はじけ気味な常々 -きさらぎミッドサマー弐式前日譚-
はじけ気味な常々
こちらの台本は、座・シトラス アナザー公演vol.012『きさらぎミッドサマー』の前日譚です。
『きさらぎミッドサマー弐式』
2023年12月17日(日)14:30
場所:ジョイジョイ ステーション(〒176-0002東京都練馬区桜台1丁目2−8※西武線、桜台駅 南口から徒歩3分)
予約のURLはこちらからです。
https://www.quartet-online.net/ticket/voet202312?m=0ycfdbh
●登場人物
プレイヤーA:安野伸仕(あんの・しんじ)男 21歳 星乃圭吾
プレイヤーB:場當明晴(ばとう・あきはる)男 23歳 進藤恵太
プレイヤーC:信楽福礼(しがらき・ふくのり)男 21歳 ながいこうた
プレイヤーD:柁奈滋漓窪(だな・じりあ)女 20歳 asyulan
プレイヤーE:蝦村弘彌(えむら・ひろみ)女 21歳 宮澤さくら
NPC:店員 居酒屋の店員 男 28歳 NJ
ゼミ旅行に行くおよそ3か月前の4月初め。
2回生の3月にゼミが決定した5人は、フクノリの提案で交流会と称したゼミ飲み会を開催することになった。
新宿の居酒屋で、シンジ、バトー、フクノリ、ジリア、ヒロミが飲んでいる。飲み会開始から、40分ほど経っている。
ジリア「だーから、あたしは『ミッドサマー』より『ヘレディタリー』の方が怖かったんだよね~」
フクノリ「ダナさん飲みすぎですよ」
ジリア「ジリアでいいよ。それに何で敬語なの」
フクノリ「敬ってるわけではないです」
バトー「敬えよ」
ジリア「すみませーん、カシスオレンジくださーい。あ、シンジも何か飲む?」
シンジ「そうだな」
ジリア「何にする?」
シンジ「……何でもいいよ」
ジリア「何でもいい時はコーヒーだ」
バトー「(シンジに)それでいいのかよ」
フクノリ「エムラさん……何か飲む?」
ヒロミ「わたしは、アイスティーを」
フクノリ「紅茶好きだね。僕も紅茶好きだけど」
ヒロミ「あの」
フクノリ「ん?」
ヒロミ「わたしもヒロミでいいです」
フクノリ「え?」
バトー「呼び方だろ」
フクノリ「ああ」
店員が来る。店員はひどい関西弁である。
店員「はい」
ジリア「カシスオレンジと、アイスコーヒー、アイスティー」
フクノリ「それのサワーも」
バトー「俺はハイボール」
店員「はい。分けて持ってくるのめんどいんで全部混ぜてええですか?」
バトー「なんでだよ」
店員「ホンマめんどいな」
バトー「普通だろ」
店員「この後コースのメイン来るけど肉やから赤ワインが合うと思うねん」
バトー「ソムリエかよ」
ジリア「飲みまーす」
シンジ「大丈夫?」
ジリア「うぇへへ」
店員「カシオレと冷コーとアイスティーとアイスティーサワーとハイボールと赤ワイン、グラス何個にしましょ?」
ジリア「(いらないというみんなのジェスチャーを見て)1個~」
店員「かしこま」
店員去る。
バトー「なんだあの店員」
フクノリ「すごく関西弁でしたね」
バトー「そこだけじゃねぇ」
ジリア「シンジも関西人だよね」
シンジ「ああ」
フクノリ「関西弁出ないですね」
シンジ「……嫌いなんだ。高校の時めっちゃ関西弁の教師がいて」
ヒロミ「めっちゃ……」
フクノリ「差し出がましくも恐縮ですが」
バトー「今度は敬いすぎなんだよ」
フクノリ「(シンジとジリアを見ながら)お2人は付き合っていらっしゃる?」
ジリア「うぇへへ」
シンジ「うん」
ヒロミ「そういう、それ、なんですね」
フクノリ「あー、じゃあここの交流会はもう終わってるんですね」
バトー「変な言い方するな」
フクノリ「あ、いや、でもシンジさん、シンジがこのお店選んでくれてよかった。もう即決でしたね」
ジリア「ここと、監獄風レストランとどっちがいいかなって」
シンジ「ここだな」
ヒロミ「即決ですね……」
フクノリ「監獄風レストラン、個室が暗くて狭いから……」
ジリア「なに? 閉所恐怖症?」
フクノリ「え? あ、いや、ほら、暗いより明るい方がいいし。パーっと。パーッと」
店員が来る。
店員「パッとサイゼリヤ」
バトー「サイゼリヤじゃねぇだろここ!」
店員「というわけでね、これドリンクと、メインのミートパイやで!」
店員去る。
バトー「どうやって持ってきたんだこの量」
シンジ「変わったメインだな」
ジリア「あたしこのパイ嫌いなのよね」
シンジ「そうなの?」
ジリア「え? ジブリジョークだよ」
シンジ「ふぅん」
フクノリ「ミートパイおいしい。(ヒロミを見て)あれ、食べない、の?」
ヒロミ「あ、わたし……おなかいっぱいで」
フクノリ「そうなんだ。あ、でもヒロミが最初持ってきてくれてたアップルパイおいしかった」
ヒロミ「お通しの前になくなるとは思いませんでした」
ジリア「おいしかったもん。店員も食べたそうにしてた」
ヒロミ「作ってよかったです」
フクノリ「作ったの!? 最初に言ってよ!!」
ヒロミ「すみません」
バトー「謝るなよ、うまかったし」
ジリア「(シンジに)ねー」
シンジ「うん」
フクノリ「よく作るの?」
ヒロミ「あ……はい」
フクノリ「あー……いいなぁ、僕、人にお菓子作ってもらったことないな」
バトー「母親とかは」
フクノリ「あー……母は……作らなかったなー」
ジリア「父親とかは」
フクノリ「え……人形しか作ってないな」
シンジ「人形?」
ヒロミ「人形焼きですか?」
フクノリ「違う、違う、あの、うちの父、人形作りの職人で」
ジリア「えー、ちょー伝統芸能」
フクノリ「そんなんじゃなくて、下請けの孫請けみたいな」
ジリア「おもしろ。あ、ヒロミ、またお菓子作ってきてよ」
バトー「図々しいな」
ジリア「えー、いいじゃん。(シンジに)ねぇ?」
シンジ「うん」
バトー「相槌が適当だな」
ヒロミ「いいですよ」
ジリア「ほんとー? あたし、ザッハトルテ食べたい」
ヒロミ「ザッハトルテ」
ジリア「ほら、チョコレートの」
ヒロミ「チョコレート……」
ジリア「あ、もしかしてチョコレートだめなの?」
ヒロミ「あ、そういうわけじゃ、だめです」
ジリア「だめかー」
シンジ「(ヒロミが)困ってるよ」
バトー「見りゃわかるよ。でもなんか得意なことがあるのはいいよな」
フクノリ「そういうバトー……は、なんかスポーツとかやってるんですか? 運動得意そう」
バトー「別に得意じゃねぇよ。サッカーサークルだけど」
ジリア「お、青春だねぇ」
バトー「そうか? フットサルみたいな遊びだよ」
ジリア「シンジなんかやってたっけ?」
シンジ「サッカー」
ジリア「かぶってる」
バトー「へぇ」
シンジ「なんか、誘われて入部したんだよ、高校の時」
フクノリ「高校サッカー部はすごそう。ポジションとか決まってた?」
シンジ「ミッドフィルダー」
フクノリ「バリバリだ、バリバリのやってる人だ」
シンジ「そういうわけじゃ、なんか、そうなった」
フクノリ「才能があったんだ」
バトー「才能、ねぇ」
店員が来る。
店員「すんまへん、デザートなんやけど、アイスなんよ」
バトー「言葉遣い! 客だぞ俺ら」
店員「アイス、チョコレートと北海道阿寒湖マリモ塩味があって」
フクノリ「後者のフレーバーの癖が強いですね」
店員「チョコレート4つしかないねん。誰か1人北海道阿寒湖マリモ塩味やねん」
バトー「罰ゲームかよ」
シンジ「俺、マリモ」
ジリア「早っ」
フクノリ「決断早い」
バトー「じゃあそれで」
ヒロミ「あのっ!」
ヒロミの大声にみんなちょっとびっくりする。
ヒロミ「あ、すみません、わたし、チョコレート、じゃない方が」
ジリア「いいの? ほぼ罰ゲームだよ」
ヒロミ「いいんです。わたし、罰を受けるんです」
バトー「自分を追い込むな」
シンジ「じゃあそれで」
店員「じゃあこれ」
バトー「持ってたのかよ、溶けるだろ!」
みんなアイスを食べる。
ジリア「おいひー」
フクノリ「ヒロミ、大丈夫?」
ヒロミ「(泣きながら)はい、ごめんなさい、ごめんなさい」
店員「それ食ったら閉店やから帰れよ」
バトー「お前は本当に!」
店員去る。
シンジ「会計してくる」
フクノリ「動き早い」
ジリア「もっと飲みたい」
シンジ「ジリア飲みすぎ。俺は帰るよ」
ジリア「うぇー、彼女置いてくな」
フクノリ「僕も帰ろうかな。ヒロミはどうする?」
ヒロミ「(泣いてる)」
フクノリ「あ、そんな感じ、だね」
シンジ、会計をしに去る。
フクノリは、泣いているヒロミを慰めながら一緒に去る。
バトーは残っている酒を飲んでる。
ジリア、テーブルに突っ伏して歌っている。
バトー「何の歌だよ」
ジリア「『おねがいダーリン』」
バトー「知らねぇな。ほら、行くぞ」
ジリア「もう一軒?」
バトー「行かねぇよ」
ジリア「おねがいダーリン」
バトー「ダーリンじゃねぇよ……ほら、とにかく店出るぞ」
ジリア「うぇー」
ジリア、バトーに支えられて去る。
店員来る。
店員「一見、はじけ気味な大学生たちの常々なる1コマに見えますが、奇妙な世界へ通じる扉は、彼らの直ぐ側に開いています。次のその扉を開けるのは 彼らなのかも知れません」
(XXXXの支度 続)
『きさらぎミッドサマー』
私NJが脚本、演出、そしてゲームマスター(!?)などを務めます。
都市伝説の『きさらぎ駅』のように、大学生5人が夏休みの旅行中に見知らぬ駅に降り立ったところから物語は始まります。
役者たちにも、何が起こるのかを教えていません。
役者も観客も予測不能なリアルタイムサイコロジカルホラーとなっています。
12月17日(日)14:30、1回限りの上演ですが、結末はどうなるかわからない1度きりの物語です。
是非ご来場ください。
『きさらぎミッドサマー』
12月17日(日)14:30
場所:ジョイジョイ ステーション(〒176-0002東京都練馬区桜台1丁目2−8※西武線、桜台駅 南口から徒歩3分)
予約のURLはこちらからです。
https://www.quartet-online.net/ticket/voet202312?m=0ycfdbh
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