菅野角野藤岡幻想@ザ・シンフォニーホール


はじめに

ザ・シンフォニーホールで行われた、角野さんのための協奏曲ほかのコンサートの、備忘を兼ねた感想です、

プレトークなど


開演時間になり照明が落ちると、藤岡さんが一人、マイクを持って舞台袖から現れる。
藤岡:藤岡です。今日はお越しくださりありがとうございます。今日は菅野祐悟さん作曲の角野さんのための協奏曲世界初演ということで。菅野さんというのは人気の作曲家で、ほら大リーグの大谷選手がバッターボックスに入るときの曲を、奥さんが選んだその曲が、菅野さんが作った曲だったという。
では、菅野さんを呼びましょう、菅野さんでーす!(拍手)
菅野:どうも菅野です。
ふ:おお、拍手に明らかに差がある。僕が出てくる時より明らかに大きい。
か:差をつけてくださりありがとうございます。
ふ;どうですか、久しぶりのシンフォニーホールは。
か;いや、すばらしいですよね。響きも素晴らしいし、内装も美しくて。
ふ:いろいろここで初演したよね。チェリストの宮田大くんが、どうしても自分のために作ってくれと言うから作った曲とか。
今日は菅野さんが角野さんのための曲を作りたいと言って。どうですか。
か:そうですね。テクニカルなことはプログラムに書いたので、それ以外のことを。角野さんは素晴らしいピアニストで、しかもご自身でも素晴らしい曲を作られるでしょう?他の人が作った曲を演奏する必要がないくらい。それで、頑張って作りました。
ふ:2日前から角野さんも加わってリハやって打合せして、だいぶ面白くなってきたよね。この曲、菅野さん、もう交響詩でしょう。
か:そんなこと言わないでくださいよ。僕は交響曲のつもりで作ったんですよ。
ふ:トイピアノとかね。これはおもちゃなんでしょう?
(と、グランドピアノの横に設置された台の上に置かれたトイピアノを指さす)
か:僕、トイピアノ好きなんですよ。これを使った曲とか作っていて。
ふ:あと内部奏法。あ、言っちゃった。あんまり言うとネタバレになっちゃう。
そう、このね、スタインウェイっていうピアノ、だいたい内部奏法しちゃダメだって言うんですよ。厳しくて。でも今回はシンフォニーホールの方が、菅野さんと角野さんがやりたいということなら、少しだけならいいですよって言ってくれたんですよね。
か:そう。
ふ:この辺(と言って、高音部の弦の奥あたりを手で示す)を触りだしたら、カデンツァ、2楽章の終わりね。そう、この曲、2楽章と3楽章の区切りがはっきりしていなくて、緩やかにつながっていて。僕が指で、1とか2とかやりだして、内部奏法始めたら、2楽章の終わり、3楽章で。
ネタバレになるので、あとは聴いてのお楽しみということで。菅野さんと角野さんという、いま最も人気のある若手の演奏、楽しみにしてください。
か:藤岡さんもすごいじゃないですか。
ふ:いや僕は人生、棒振っているだけだから。
菅野さんありがとうございました。
(菅野さん舞台袖に消える)

ふ:もうね、菅野さんの人気は凄くて。菅野さんのファンはいい人ばかりで、帰らないから。他のファン、オケになると帰っちゃう人いるのよ。菅野さんも角野さんもファンがいいよね。
後半はベルリオーズ。この人ね、シェイクスピア女優に恋をしたの。で、どんどんエスカレートしてストーカーになっちゃったの。もう、この人のこと話すの、参っちゃうのよね下品すぎて。それでいわゆる出禁になったのね。女優の楽屋でいつも待っていたから、女優が怖がって近づけないでって言って。それでその恨み、ふられた悲しさを曲にした。それがこの曲。それでこの曲の初演にその女優を招待してるのよ。それでなんとその女優と結婚したの。凄いよね。あとで離婚したみたいだけど。
(1楽章から順に曲の説明)
1楽章は、恋人への思い。低音のドキッドキッという心臓の鼓動が出てくる。
2楽章は踊り狂って。
3楽章は、今はあまりこういう言い方しないけど、ギロチン。恋人を処刑してしまうの。
4楽章は、幽霊になって出てきて亡霊の踊り。
5楽章は、魔女まで出てきて乱痴気騒ぎ。
なぜベルリオーズにしたかというと、壮大さや曲の感じが似ていると思ったから。
僕の説明はこれくらいにして、お楽しみください。

と言って藤岡さん、舞台袖に戻る。
菅野さんが左前方の扉から客席に入ってきて、左ブロックの左端に座る。
演奏が終わり、藤岡さんと角野さんがお辞儀をし、藤岡さんが菅野さんをステージに手招きし、3人でお辞儀。
後半も菅野さんは開演直前に入ってきて、前半と同じ席で聴いていた。演奏が終わるとすぐに立ち上がり、お客の拍手の中、扉の向こうへ消えた。


感想など

角野さんのための協奏曲は、この地球上の森羅万象と、果てしない宇宙の神秘に満ちた天文現象を、走馬灯というか万華鏡のように次々と繰り広げていくような、ダイナミックでドラマティックな曲でした。万華鏡のように千変万化する音色やフレーズはどれも素晴らしく、聞き惚れてしまいました

1楽章の始まりは、波の音、風のそよぎや葉擦れの音が聞こえてくるようで、自然界のあらゆる音を様々な楽器で再現するような、壮大な曲でした。菅野さんは最初のトークで「協奏曲のつもりで作った」と話していましたが、そのドラマティックな展開、雄大な自然が眼前に広がっていくようなダイナミックさは、藤岡さんのトークの通り、交響詩と呼ぶにふさわしいような気がしました。

内部奏法の音も美しかった。今まで聞いた内部奏法の中で一番美しかったと思う。弦を押さえて弾くのはファジル・サイ風でした。他に、しゃらーん、と弦を手で払うような弾き方もしていた。これを思い出した↓

2楽章はトイピアノも弾いていて、曲の感じとしてはこに近かった。↓
しかし全体を通して、ピアノとトイピアノを同時に弾くことはなかった。

曲全体のイメージとしては、Michael Jackson - Heal The World 世界を癒そうの角野さんバージョン(内部奏法含む)と、チムチムチェリ―(トイピアノ含む)とチャイコフスキーのピアノ協奏曲1番が混ざったようなダイナミックさでした。
コンマスさん、角野さんが弾いているとき、頭を揺らしながら体でリズムをとってノリノリで聴いていました。

おわりに

こういうとてつもない曲でないと、角野さんのスキルや才能に釣り合わないということで。これが角野さんのための曲ということは、角野さんがこの宇宙そのものを体現する存在、ということでもあるということになるわけで。とにかく凄い曲と演奏でした。

欲を言うと、もっと角野さんが一人で自由に即興する場面があってもよかったのではないかと思いました。ここから1分間自由に即興タイムとか。
全国で演奏するとなると、内部奏法がネックかもしれません。ホロヴィッツのように、スタインウェイピアノを連れて回りますか?(財政的につらいかもしれない)


余禄

終演後ロビーに向かっていると、お客さんが「いるいる、ファンサしているよ」とロビーのほうを見ています。視線の先には菅野さん。一緒に写真を撮ったりサインしたりとファンに囲まれていました。
自分はまあいいかと思って帰りかけたのですが、途中で知人に会い、菅野さんがサインしてくれていますよと話すと、「欲しい!」と言うので一緒にサインの列に並びました。「とても格好良かったです」と直接ご本人に伝えることができ、「それは嬉しいです」だったか何か言葉をいただきましたが、忘れてしまい正確には覚えていません。また全国ツアーなどで聴く機会があれば嬉しいしありがたいと思っています。角野さんもサイン会しないのかな。角野さんにも直接、コンサートの感想がr伝えられる日が来たらいいなと思います。

いいなと思ったら応援しよう!