新ジャンル ミジメ小説
ここは、主に三十代くらいの人がやっている、おしゃれな、カルチャー寄りのバー。
毎月、一日店長を迎えたカルチャー企画をやっている。
今日は「こじゃれ音楽について」というテーマだった。
センスのいいこぎれいな若者たちがバーに集まり始める。
そこに、一人の薄汚い初老の男がいた。
「グヒェヒェ……私のような年寄りでも参加していいんですかいのう???」
初老の男は頭は全白髪、上は作業着、下は作業ズボン。作業着の中のTシャツは、知らん萌えキャラがデカデカと描かれている。
右手には古本の「現代用語の基礎知識」、左手には80年代のトレンディ雑誌を持っている。
顔は浅ましそうで、常に周囲をうかがうようなおどおどした目をしていた。
(こんなヤツを迎え入れては、ボクのカルチャー空間がメチャクチャにされてしまう。ここは心を鬼にして断らなければ……)
カルチャー主催者の青年は、心を鬼にするつもりが頭から二本の角がはえ、本当の鬼になってしまった。
「うぎゃああああああああああああ」
鬼は天に向かって咆哮した。
鬼と初老男性との、とっくみあいのケンカが始まった。
「現代用語の基礎知識」で殴りつける男、それを頭の角で受ける鬼。
「もうやめなさい、そんなミジメな戦いはッ!!」
セイラさんが割り込んできてそう言った。
セイラさん、今、流行りだから出してみました。
どうです? ニヤリとするでしょう?
「マニアがニヤリとする」ってヤツね。
ちなみにこの場合の「セイラ」は、「セーラー万年筆」の擬人化です。
おしまい