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感涙小説 虚郎(むなろう)
私は、虚郎(むなろう)。
「むなしい」「太郎の郎」と書いて、
虚郎です。
前髪を垂らして、自分の瞳が見えないようにし、
流行遅れのコートを、夏場でも着ています。
そして、マンガ単行本のたくさん置いてある、
古びた喫茶店に、ヒマなときは一日います。
そこのマスターは、
若い頃、さんざん学生運動をやって警官隊ともみ合ったと自慢する日もあれば、やくざの舎弟になったことがある、と自慢することもあります。
ま、どっちにしろウソでしょうけどね。
ある日、この喫茶店に女が一人、入ってきました。
長い髪に顔は隠れ、やはり流行遅れのコートを着ていました。
手には包丁を握っていました。
包丁からは、血が流れていました。
「今、夫を殺してきたの……」
女はそうつぶやき、その髪がパッと開き、顔が全開になりました。
私は思った。
なんだその「どや顔」は!!
ふざけんじゃねえなんだそのどや顔はその顔はなんだそのどや顔はなんだその顔はふざけんじゃねえなんだそのどや顔はその顔はなんだそのどや顔はなんだその顔はふざけんじゃねえなんだそのどや顔はその顔はなんだそのどや顔はなんだその顔は
私は怒鳴りつけようと思ったが、もちろんそんなことはしません。
彼女の顔に、速攻でピエロのメイクをしてあげました。
そして喫茶店のマスターに向かって、指をパチリ。
どこからか、「おどるポンポコリン」が流れてきました。
私は立ちあがって、踊りました。
なぜか奥の方から、観たこともない子供たちがわらわらと出てきて、
一緒に踊り出しました。
いつの間にか、マスターも、女も、女に殺されたらしき夫も、腹に刺さった包丁をぶらぶらさせながら踊っていました。
(夫に刺した包丁は、彼女が持っていたはずだが……。)
殺されたらしき夫の包丁が、踊っている勢いではずれ、飛んで行きました。
空高く、空高く……。
子供「ママー、飛行機!」
ママ「違うわ、あれはUFOよ」
両手に指輪をたくさん付けたラッパー
「どっちも間違いだ、YO!!」
(おしまい)
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