、実況タグでの思い出は枚挙に暇がない。

 尚アナウンス等からわかるように、ニンジャスレイヤー翻訳チームはtwitter上に一切出現しないニンジャヘッズ存在をも確かに知覚しており、アニメ化の際には読者数を3億人と推定した(古いデータであり、現在はアニメイシヨンと本編の盛り上がりを掛けて100億人は読んでいる筈だ)。たとえ見えずとも、とにかくすごいいっぱいいるのだ。

 タグ上に何ら痕跡を残さない電子的矮小存在の私は、2018年12月下旬にひょんなことでアカウント論理肉体を構築して以降も同様に実況タグを静観する構えであった。そんな折、ついに明かされていくアユミの死の真実を前に湧き上がってくるものがあった。以前ならば自分の中でしばらく弄んでから虚無へ還すしかなかったそれを、数十秒の逡巡の後、私はずっと前から開きっぱなしの「njslyr OR dhtls」検索画面へと放ったのだった。

2. 肌で感じるR・E・A・L

 私は、twitterを真の男の荒野MEXICOのように感じていた。様々な電子的干渉の中を、ギターケースに仕込んだ武器でサヴァイヴしなければならないと思っていた。

 また、私は他の論理人格との電子的接触に対し完全にビビっていることが証明されている。例えばずっと以前、ニンジャスレイヤープラス購読手続きを行い、促されるままダイハードテイルズnoteアカウントをフォローしたところすぐさまフォローが返ってきたのだが、その事象にすら私は竦み上がり、変な汗が出た。遠くのビル屋上に佇むニンジャを眺めていたらその半神的存在がやおらこちらに向き直りオジギを繰り出してきたような畏怖に打たれ、何だか恐ろしい心持ちになったのである。

 そんな腰抜けの私がとうとう実況ツイートをタグへと放ったわけだが、結果として実況空間は私を殺したり、指を順番に折ったりオブジェにしたりしなかった。あそこはMEXICOのように過酷ではない。ご存知の通りライブハウスなのだ。モッシュ行為しようが端のほうでひとり体を揺らしていようが、作品並びに他のファンに対するラブとリスペクトを持っている限り、様々な在り方がそこでは許容される。

 この実況ライブハウスで後方のスペースを確保し実際実況に加わる中で、ライブハウスの熱気、そのストリームの只中に確かに自分を見出した。私は依然矮小存在であるが、私の放ったツイートが特に顧みられることがなくとも、それはストリームに呑まれ、その一部となる。取るに足らないひとりのモータルがナラク・ニンジャの一部となり、ニンジャスレイヤーのカラテを増すように。そこに渦巻く熱気を、人々の熱狂を肌で感じる。心拍数が上昇し、体温が上がる。R・E・A・Lがそこにはあった。

 そして私は実況タグでは知覚し得ぬ数多の読者存在に、またその中に湧き上がっては虚無へ還っていく感想の数々に思いを馳せた。それら感想は或いはオヒガンより吹き込むエテルの風めいて作品と実況タグに超自然の力を与えているかもしれない。それがコンマ何%かでも実体あるカラテとしてタグ上へ放たれた時、なんかもっとすごいことになるのでは?そんな気がした。

終. 電子の浜辺を揺蕩う貴方へ

 貴方。そう、貴方だ。#njslyrの大海原を眺め、本編の熱量から自然に湧き上がる何かを内に秘めている貴方。その内なるカラテの高まりを電子の海に解き放ってみないか。私のアカウントをフォローして欲しい訳ではないし、私の感想もツイートはするが誰にも読ませるつもりはない。ただ私は、実況行為のR・E・A・Lを貴方にも肌で感じて欲しいと思ったのだ。そして、貴方の感想を読んでみたいと思ったのだ。

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