佳人の才
女は
失った半身の神話を
語る
冬の
渡り鳥たちの水面に
透く淡い茜
影の夜空に
巨大な大蛇(おろち)が
渡る
命から遠く
澄み切った
夜の闇が広がっていく
陽が
暗転してこそ
星は明らかになるように
皮膚は内臓である
我らは既に剥き出しだから
己を隠しているのだ
つまり
闇を常に剥き出しにした
無機質の感情が
半身である
命は機械的に生きることを
半分
心が柔らかく美しいことを
半分
境界にある
我らという形のない満月
あるいは新月の闇
美しい造形の顔形
整えられた形式美
佳人は才である
刹那が永遠に
遠吠えしている
この物語こそわたしにとって
唯一の美だ
...
佳人には秘密がある
深淵な何かを隠していて
ふと思いがけず露にしてしまう
そんな夜の星や月のような
宝石を屈託として持ち得ている
唯の俗物であっては残念だから
決してぺらぺら語って欲しくない
真実が容易に浸食出来るほどに
容易いならば
きっとがっかりしてしまうだろう