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カエルのヘソだけ考えろ

ウーパールーパー……。
ウーーパーールーーパーーーーーーーーー……。

遠くでだれかが叫んでいる。
ずっと繰り返し、叫び続けている。

うるさくてしょうがない。

うるさすぎて泣いてしまった。

するとそこに、顔を白塗りにした青鬼が現れて、
「お兄さん、顔は白塗りにしてもいいけど、ケツだけは白塗りにするんじゃないよ」
と忠告しに来た。
それだけ言って顔を白塗りにした青鬼が後ろを向くと、
ケツも白く塗っていた。

もう夕方だ。
みんな家路につくころだ。
あちこちの家から、夕餉のにおいがしてくる。
クリームシチューや焼き魚のにおいが漂ってくる。

街はどんどん暗くなり、人通りも少なくなり、

やがて夜の街には自分しかいなくなった。
いつの間にか「ウーパールーパー」と叫ぶ声も消えていた。

かなり遠くで、車の通りすぎる音がしている。
大通りまで出れば、だれかいるかもしれないと思ったが、
大通りに出るには、河川工事のために近くの橋を渡れないので、
大回りしないといけない。

そのことを考えたら、悲しくてまた涙が出てきてしまった。

三分後には、前の会社で酔っぱらっては自分にからんできた先輩を思い出し、
自分はバイクを走らせていた。
ちょっとした遠回りで大通りに出るのはイヤでも、
憎い先輩の家に行く行動力は持ち合わせていた。

先輩の家に行くとまだ家に帰っていなかった。
先輩の奥さんが寝っ転がって、一心不乱に塗り絵をしていた。

その塗り絵はウーパールーパーの塗り絵だった。

(世界はウーパールーパーに支配されているんだ)

悟った私は、その場で自決。
我ながら立派な最後だったと思う。

ウーパールーパーの自由にはさせない。
そう誓った私は、死ぬ前に辞世の句を詠んだ。

「ドンキホーテがあったところで、世の苦しみはなくならず」

この句は、「日本放送演芸対象」を受賞した。

私の銅像は、渋谷の109の真ん前に、入店を邪魔するくらいの大きいのが
立っているので、渋谷に立ち寄ったらぜひ見てほしい。

おしまい

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