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漫画の話『ザ・ムーン』~駄作?怪作?異色の巨大ロボット漫画~
さて、漫画の話をしましょう。保険の話なんてつまんないしね。
今日紹介する漫画は、ジョージ秋山の巨大ロボット漫画、『ザ・ムーン』です。この作者は『浮浪雲』や『銭ゲバ』などの作品で有名で、人の欲望や社会の不条理を赤裸々に描く事で、一定の評価を得てる作家です。
まあ、やる気なくなると適当に話を放り投げたり、惰性でマンネリズムに陥った最低の作品とかも描きますが…。ともかく、巨大ロボットとは全く相性が良くないように思える作家なんですが、果たして出来上がった作品はどんなものか?
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あらすじ
大富豪の魔魔男爵は莫大な私財を投じて、無敵の巨大ロボット「ザ・ムーン」を作り上げる。そしてザ・ムーンの操縦を、(適当に集めたとしか思えない)9人の子供たちに託す。その目的は、子供たちにザ・ムーンを自由に使い「正義」を行って欲しいとの事だった…。
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なかなか面白そうじゃないかと思ったそこの貴方、そうです。結構面白いんです。巨大ロボットを大人から子供に渡されるとか、ロボットものの基本の流れを踏襲してますし、魔魔男爵が「力が正義」と言いながら、その力を子供に預けて正義を見つけて欲しいと言うところとか。ザ・ムーンの登場も石棺から出てきてなかなか迫力ありますしね。そして面白いのはここまでです!
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(ムーンムーン言ってるのはロボットの鳴き声)
なんか変だぞこの漫画!
さて、最強の巨大ロボットを得た子供たちが、どんな事件に巻き込まれるかというと…
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最初の事件は交差点の真ん中に、切断された生首が置いてあったというものでした。…いや、ちょっとおかしくないかな?巨大ロボットの漫画だったはずだよね?しかし、変な事件はこれでは終わりません。その後の事件も正義の名のもとにリンチを行う謎集団であったり、行き場のない老人たちがロボットに乗り込んで襲ってきたり、犬型宇宙人がやってきたり、珍妙なものが登場します。
ちなみに、老人がロボットに乗って襲ってくるという、一応高齢化社会がテーマと思われる話は私のお気に入りです。特に「老人は頑張って働いてきたのに、酷い扱いされてかわいそう」という、まあ理解できる話から「だから若い美女がいるユートピアで暮らす権利がある!」みたいなぶっ飛んだ理解不能な主張を繰り広げるあたりが大好きです。この辺、作者のジョージ秋山の願望が漏れ出してると私は睨んでます。
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怒涛のコピペ
ちなみにこの作品、作者はわりと早い時期で飽きてたみたいで、作中には恐ろしいほどのコピペが使われています。特に連合正義軍という、アメリカンなバイクに乗ってリンチを行う自称愛国者の集団(リーダーはモロに三島由紀夫)のコピペはすさまじく、現代なら確実にSNSで炎上してるぐらいです。
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(同作者の『デロリンマン』のセルフパロディでもある)
このくらいなら可愛いものですが、どんどんコピペは増え、最後にはこうなります。
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念のために言いますが、私は全く加工してません。見開きページでこれを出すセンス、非凡としか言いようがありません。本当、これで原稿料を貰ってたとか信じられないな。
まとめ
この漫画、伏線らしきものが最終回まで結構残ってるんですが、全部投げ捨てて終わります。ぶっちゃけ人気なくて打ち切りになったみたいですね。実際読んでみると、若干適当というか、投げやりな感じが随所に見て取れます。それでも流石は奇才・ジョージ秋山だけあって、心を一つにするために般若心経を皆で唱えるシーンなど見どころも多いです。
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(ちなみに数ページずっと唱え続ける)
巨大ロボットが好きだけど、普通のロボット漫画とかは飽きた!って人は是非一度読んでみてください!決して名作ではありませんが、唯一無二の不思議な世界が広がっています。…あと、登場人物は最終的に犬型宇宙人のカビ爆弾で全員死んで、地球が滅びて終わります。
本日の漫画紹介でした!
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