おたく文化・サブカルチャーは意外と継承されない

当たり前だが今、生き残っている古いコンテンツは、長い年月をかけて、淘汰の果てに生き残っているものである。
ということは、現状、「鉄板」と思われているコンテンツも、今後どこかの段階で消えて行ってしまうかもしれない。
五十代半ばを過ぎて、最近とくにそう感じるのであった。

というか、私がそれまで「大ヒットした作品は永遠に残る」と勘違いしていたのだろうと思う。
前回「中高年はZ世代に嫌われているだろうし、それで当然だろう」と書いた。

そのときは書かなかったが、おたくやサブカル好きが、
「自分たちが好きなものは、当たり前に若い世代に継承されている」
と思い込んで若い世代に話しかける、しかし若者はわからない、その世代間ギャップがかなりイタイな、と感じることが多々、あるのだ。

たとえば、「昭和レトロブーム」に関して「若い人が、おれたちが接して来た文化にアクセスしてくれている」と思って喜んでいる人がいるかもしれない。
しかし「昭和レトロ」とは、「自分たちが経験していない古い時代が面白い」ということであり、その受け取り方はリアルタイムとは違うものだろう。

当たり前と思っていたコンテンツが、いつの間にか消えていく、いまいち若い世代に継承されない、という事態を最近、感じるようになった。

たとえば忍者マンガの代表格だった「白土三平」作品は現在、マンガ好き、忍者好きの若者にも継承されていないだろう。
「忍者」を考える際、山田風太郎と白土三平はおさえておかなければいけない古典的作品なのだが。
(山田風太郎原作のマンガとアニメ「バジリスク」は若い人も読んでいるかもしれないけどね。)
というか、マンガはとりわけ後世に継承されづらいコンテンツだ。

「過去の作品が見たい」と思って、レンタルビデオ店やサブスクにあってアクセスしやすい映像作品と異なり、マンガは過去のアーカイブに接するのがむずかしい。
電子書籍もあるのかもしれないが、「マンガファン文化」にはそもそも、「自分が生まれる前に描かれた作品」を鑑賞しないとマニアと思われない、みたいなことが存在しないのだ。

元来、おたく文化、サブカルチャーは先行世代の文化よりも、新興のものの方が面白く、当時の若者の心境を代弁している、という思い入れが受け手にはある。
そのことにより、無意識に「おれたちが担った文化は、後続世代が継承してくれるだろう」と思ってしまいがちだ。
だが、若い世代は若い世代の「自分たちのためのコンテンツ」を模索し、受け入れ、熱狂する。仮に「昭和レトロ」として何か昔のものが若者に再評価されることはあっても、それは「一周回っている」ので、そのまま受け入れられるのとは少し違う。

なんでこんなことを書くかというと、すでに現在二十代後半の人は、「3年B組金八先生」をドラマとして観たことがないらしい、と知ったからだ。
調べてみると「金八先生」シリーズ最後の放送は2011年。
現在、27歳の人が1997年生まれとして、2011年にはだいたい中学生くらいだ。
まあ確かに観ているか観ていないかで言えば、ギリギリのラインだ。
これがさらに五年若い22歳くらいだと9歳か10歳だから、さらに観ている確率は減るだろう。
女優で言うと浜辺美波は現在、22歳だということで「金八先生」をドラマとしては観てない確率は高い。
テレビバラエティなどで彼女が金八先生のものまね芸人とからんだりするのが心配である(まあ知ってるふりしてやりすごすでしょうけど)。

なお、浜辺美波が出演していた映画「シン・仮面ライダー」で、彼女が演じていた緑川ルリ子が「着たきりスズメ」というセリフを言って「設定年齢的に、そんな言葉使うわけないだろ」とネットなどでちょっと話題になったが、私の知り合いの三十代の男性は「着たきりスズメという言葉を、この映画で初めて知った」と言っていた。
そういう「古い」描写は考え直した方がいいと思うが……。庵野監督には深謀遠慮があってそういうセリフを採用しているんですかね。

さっき見たアイドル番組では、芸人が「野島伸司のドラマか!」みたいなつっこみをして十代の女性アイドルたちが愛想笑いをしていた。
十代の子たちは野島伸司を知らないんじゃないか?
別の番組では、アイドルの矢吹奈子(22歳)に芸人が「川口浩探検隊」というワードを「たとえ」として使っていたが、矢吹奈子は「川口浩探検隊」を、「探検隊のアイコン」としても、知っているかどうかはあやしい。

話はそれるが、アイドル番組はMCの芸人たちが三十代後半から四十代前半、アイドルたちは十代ということが多く、芸人たちのたとえやツッコミがことあるごとに十代アイドルに刺さらない、ピンと来ない、という現象が頻出するようになっている。

大変悲しい。

でもがんばろうな、がんばって100円くらいの、砂糖がうっすらかかったでっかいパンを食おうな……(急に終わる)。

おしまい





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