「幕末土佐の天才絵師 絵金」展@あべのハルカス美術館
ずっと行きたいと思っていた絵金展。最終日の今日に行って来ました。
どの展覧会だったか記憶が定かではないのですが、あべのハルカス美術館での展覧会で1作品(確か)だけ出ていた絵金の芝居絵。
ド迫力で「なんだこりゃ!?」と驚いたのを鮮明に覚えていて、同じあべのハルカス美術館で今度は絵金だけの展覧会をやると聞いて、行くしかない!と思っていました。
なんなら絵金について調べて、いつもはやらない前売券を買うということまでやった気合いの入れよう。
なのに、そういう時に限って、色々と突発的な何かが発生して、そして先月末からのっぴきならない状況にもなり、慌てて最終日に駆けこんだのでした。
絵金の作品は血が飛び散っていたり、人物が苦悶の表情を浮かべていたりと、題材としてはおどろおどろしいのですが、例えば月岡芳年みたいな凄惨さは意外とないなーというのが、第一の感想でした。
血の赤も、あの赤黒いどろっとした色ではなくて、むしろ鮮やかな赤。着物の赤もまったく同じなためか、明るい血(変な言葉ですが)なイメージを持ちました。
人物のポーズもダイナミックで、エネルギーに満ち溢れているからというのもあるかもしれません。
苦悶に満ちた顔であっても、死にゆく顔ではなくて、「生」のパワーをめちゃくちゃ感じました。
ポーズのダイナミックさで言えば、図版で見た時から”エネルギッシュだな”と思っていたのですが、実物を見たら本当にすごい。
それは作品の大きさから来るものだと思うのですが、ほぼ等身大の屛風絵で、あの誇張されたポーズを堂々と描かれると圧倒されてしまいました。
ただ大きいというだけではなくて、それに見合う大胆な筆さばきも見事。
太い線が、大きな画面を縦横無尽に駆け巡っていました。
人物のダイナミックな線に対して、背景の描写は冷静な筆致で、直線が連なる部屋の中だったりします。この対比で余計、ダイナミックさが引き立つんだろうなと思いました。
もう1つ、印象的だったのが髪の毛の描き方。
図版で見た時からも思っていたのですが、誰一人ときれいになでつけられた髪の人がいない!
おくれ毛やら、乱れた髪やらで、髪の毛までも意志を持っているようでした。
これらの作品が夏祭で飾られている、という情報を持っているからかもしれないですが、汗や湿気をはらんだ髪のようにも見えてきて、人物の体温の熱さを髪の毛の描写から感じられる気がするくらいでした。
とまぁ、今回は展覧会に行くまえに、絵金の作品を本でたくさん見ていたのですが、だからこそなのか、実物を見た感動もひとおしでした。
サイズを含めた作品と考えると、これぞ本では感じ得ないものを見られたなと思いました。
因みに、中盤あたりの展示が、実際のお祭りを模倣した展示になっていて面白かったです。
これを見ると、実際にお祭りの中で見てみたい気持ちが膨れ上がってきます。
何となく、絵金の作品は涼しい美術館のなかでガラスケースにおさまっているような類ではなくて、暑い野外で見るのに適しているような気がしてなりません。
この生の力がほとばしる作品を見ていると、熱気が欲しくなってしまうというか…
実際は暑さに弱いので二の足を踏んでしまいますが、展覧会で再生されていたお祭りの様子を見ていると、いつか行ってみたくなりました。