花盗人に悪い人はいない?の話
自宅のお隣さん宅では四季咲きの薔薇が満開だ。お隣りのお婆ちゃんがいつも丁寧に手入れをしている。
ある日の朝、5時に目を覚まし、通りに面した2階のベランダで珈琲を飲んでいると、カサカサと音がしてきた。下を見ると、道を歩いているお爺さんがレジ袋を手に持っているらしい。
するとお爺さんはお隣りの薔薇の前で立ち止まり、キョロキョロと辺りを見回した。その直後にに、
「チョキ!チョキ!」と音がした。
角度的に手元は見えなかったが、ハサミで薔薇の枝を切ったのは明白だ。(私は庭師です)
その後カサカサと音がしたあと、歩き出したお爺さんの手元にはレジ袋に入った薔薇が。
『花泥棒』である。
お隣さんと知り合いで了解を得ているのならキョロキョロ辺りを見回さないだろう。
また、ハサミとレジ袋を用意していた段階で出来心ではない。
ここに薔薇が綺麗に咲いていることを知っていた『確信犯』だろう。
お隣のお婆ちゃんは良い人だから、見つかったとしても、「いいですよ。あげますよ。」と笑顔で言いそうだけど、黙って持っていくのは良くない。
過去にも花泥棒にはとニ度遭遇している。
こちらはちょっと悪質だった。
一度目は、造園会社に勤めていた頃の話で、公共施設の花壇に1500ポットの花植えをしていた。
10時の休憩時間に飲み物を買いに行き戻ってみると、知らないお婆さんが植える前のポット苗を持ち去ろうとしている。
「ちょっとお婆ちゃん!それ持っていかれると困るんだけど!」と私が言うと、
お婆さんは、「この花は役所から配られてるんだろ?私は税金を払っているからいいんだよ。」と訳の分からない事を言い出した。
「いやいや俺だって税金払ってるし、みんな払ってるよ。この花はここに植えるために用意した物で、住民に配るためじゃないよ。」と厳しく言うと、
「なんだよ!ケチだね!じゃあいいよ!」と怒って去って行った。まさか謝るどころか逆ギレされるとは思わなかった。
二度目は、公園の大きな花壇に花を植えた時の事。
何日も雨が降らない猛暑の季節だったので、枯れてしまわないようにと翌日水やりをしに行った。すると、ボコボコといくつも穴が空いている。昨日植えた花が抜かれていたのだ。
呆然としていると、通り掛かった人が、「あー、またやられてる!近くに住む婆さんがちょくちょく持っていくんだよ。駄目だって言っても聞かないんだよ。」と。
花苗は大した金額ではないんだが、暑い中懸命に植えたので、苦々しい気分だった。
『花盗人に悪い人はいない』という言葉があるが、どうだろう?盗みは盗みだ。
花を愛しているなら、きちんと購入した上で愛でて欲しいものだ。
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