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島に来たことに後悔はないか

2024年6月14日~16日、座・シトラス本公演ZESTAが開催されました。

ZESTA

まずZESTAという言葉ですが
zestful:熱心な、興味をもった、香味ある(特にシトラス系の?)
festa:(イタリア語)祭り
から生まれた造語です。
座・シトラスにふさわしい、熱のこもった祭りのような8つの公演が集まったZESTA。ご来場、配信にてご視聴いただいたお客様、誠にありがとうございます。

ZESTA8公演のすべて!

私はその中で、『救世主飯屋きゅうせいしゅめしや』と『即興島そっきょうじまの殺人 名探偵めいたんてい子子子子子しごねねこ最後から3番目くらいの事件』という作品で、作・演出・出演を行いました。
こちらのnoteでは、『即興島の殺人』について書かせていただきます。

2024年6月30日(日) 23:59 まで配信購入可能です。

まだご覧いただいていない方は、是非、公演配信をご購入いただきご覧ください。
こちらのアドレスからご購入いただけます。

シリーズ第3弾のテーマは『マダミス』

即狂館そっきょうかんの殺人』『速強局そっきょうきょくの殺人』と続いてシリーズ第3弾は舞台が孤島! しかも新宿にある孤島! 新宿は何でもあるのでいいですね。探偵ものの定番のシチュエーションです。
元々は、ミステリが大好きな男が殺されるという設定だったのですが、「今やるしかない!」とマーダーミステリーに関係するものを詰め込みました。
定義は色々ありますが、殺人事件を『演じる』遊びというマダミスを選んだのは、子子子子子シリーズにおける根底のテーマ、『演じるとは何か』、そして『運命と戦え』に個人的に合致していると思ったからです。『即狂館』では偉大な名探偵だった父から名探偵の称号を受け継ぎ、『速強局』では「台本に即興で勝てるのか」と演劇における運命である台本に立ち向かう子子子を描いています。そして今回は『探偵であることに悔いはないか?』と、役割を演じるということに言及するテーマがあります。人生において自分がやっていることに後悔はないかという重いことから、マダミス終わってうまく遊べた? くらいのライトな感想まで、存分に含みを持たせています。
マダミスは自分も関わることが多く旬のものなので、やるなら今しかないと思って作品に取り入れました。『マダミスあるある』から『こんなマダミスは嫌だ』まで入れました。何とは言いませんが公演中に界隈で何事もなくよかったです。

張り巡らされたクモの糸

子子子子子シリーズは、『スパイダーマン』を応援しています!
というのはさておき、それじゃあ最初から説明したり、大いなる推理には大いなる責任が伴ったり、両親が死んでいて叔父のべんと叔母のめいに育てられていたりと、わかる人にはわかるものでできている子子子。父の了一りょういちは既に登場していますが、今回フィーチャーされたのは母ユナ。そして両親を殺したのはコスメティック・ショッカーという、百貨店の化粧品売り場で99人を殺害した連続殺人鬼。清涼な飲料水の香りさえします。加えて、両親が犯罪者に殺されている主人公と言えばバットマンですね。
過酷な運命を背負った25歳の女の子ですが、特に今回は『大いなる推理には大いなる責任が伴う』ですし、『探偵であることに悔いはないか』というお話になっています。
最後に例のアレまでやったので、作者であることに悔いはないです。

敵はすべての……

今回は『共演者全員が結託してドッキリを仕掛けたら、主役が何か見破ること不可能』説でした。『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』のキャッチコピーは『敵はすべてのスパイダーマン』でしたが、これは『敵はすべての共演者』でした。
更に『即興島の殺人』の公演日2024年6月16日の1年前に、日本で『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』が封切られています(2023年6月16日)。流石に運命を感じます。
そんなすべての出演者に、お礼と賛辞を申し上げます。

此島このしまオレノ役 R・ウォーターマン

本棚が同じ(サブカル知識が被ってる)友人が遂に被害者役で登場。
歴代最強の被害者と名高く、そもそも容疑者にこの男が殺されるのかという懸念もありました(笑)。
本棚が同じなだけあって作品への理解度が深く、何も言わなくてもやって欲しい要素をバチバチに持ち込んでくれました。衣装メイクの1つ1つに意味がある。ボールペンのアイディアも彼のものです。
マダミスへの想いも深く臨機応変に死んでくれました。此島オレノはロバートしかできなかったし、ロバートによって完成されたと思います。

品両しなりょう雷太らいた役 石川安牌

子子子子子シリーズ全登板記録保持者。
マダミス作家のキャラクター。安牌さん自身も『ゲンガー家の館』『怨霊の棲む町』というマダミスを作られているのでとても適切でした。
本番では、最初嫌な人だと思ったら……と魅力を付け加えて演じていただけたので、安牌さんの人柄も出た味わい深いキャラになったのではないかと思います。次回作にも必ず登場して欲しいです。

今渋いましぶ史与しあた役 蔵本聡

前回の被害者が容疑者で登場!
マダミス会社社長。社長って何だろうと思いつつ造形していましたが、ちゃんと社長ぽかった!
『速強局』の南家なんか四二曹しにそうと違うさとしさんの魅力が出たらいいなと思ったら、とんでもないことになった。オスカー像あげないといけないかもしれない。稽古段階でも暴れてもらえ、子子子子子シリーズの幅が大いに広がりました。
(余談)
さとし「おれ、今回ウィッグをかぶろうかなと思うんだ」
NJ「今回は『スパイダーマン ホーム・カミング』のマイケル・キートンみたいな社長のイメージです」
さとし「おれ、このままでいくよ」

橘井きつい氷花ひょうか役 黒瀧嶺華

独特の間とおっとりした雰囲気からは伺い知れない爆弾を放り込んでくる。
マダミス評論家という、そんな仕事ねぇよというキャラクター。ミステリアスな見た目に仕上げてくれて、『黒蜥蜴』をほうふつとさせますね。
稽古中に悩まれていたけれど、「人を傷つけてしまうこと」への恐れ、恋人を失ったことによる喪失の感情を魅せつつ、案外好戦的で驚きのオファーをするいいキャラクターになっていました。

新港しんこう識流しきる役 進藤恵太

やっと子子子子子の世界に呼べた……
マダミスのGMという、ケント(進藤恵太)にうってつけの配役でした。
勝手に『MIU404』の星野源のイメージを押し付けて、ケントの持ち味のサンドイッチマン・伊達を感じさせるツッコミと相まって俺が対峙していて楽しい瞬間が多くありました。
稽古の時から、「犯人になりたい容疑者」を演じるのが上手く、ある意味無双しそうだなと思っていました。一緒にやっていて安心感があるので常にご一緒したくはある。ボドゲもしたい。『救世主飯屋きゅうせいしゅめしや』の稽古にキチキチキッチンを教えてくれたのもありがとう。

猿臂石えんぴいし園汰そのた役 瀬下冬梧

まさかの2作品共演ありがとう!
マダミスのNPCやマダミスの舞台化で演じるマダミス役者という設定。猿臂石園汰は今回一番好きな名前。
そもそもマダミスそんなに知らない中、特殊な即興演劇の要素に苦しめられていた彼ですが、密談の稽古で連続で呼ばれるというスパルタ訓練を経て一気に開花。稽古がない間に超人兵士血清でもう打ったんじゃないかと思うくらい急成長。ジョジョの広瀬康一かジョルノかよ。『救世主飯屋』とは違う、酷い目に遭っている時に見せる輝きが良かった。

岩瀬いわせ恵砂けいさ役 宮澤さくら

子子子子子シリーズになくてはならない役者。
岩瀬刑事として再登場。ずっと新宿警察署で頑張ってもらいたい。
今回は今までとちょっと違うツッコミの形態。「そんなわけねぇだろ」という現実再確認ツッコミのメインは他のキャラに譲っており、メイン業務は味方として子子子子子のメンタルケアと容疑者情報の補足。もちろん、更には各シーンでワイプとしてツッコミ芸人もやるので稼働が多い。お疲れ様でした。役割というものを考えるのが今回の作品のテーマである中、岩瀬刑事も次のことをする段階になったんだと思うと感慨深いし、そういうキャラにしたいと思わせてくれた宮澤さくら本人にも感謝したい。
ラストには彼女の言葉があるのが子子子子子シリーズのお約束。これからもよろしくお願いいたします。

写楽家しゃらくや右左ゆさ役 子子しごユナ役 伊豆原友美

写楽家右左
子子子の母、子子ユナ

そりゃあ3作目は主人公のライバル出ますよね!
謎の交渉人として子子子の推理を試すようなことをする写楽家右左と、今まで語られていなかった子子子の母である子子ユナ。
まず、俺の『スパイダーマン』に対する想いが重くてゆみに伝わらないんじゃないかとか、本番で俺が台詞言わなかったとか色々謝らないといけない。
そして対極のような2役を演じてもらえたこと、負荷がかかったと思う。ユナについては「天海祐希が『新世紀エヴァンゲリオン』の碇ユイを演じた感じ」と摩訶不思議なプランを伝えていたので苦労したと思う。
写楽家右左は、子子子のライバルとして、子子子にプレッシャーを掛けつつ容疑者たちの「そんなわけねぇだろ」にツッコんでもらうこともあったので、忙しい役回りでしたね。
それでも俺の中ではこの2役を同時にできるのはゆみしかいなかったと思っているし、無事にやり遂げてくれたと思っている。深い謝辞の限りである。

子子子子子役 沖村彩花

シリーズ続投本当にありがとう!
前作の『速強局の殺人』では、最悪のヴィランにより不快の奥底に叩きこまれ、そして終わった後も子子子としてモヤモヤするというある意味嫌な展開になったが、まぁ大体の映画の2ってそんなもんだし(『マトリックス リローデッド』とか)今回につなげるための布石だったので許してください。
きっと舞台上でも俺(というか俺が演じる和登村わとむら努射どいる)に対して警戒していたと思います。
『速強局の殺人』を経て、子子子が更に成長する話にしたかったし、あやけはそれを果たしてくれた。舞台上で見せてくれた涙は、俺も観客として泣きそうだった。今渋の兄を亡くした気持ちから、子子子の肉親への想いを拾ってくれたこと、自然と今作の展開の伏線を回収する形にもなっていて驚いた。全体を通し、改めて沖村彩花の役者としての力をぶつけられた。
これからもあやけには、そして子子子には、試練のような展開が待ち構えているだろうけど、俺は何も心配していない。どんな世界をも、蜘蛛の糸のような綱渡りを奇跡のように演じてくれるだろうと信じている。
最後に本人の許可を得ていないけどLINEのスクショを。なお、本番より1か月前の会話である。もちろんあやけは犯人逮捕以降の流れを知らない。

2024年5月12日

そろそろ探偵の時間も、傍観者としての時間も終わりである。子子子子子シリーズ第3作を無事お届けできたことにほっとしつつ、観て頂けている、応援してくださっている、支えてくれている周囲の人々に感謝している。
俺の大いなる父親が、言っていた。

2024年6月3日 父からのLINE

いつだって悔いのないように。

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