『ニューエクスプレスプラス ウクライナ語』をやった
感想を書いていく。
本について
できるだけ文法事項を網羅しようとしてる気がする。全20課で解説しないといけないので限界はあるものの、結構がんばってるのではないか。めぼしい事項はだいたいあるような気がする。勉強する側としては大変になるが。
ウクライナ語を学ぶ一冊目としては最適だと思う。
キリル文字や他のスラヴ語に慣れてると最初の方はどんどん進められるが、どんどん大変になっていく。初めて触れる場合はもっと大変だろうなあと思う。
文法用語が、日本におけるロシア語(をはじめとしたスラヴ諸語)の教育で使われるものとは異なっており、印欧語族などについて一般に用いられる用語を使っている。「生格」でなく「属格」、など。
これは、ウクライナ語を他のスラヴ系言語との対比でなく、それ自体として文法を記述するための方針であると思う。それはよいことだと思うが、ただ「主語なし3人称複数文」はちょっとそのまま過ぎないかと思う。別に「不定人称文」や「非人称構文」とかでもいいのでは…。
ウクライナ語の感想
他のスラヴ諸語で知ってるのがロシア語だけなのでロシア語との対比で見てしまいがちなのはご容赦願いたい。
同じく東スラヴ語群に入れられるロシア語とは、文法の枠組みは似ているものの、形や発音は異なっている。特に、語彙はポーランド語にかなり似ているらしい。結果としてそこまで似てない感じがする。ロシア語話者がウクライナ語を聞いてもあんまり理解できないと思う。
暦の月名など、ロシア語ではキリスト教経由で入ったと思われるローマ暦由来のものを使っているが、ウクライナ語ではスラヴ語固有のものを使っていて、ポーランド語のものに近い。
文字はキリル文字だが、ロシア語とは発音が異なり、є, їなどの独自の文字もある。
発音面では、アーカニエしない(оは常にオと読む)。гは[ɦ]と読むなどの特徴がある。гを[ɦ]で読むのは古教会スラヴ語の東部での発音をそのまま受け継いでるらしい?ロシア語ではбог[box]など限られた語に痕跡が見える。
子音の無声化や同化の条件がロシア語と異なっている。など。
ロシア語の対応する語でоになっている母音がウクライナ語の対応する語ではіになってることがあり、不思議だ。
ロシア語の表記はёの発明により母音の硬軟が異様にきれいに体系化されたが、ウクライナ語の表記はそこまで綺麗な対応にはなっていない。оの軟音を示す文字が存在しないのと、и-і-їの三つ巴がある。
文法面では、呼格の存在と独立した未来形があるのが独自のようだ。
動詞過去形の語尾が、-в /w/, -ла /la/, -ло /lo/, -ли /lɨ/になっていて、ロシア語と似てはいるが、ロシア語の男性単数-лに対応するのが-в /w/になっている。そこだけは暗いLが/w/に変化した感じがあり面白い。比較してポーランド語だと3人称過去形は-ł, -ła, -ło, (男性複数) -łi, (女性複数 -ły)となって全部/w/になっている。
日程
36日かかっている。