小説 5年C組 ムシャムシャ先生 未来編
おーれーは ジャイアーン
では ないよー
ジャイアン・にせものだーーーーーーー
歯切れの悪い替え歌が、どこからともなく流れてくる。
大都会の人々は、それぞれの目的地に着くために歩いていた。
「どけどけ! どけどけ! 花魁様のお通りだ!!」
そう言いながら、しゃなりしゃなりと花魁が歩いてくる。
底意地の悪そうな子供のアシスタントを二人、従えて。
花魁2024である。
花魁に会うまでには、近所の商工会議所に通い詰め、
三回目にして、花魁側が「会ってもいい」と思ったら、初めて会えるという。
花魁2024は、ファンサービスとして「顔見世」のために行われる。
ふだんはその顔もおがめない高嶺の花の花魁が、自ら出向いて、新宿あたりの雑踏を、高下駄履いて練り歩く。
人々はそれを、指をくわえて観ているだけだ。
悲しい、涙が出てくる。
「たかが花魁じゃないか、そんなものに目をくれるな!!」
そこで颯爽と登場するムシャムシャ先生。
アタマに巨大な、テキトーにつくった日本髪のカツラをかぶり、
オカンのスカートを首に巻いている。
1メートルくらいの高下駄を履いて、器用にバランスを取っていた。
しかし、みんな無視した。
酷暑の生ぬるい風が、ムシャムシャ先生の頬を撫でた。
(完)