白髪を染めるという呪縛
十年以上続けてきたヘアカラーをやめた。
ワタクシは、白髪が出始めるのが早かった。気にしながらも何年かは染めずにいたが、ある日、染めることを選択した。当時、人前に出る仕事をしていたという理由もある。
「…という理由がある」と書いたが、人前に出る仕事をしているからと言って、白髪を隠さなくてはいけない訳ではない。それを誰かから命令されたり強制されたりしたこともない。自分で白髪を隠すことを選んだ。
若く見せたい欲求が強かったかと言えば、そんなこともなかったと思う。なんとなく、白髪を隠しておいた方が、身だしなみが整った人に見られる、という固定観念があったのだ。自分では、マナーの一環と捉えていた感もある。いま思えば、謎マナーだが。
当時はロングヘアだった。そしてワタクシは不器用クィーン。自宅で自分で染めると、周囲に大惨事を引き起こすのは必至。パーマとカラーのため、長い付き合いの美容師さんのところへ通っていた。なお、過去形で書いたが、いまでもこの美容師さんのお世話になっている。
化学物質過敏症になってから、パーマは止めたがカラーは止めなかった。一般的なヘアカラーをやめ、ヘナに変えた。ヘナだと体調不良にならずに染められたからだ。
それから約2年。
その間に仕事を辞め人前に立つことはなくなり、新たに就活をしたが思うような結果にならず、そうこうしているうちにハハに手が掛かり始め、時間が自由にならない再就職に不安が出てきた。←イマココ という状態だ。
そして、ヘアカラーをやめた。
しばらく、もしかしたらこの先ずっと人目を気にする必要はない。もしも人前に出ることがあったとしても、自分の自由意思で自分の身なりを決めても問題ないだろう。誰かわからない誰かから白髪を隠す必要などない。
だいたい、白髪が出るのは自然現象なのに、どうして隠さなくてはいけないのか。幸い、そんな謎マナーにはもう縛られなくていい。
染め始めたときから感じていた。ワタクシは、髪を染めると染めた瞬間から、「次はいつ染めなくてはならないだろうか」というストレスを抱えた。一回染めればお終いではない。生きているから髪は伸びる。白髪は白髪として伸びる。それがいつ目立ってくるのか気になった。
背が低いから、高い人に隣に立たれるのも嫌だった。世界の15歳以上人口のほとんどはワタクシより背が高いと思うが、そんな当たり前のことも耐え難かった。
自分で選んだクセに、ヘアカラーは呪縛だった。そこからやっと抜け出すことができそうだ。
いまはまだ白髪の割合が低いので、グレイヘアとはいかない。もう少し白髪が増えれば、きっと素敵なグレイヘアになる。ちょっぴり楽しみだ。
いつか、草笛光子さんのような素敵なホワイトヘアになれるかもしれない。
また髪を染めることがあるのなら、白髪を薄い紫色に染めるとか、そういうカラーにしてみたい。
そこまできれいな白髪になってくれるだろうか、この髪は。