漫画「ダークギャザリング」の魅力に取り憑かれたので。
「ダークギャザリング」という漫画を最近読み始め、急速にハマっています。雑な説明をするならば「謎の8歳オカルト女児がポケ〇ンGOストする話」。作者は近藤憲一先生。D. Gray-manの星野桂先生のアシスタントをしていた方なんだそうです。
本作はしっかりホラーして、それでいてコミカルで、かつディテールが作り込まれていて、どこまでも没入できる作品。もし本稿を読みに来た貴方が「ダークギャザリング」本編未読であるならば、私は貴方がせっかくの名作に触れる貴重な読書体験を絶対に損ねたくありません。だから本稿では俗に言うネタバレについては全身全霊を懸けて配慮します。そのうえで、「ダークギャザリング」が貴方の集中力・没入・信用に十二分に応える性質のものであることを保証しておきたい。それが本稿の目的です。
「ハマる」作品
読み始めたが最後、みるみるのめり込み、繰り返し読みふけってしまう。そういう読書体験をもたらしてくれる漫画というのは、形は様々あれどその人の感性に強く訴える何かを持っているわけです。私の場合、「ハマる」作品のもつ魅力というのはだいたい次のように説明できます。
☑ キャラクター及びその関係性に魅力がある
☑ ユーモアのセンスが自分に合っている
☑ 画に目を引くものがある
☑ ディテールが作り込まれている
4つ挙げましたが、それ以上説明することのない項目もありますので、かいつまんで紹介していきます。
メインキャラクター3名について
「ダークギャザリング」では1話から3人のメインキャラクターが登場し、それぞれの魅力を発揮します。また、もうひとつ言えることとして、「ダークギャザリング」はメインキャラの数が軽率に増えていくタイプの物語ではなさそうです。当面はメイン3人の人となりと、彼らが互いをどう捉え、どう思うか、そのあたりで魅せてきます。
幻燈河 螢多朗(げんとうが けいたろう)
やっぱり…心霊写真になった…
霊媒体質に悩まされる本作の主人公。中学生の時に友人もろとも霊障を受けたことがある。以来人を傷つけるのを恐れて引きこもっていたが、周囲の支えを受け、「社会復帰」を目指し再起。禮應大学に成績トップで入学を果たした。人付き合いの訓練にと勧められた家庭教師のアルバイトに申し込んだ彼は、禮應大学総代の実力を買われ、期待の天才児・寳月夜宵の担当に指名された。
螢多朗が真人間を目指す。それがこの物語を構成する軸のひとつとなっています。
寳月 夜宵(ほうづき やよい)
心霊スポットいこうぜ!
※普段からこういう少年めいた喋り方をするわけではありません。
螢多朗が家庭教師を務めることとなった8歳の女の子。瞳がそれぞれの目にふたつずつある重瞳(ちょうどう)で、霊的なモノが「視える」体質の持ち主。螢多朗が怖気をふるうような尋常ならざる存在感を放つぬいぐるみを抱……否、絞めている。螢多朗が霊を強く引き付ける体質であることに気づき、何かにつけて彼を巻き込んで心霊スポットへ突撃しようとする。
彼女自身もまた理外の存在のように見えかねませんが、少なくとも彼女は理性的で、他者への共感性が欠如しているわけでもなさそうです。おもにこの夜宵の探索行を通じて、この物語は前に進んでいくこととなります。
寳月 詠子(ほうづき えいこ)
ひゅーっ!夜宵ちゃんおっとなー!
螢多朗の幼馴染にして夜宵の従姉。引きこもった螢多朗を気にかけ、再起に向けて背中を押した恩人。朗らかで、気が利き、螢多朗をよく支えている。また、夜宵の心霊スポット巡りにも協力的であり、ノリノリで螢多朗をクルマへ詰め込み、いわくつきの場所へとカッ飛ばす。
細かいポイントになりますが、髪の毛の描き込みがすごい。基本的にシーンを明るくしてくれる存在ですが、この描き込み等々によって緊迫感や恐ろしさを醸し出したりもする、本作に欠かせないキャラクターです。
この3人の軽快な掛け合いで「ダークギャザリング」のお話は成り立っています。強引に螢多朗を丸め込んで心霊スポットへ連行する寳月家。ガチでビビる螢多朗。イジる夜宵。楽しそうな詠子。そんな3人の人間味と、それぞれの願い。そういったものに触れながら読み進めるうちに段々と視えてくるモノがあって、みるみるハマっていくのです。
繰り返し読みたくなる作り込み
フィクション作品というのはゼロから生み出されるものであるため、画面に配置されるものの選び方や配置のされ方にはすべて理由や必然性がある……そんな話を聞いたことがあります。世の中に数えきれないほどある作品たちを無軌道に楽しむ中で、画面や設定・プロットが徹底的に作り込まれ、そういった必然性を特に感じさせる、熱量ある作品に時折出会うことがあります。読者が没入して読んだとき、その集中力にどこまでも応えてくれる。そんな作品には否応なく惹きつけられます。
「ダークギャザリング」もまた、そのような作り込まれた作品のひとつ。画面に視える/視えないもの、キャラクターが言った/言わないことすべてに意味があるような、そんな確信を与えてくれるだけのものがこの作品にはあります。
キャラクターの視線や表情はもちろん、「お化け」という(やや気の抜けた)呼称がよく用いられるのも場面場面の緊張感をコントロールしているように思われるし、何なら地名がイニシャル表記(「H市の電話ボックス」ほか)なのもなんか怪談っぽさが出ていい味が出てる気がします。どこに目を向けても楽しめるエンターテインメントです。
もし読む中で何か違和感を覚えたならば、それは「なんか細かいこと気にしちゃったなー、あはは」で済ませるのではなく徹底的に吟味しながら読んでも徒労に終わることはありません。ことあるごとに襲ってくる「ここまで戻ってもう一回読みたい」という衝動に素直に従えば、様々な描写に込められた必然性を見出す最高の読書体験が待っています。
「ダークギャザリング」はジャンプSQ. にて連載中。通して読む手段は実質単行本一択となります。タダでは読めませんが、単行本構成(巻の区切り方等)もまた作り込まれており、没入して繰り返し読むには最高の媒体に違いありません。腰を据えて読んでみてください。
「れっつごー!」「すと!」