REAPERでDDPマスターを作ろう
私が昔から愛用している音楽制作ソフト(DAW)のREAPERは、プレスCDを制作する時のマスターデータ形式であるDDPファイルセットの作成をサポートしています。
今日はREAPERを使ってDDPマスターを作る方法を紹介します。
用意するもの
REAPER
CDの各トラックのwavファイル(44100hz 2ch 16bit)
REAPERのインストール
公式サイトから、REAPERをダウンロードします。大抵の方は丸で囲ったどちらか(Windowsなら左、Macなら右)で良いと思います。
REAPERは有料のソフトですが、試用期間中でも全ての機能を制限なく利用することができます。気に入ったら買いましょう。
インストール完了したら、起動します。
トラックの読み込み
wavファイルをREAPERのウィンドウ上にドラッグアンドドロップして読み込みます。すると、トラックができます。
一つトラックを読み込んだら、次のトラックはこの音声の後ろに繋げる必要があるので、音声の終わり部分まで移動します。
そしたら次の曲をドラッグして、後ろに続けて読み込みます。
この時、波形同士に隙間があると、CDにしたときにもそのままトラックとトラックの間に無音ができてしまうので、マウスドラッグで波形の位置が繋がって置かれるように調整します。
以下、曲数分繰り返します。
CDの仕様
音声を全部読み込んだら、次はどの位置にトラックの区切りを置くか決めます。
…と、その前に、音楽CDの仕様について説明します。
最低でも1トラック必要です
INDEX0が最初のトラックに必要。これは0秒地点に置かれる。
最初のトラックのINDEX1は2秒以上後に置かれなければいけない。
2秒地点より前に置かれた音声は無視される
トラックの長さは最低でも4秒
トラックの長さとは、INDEX1と次のINDEX0もしくはINDEX1までの間の時間のこと
INDEX0が定義される場合、INDEX1は最低でも1フレーム(1 / 75秒)以上後になくてはならない
音声はフレーム(1 / 75秒)に揃うように無音で埋められる
いきなりINDEX0とかINDEX1とかフレームとか知らない単語がでてきて驚いたかもしれませんが…CDのトラックを選択する際、頭出しの目印になる地点がINDEX1です。
INDEX0はプリギャップといって、CDプレイヤーで聴いているとたまに出てくる -00:02 みたいな表示の正体です。この場合、INDEX1が置かれている地点より2秒前にINDEX0が置かれており、CDプレイヤーの再生位置がINDEX0の地点に達した時に -00:02 になります。再生位置がINDEX1の位置に達した時が 00:00 になります。
CDをPCやスマホに取り込むと、このプリギャップは前のトラックの末尾の無音区間と同じ扱いになるので、取り込んだ後の音声ファイルを聴いていてもINDEX0の存在を意識することはないでしょう。
INDEX0は1トラック目の先頭には必ず配置する必要がありますが、2トラック目以降は配置してもしなくても良いです(私は配置しないことがほとんどです)。
フレームというのはCDにおける長さの単位のようなもので、1フレーム=1 / 75秒 (0.01333….秒)と定められています。CDの各トラックの長さはフレームの整数倍にピッタリ収まる必要があります。つまり、1分0.01秒という長さのトラックを作ることはできません。1分0.013333….秒(4501フレーム)にする必要があります。
フレームに揃える長さ調整はREAPERが自動的に行なってくれます。なので、実際に行うべきことは以下のとおりです。
INDEX0を0:00地点に置く
INDEX1を0:02地点に置く
1トラック目を0:02地点から開始する
1トラック目の終わりに2トラック目を置く
2トラック目の先頭にINDEX1を置く
2トラック目の終わりに3トラック目を置く
3トラック目の先頭にINDEX1を置く
…以下繰り返し
REAPERでINDEX0 INDEX1の位置を設定する
REAPERはMarkerという機能を使ってINDEX0 INDEX1の位置を表現します。
! で始まるマーカーはINDEX0の位置を指します
# で始まるマーカーはINDEX1の位置を指します
Markerを設定するには、まず位置を決めてクリックしてカーソルを動かし、右クリックでInsert marker…を選択します。
この手順で、必要な位置にINDEX0 INDEX1を配置していきます。
なお、Markerは追加した順に番号が割り振られますが、この番号はCDのトラック番号とは関係ありません。Markerの番号がぐちゃぐちゃになってしまって気になる方は、View→Region/Marker Managerを選択し、出てきた画面で右クリック→Renumber in timeline orderを選択することで番号を振りなおすことができます。
DDPファイルを書き出す
Markerをつけ終わったらいよいよ書き出しです。
File→Render…を選択します。
Render to Fileのダイアログが出るので、以下のスクショを参考に設定をします。
Tail: のチェックが付いてたら外す
Outputに出力先ディレクトリ・ファイル名を設定する
デフォルトのまま空欄にしておくとデスクトップに出力されます
Sample rate: 44100 Channels: Stereo になっていることを確認します
私の環境ではデフォルトがこれでしたが、もし違ったら修正してください
Primary output formatをDDPに設定
全て設定できたらRender 1 fileを押します。
「Render 1 file」と書かれていますが、実際には5個ファイルができます。なので、出力先ディレクトリは空のものを指定しておくことをおすすめします(存在しないディレクトリを出力先として指定すれば、自動的に作ってくれます)。
正常に書き出せたか確認
DDPファイルが書き出せましたが、果たして思った通りに作れているでしょうか…?
DDPファイルは通常のメディアプレイヤーでは再生できないので、そのままでは確認できません。DDPファイルを書き出していきなりプレスCDを発注して、できあがったものを聴いてみたらトラック区切り位置を間違えていた……となると悲惨です。
SteinbergがDDPファイルを再生するためのプレイヤーを無償提供してくれているので、ありがたく使わせていただきましょう!
インストールしたら起動します。
Drop a DDP image or folder hereと書かれているので、先程出力したDDPの.DATファイルもしくはディレクトリごとドラッグしてみましょう。
もしトラックがうまく作れていないとか、変な空白があるとか、謎のエラーが出るとか、おかしなことがあったらもう一度REAPERに戻って修正をしましょう。
いざ、納品!
DDPファイルが再生できることが確認できたら、CDプレス業者にDDPファイルを送ります。送る方法は各業者により様々だと思いますが、おそらくDDPファイル一式をzip圧縮して送ることになるでしょう。
先程も書きましたが、DDPは5つのファイルで構成されています。CDの中身のデータそのものである.DATの他に、以下のファイルが一緒に作られています。これらのファイルも忘れずにzipに同梱するようにしましょう。
checksum.md5
DDPID
DDPMS
PQDESCR
REAPERはいいぞ
REAPERは個人利用目的ならライセンスを購入してもたったの$60です。CubaseやStudio OneなどのメジャーなDAWと比べても断然安いですし、
それでいてDDPファイルの書き出しのようなマニアックな機能も持っています。動作も軽いし、操作もしやすいし、個人的にはREAPERこそ最高のDAWだと思っています。現在も活発に開発が続けられており、今後の成長にも期待できます。
先日のDTMステーションのDAWアンケートでは4%くらいのユーザーがREAPER使いということがわかりました。みなさんももっとREAPERを使いましょう!
REAPERはいいぞ(REAPERおじさん)
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