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看護師が多すぎる

 18日も入院していたのに、看護師のことをよく覚えていない。困ったものだ。

 まがりなりにも長年教える仕事をしていたというのに、現職の頃からずっと、人の名前と顔を覚えるのが苦手だった。それでも仕事で会う人ならば、どんな仕事で会ったか、どこで会ったか、などの名前と顔以外の属性があるので、あまり苦労はなかった。多くの場合は名刺をもらえたし。

 しかし、病人として入院した立場から、全員白いユニフォームを着ていて、マスクしていて、女性で、となると、「覚えられない。困った」以外の感想がない。ほんとうに困った。看護師をまともに覚えられなかった。

 しかも、担当者は日替わりなのだ。夜勤時間帯になると、また変わる。その上、いつも担当の看護師が来るとは限らない。「あれ、この人とさっきの人は同じ人なのかな... 別の人なのかな…」というのは日常茶飯事だった。覚えられないんだよ。

 仕事をしていた頃、実際、相貌失認なのではないかと真剣に考えたことがあった。が、結局のところ、そこまで覚えられない訳ではない。覚えられる人はすぐに覚えられるし。

 今回の入院では、せめて名前だけでも覚えようと努力した。そうすれば、顔の区別がつかなくても、個人の判別がつく。
 しかし、この病院のユニフォームには、ネームプレートがなかった。みな、半袖の上衣の左腕にネームプリントがある。
 しかし、ワタクシは入院から数日間熱が下がらなかった。寝ていることが多く、ほとんど眼鏡を掛けていなかった。袖のプリントは字が小さく、読めなかった...

 そして入院から数日後、札幌は冷え込んだ。看護師たちは、カーディガンを着るようになった。ネームプリントが見えなくなってしまった。これは想定外だった。

 それでも、その日の担当になると口頭で名乗ってくれる看護師もいて、何日か経つうちに数人は覚えることができた。例えば、M.U.さん、D.G.さん、W.T.さん。名前と顔が一致しなくても、顔だけは認識できるようになった人も数人いた。

 だが、入院から一週間ほど経ったとき疑問が沸いてきた。ワタクシのこの「看護師の名前と顔を覚える」というミッションのゴールはどこにあるのだろうかと。

 いちばんはじめに覚えることができた看護師に訊ねてみた。

「この病院には、何人くらい看護師さんがいらっしゃるんですか」

「入院病棟の担当は20人くらいですよ」

(にじゅうにん...)

 ゴールは遠かった。

 その昔、看護師は「白衣の天使」なんて形容をされていたけれど、別に全員白衣を着なくたっていいんじゃないかな。みんな白くてみんな紺のカーディガンを着ているなんて、見分けるのが大変だよ。ああもう!

 入院中にこんな悩みを持つのは、めずらしいのかな...


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