小説 平成最後のももたろう2.000000000
むかしむかし、あるところに、
おじいさんと工藤静香が住んでいた。
六畳が二間ある、真っ黄色な家だ。
二人は夫婦でもなんでもない。シェアハウスをしているだけだ。
工藤静香は、あずき相場に手を出して失敗。
新曲「うるわしの英会話教材」は、リリース直前にタイアップ予定だった英会話教材会社が倒産し、まったく売れなかった。
なぜかとっくにブームの去ったチョコエッグを集めるためにした多額の借金も返すことができず、しかたなく、彼女は現在の家に、おじいさんとシェアして住んでいる。
一方、おじいさんの方だが、その素性は、工藤静香もよく知らない。一時期、「食堂のカレーライスの皿をペロペロなめる係」になっていたというが、何十年も前の話であり、そのことはさして役立つ情報ではない。
ただ長い間、流浪の旅に出ていたことだけは、工藤静香も知っていた。
おじいさんは、流れ流れて、最終的にこの真っ黄色な家に住むことになったのだ。
二人が知り合ったのは、ネットのシェアハウスの同居人募集の掲示板。
おじいさんは工藤静香が有名人なので、信用できると思い、
工藤静香は、当然おじいさんのことなんか知らなかったのだが、メチルアルコールを飲んだいきおいで決めてしまった。
さて、今日もおじいさんは山へ柴刈りに。
工藤静香は、河に洗濯に行った。
大きな河だ。ポンポコ河という。
向こう岸は、見えない。
ときおり、巨大な商船が通り過ぎてゆく。隣国へ攻め込む軍艦が通ったこともある。
二人は、河の上流から、大きな桃が流れて来るのを五十年間待ったが、結局、何も流れてこなかったのであった。
おしまい
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