どうして花が美しいのか
どんな美しい装いもいらない
綺麗な心も
整えられた座敷も
清廉な言葉も
そうして醜さもいらない
汚れきった路地裏の暮らし
ゴミ屋敷の悪臭
聞くに堪えない悪評も
石は服わぬまま砂になる
砂浜の白さに
渚は月を迎える
光の道が夜明けに満ちる
命という膨大な無駄を経て
わたしたちは何処へ行くのだろう
心も言葉も何処にもなかったはずなのに
どうして今こんなに苦しみが果てないのか
全くの無意味の中にあるとして
全くの無が世界の本質だとしても
どうして花が美しいのか
どうして人はそれを求めるのか
輝く喜びがそこにはある
真っすぐな木漏れ日のように
心が晴れる静かな尊さを
わたしたちよりずっと求める者へ
昇っていく一筋の煙の果てに
大いなる声なき声が聞こえる
全ては無に帰る
そうしてやっと美しいのだと