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#20 人は逆算のみにて育つにあらず

成長について考えるとき、
『目標を決め、計画を立て、スケジュールに落とし、1つずつ実行していく』
という逆算思考がデフォルトになっている所、ありませんか?

障がいのある子たちを取り巻く環境でも同様で、学校と、全福祉サービス事業所から各1枚の「個別支援計画」が渡されます。利用先が多ければ、ひとりの子に対して「支援計画」が全部で5枚も6枚も並行して走っている、ということもざら。

今日はそんな、子どもの育ちを巡る逆算思考の功罪と、それ以外の可能性についての話です。


逆算すると「足りない」からスタートしがち

 ○大人の育ち

例えば「保育士の資格を取って支援者として成長しよう!」と決意した時。資格試験の日程と試験内容を調べ、参考書を準備し、毎日コツコツ勉強する。

この時、出発点(動機)になっているのは「保育士資格を持っていない自分」「支援者としての力量が足りていない自分」です。

現状に満足しない、必要性を自覚する、それができる場所に身を置く、といったことは自己啓発の常套句ではありますが、言い方を変えるとそれは「足りていない自分」に気づくことから始めよう、というメッセージだと思います。

 ○子どもの育ち

同じ発想で子どもの育ちを捉えてしまうと、時々危ういことが起きます。

先ほどと同じ形で考えを進めながら、「子どもの育ちに関する目標を決め、計画を立てる」をすると、ついつい、「この子の足りていないところ」から出発してしまいがちです。

苦手なこと、できないこと、減らしたい行動、遅れているところ、、、

全ての支援計画がこうした書き方になってしまい、半年に5枚も6枚も「足りていないところ」を突きつけられたとしたら。「足りていない存在」として見続けられる子どもの気持ち、そして、ご家族のその子を見る視点に大きな影響を与えてしまうリスクがそこにはあります。

子どもに対して、今持っていない何かを「足す」ことだけが「育てる」ことだと考えてしまうと、非常に危うい

妨げているものを「引く」と考える

障がいがあるからといって、「足りない」存在な訳では決してない。
とはいえ、生きていく上での課題や、暮らしている中で抱える難しさが多くなりがちなことは確かです。

課題や難しさの理由を「子ども本人」に求めてしまうと、「足りない」思考に陥るしかない。

それに対して、課題や難しさを解決する力を実は本人は既に持っていて、何かがその力の発揮を妨げている、と考える方法もあります。

  • 集中力が「足りない」と見るのではなく、周囲の音や目に入るものが集中を「妨げている」と考える。

  • 社会性・関わる力が「足りない」と見るのではなく、認知特性が興味関心の広がりを「妨げている」と考える。

本人に足りないものを「足す」のではなく、力の発揮を妨げているものを周囲の環境から「引く」。引き算の子育てが有効な場面、障がいの有無に関わらず実はすごく多いと思います。

今はまだないもの、実現していないことを「目標」にして逆算で育てるのではなくて、「いま・ここ」にいるその子、目の前の環境をよく観察することから出発して、既に持っている力を発揮させるために「妨げているもの」を引き算する。

「妨げているもの」がなくなれば、自然と本人の力が発揮されて、自発的な成長のスイッチが入る。その時その場で発動した好奇心や主体性が強力に育ちを促していく。

成長とは逆算的な目標達成、という考えが唯一ではないと気づくこと、逆算以外の育ち方・育て方もある、と認識することが大切、という話でした。

ではでは。

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