『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』感想 ※ネタバレ無し
有難い事に試写会に当選して一足先に観させていただきました。『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』。
12/21現在、日本で観れているのは今回の試写会に参加した人たちだけ。ただでさえネタバレが大いに危険視される映画なのに日本での公開は1/7とあと二週間も空いていてよりネタバレがセンシティブな状況ですが、試写会に参加させていただいたということは感想を広めるのが義務だろうと敢えて出力します。ネタバレは当然しません。キャラクターへの言及も最小限にします。……ですが、どんな感想でもピータームズムズが発動してしまう人は回れ右です。全力でスイングで去ってください。
スパイダーマンと言えば2度目のリブートで、本作はトム・ホランド、ゼンデイヤ、ジェイコブ・バタロン、マリサ・トメイを中心にジョン・ワッツ監督がメガホンを取ったシリーズの3作目。前作『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』ではジェイク・ジレンホール演じるミステリオがピーター・パーカー/スパイダーマンを嵌めて世界の敵にする……だけでなく、なんとピーターが世界から疑惑の目を向けられるきっかけになったニュースを報道したのは、最初のトビー・マグワイア主演の映画シリーズに出てきたデイリー・ビューグルのJ.Kシモンズが演じるJ・ジョナ・ジェイムソン!!ジェイムソンが出てきたという事は、遂に様々な次元が混じり合うマルチバースに突入するのか?!とファンは大混乱。
その直後からスタートの『ノー・ウェイホーム』には、公開されている情報で分かる通り、ジェイムソンとは関係無しに世界に正体が明かされて困ったピーターが頼み込んだストレンジ先生のやらかしコンビの影響で次元が裂け、最初のスパイダーマンからだけでなくアンドリュー・ガーフィールドの2代目スパイダーマンからもヴィラン達が登場。遂にスパイダーマンの映画にまとわりつくムズムズとの真っ向勝負!
冒頭からエキサイティングなアクションと思わず声を上げそうなサプライズの連続。まるでスパイダーマンのスイングにライドしてるかのように予期せぬ程ダークなストーリーにエモーショナルなドラマが展開されていく。
……そうなってくると本来のトムホ・ホランドのスパイダーマンシリーズのストーリーは大丈夫なの?と言えば、そうでなければトム・ホランドのスパイダーマンの映画をジョン・ワッツ監督が撮る意味が無い。今までは漠然と作中に空気感として漂うだけだった「親愛なる隣人」、「大いなる力には大いなる責任が伴う」と言うスパイダーマンのテーゼが根幹に据えられ、歴代のヴィラン達が出てきた意味がそこに集約されてピーターに伸し掛る。
ジョン・ワッツ監督と言えば、『コップ・カー』から"若気の至り"と"大人の若者の搾取"を描いてきた。『ノー・ウェイ・ホーム』ではトム・ホランドスパイダーマン三部作の最終章とされる事もあり、そのテーゼが物語を誰も予期しなかった方向へと運んでいき、トム・ホランドのピーターの誰もが知ってる側面と知らなかった側面を引き出していく。果たしてどっちに転ぶのか、後半はその狭間で揺らがされ、心臓が締め付けられる。そして、全てはスパイダーマンへと収束されていく。思えばジョン・ワッツ監督は1作目『ホーム・カミング』と『ファー・フロム・ホーム』と今までとは違う毛色でスパイダーマンと言うものにアプローチしつつ、作家性に求められていた「大いなる力には大いなる責任が伴う」、「親愛なる隣人」は常に描いてた事なので様々な要因も合間り、いよいよ機は熟したと言ったところ。
かつてのヴィランたち、アルフレッド・モリーナのオクトパス、サンドマン、ジェイミー・フォックスのエレクトロ、リザード、そして、ウィレム・デフォーのグリーン・ゴブリン。それぞれのストーリーを踏まえた上でその全員が適切に扱われているのもジョン・ワッツ監督ならでわの手腕。ピーター、MJ、ネッド、メイ、ハッピー、お馴染みのメンツもスリリングな状況に置かれる中でいつものユーモアと愛らしさを失われる事無く描かれ、ストレンジなんかはチャーミングさが増している。豪華な歴代ヴィラン、そして、いつもの馴染みのキャラたちの関係も重要で絡み合って、それぞれのスパイダーマン映画とMCUのスパイダーマン映画のそれまでのドラマを昇華させつつ、『ノー・ウェイ・ホーム』のドラマを際立たせているのは神業的な仕上がり。
しかし、やはりファンサービスと言うのは呪縛のようなもので、あらゆる要素にそれまであったジョン・ワッツ監督によるスパイダーマン映画のスパイダーマン映画としての真新しさは少しなりを潜めてしまっているのが勿体ない。これは、直近で『シャンチー』、『エターナルズ』と言うMCU内外でも誰も見た事がない世界があったから余計に目立つ事なのかもしれない。
だけど、『ノー・ウェイ・ホーム』は全てのスパイダーマン映画を昇華し、スパイダーマンを次のフェーズに押し進めたのは違いなく、またスパイダーマンはいつだって親愛なる隣人だと知らしめた。
そして最後に、この映画を観れば誰もがその瞬間に他の人にも新鮮な気持ちで数々のサプライズに感動してもらいたいと思うと思う。ネタバレはできないんじゃない、言えない。それくらいの特大のサプライズが待っている。