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ワイルドなライフ

夏が暑かった。車のドアを開けた娘が「正気か?」って言うほど暑かったです。

急激に秋が来た。(なんで冷房点いてんだよ!!)ってキレぎみに起きたけど別に天然の涼しさだった。っていう朝が二回続いて、なんかもう秋だった。と思います。

九月になってからの時間の流れが早すぎる。
秋の日は釣瓶落としっていうのは秋になると日が暮れるのがストーーンと勢いよく来ちゃうよね、ぐらいの意味で昔の人が言ったんだろうけど、
わたしは、そろそろ秋かな?と思ってからの日々の過ぎ去り方が早すぎて気持ちが全然追いつかないので、なんかもう、一ヵ月単位での釣瓶落としを食らっています。

去年の終わりに書店の仕事を辞めてのちは全然働いてないけど、七月の終わりぐらいから隣町の美術展の受付パートに入ってます。
思えば十数年も前、娘を保育園に預けて最初に雇ってもらったのが美術館の受付で、それから職をあれこれ転々とした末に現在またチケットをもぎったり他のパートさんとお菓子を交換してキャッキャしたりっていう、仕事と言えるのかどうかわからん場所に戻ってきた感。
毎日とてもゆるやかで楽しいです。

ここだけの話、自分を含めて4人の展示受付パートタイマーがいるんですが面接には14人がエントリーしたらしいわ。謎の高倍率。謎か?
家庭の用事とかいろいろあるけどゆるやかなパートだったら何とかいける、っていう層はけっこういるんだろうなーと思ったです。 

わたしは美術館でいちおう働いたことあったし学芸員資格課程もいちおう修了してたので、経歴と資格で殴る形で高倍率をすり抜けた…のか?本当にそうか??
まあ、採ってくださる側の理由を考えてもしょうがないですね。ありがとうございます。

パート先の美術展示会場は謎に広大な公園に囲まれている。
勤務時間を終えて退出して、駐車場に停めたマイカーに向かう。
何故か!本当ーに何故なのかわからないんですが!!
その、短い時間に、めちゃくちゃ蚊に刺されてるんですよ!!!

最初は小杉天外のせいかなと思いました。
小杉天外という秋田出身の小説家がいたそうですけど詳しい人いますか? 明治時代にはすごい人気作家だったみたい。『初すがた』と『魔風恋風』は岩波文庫で読めます、わたしは読んでないけど。
その天外さんの石碑があるんですよ、職場を出たところに。
仕事終わって、帰り際、わあーここに石碑があるのかーーって、ちょっと見た。
その夜から両の足首にひどい腫れとかゆみ。普通の虫刺されより強力なやつで、三日ぐらい悩まされました。

引きこもっている間には想像もしなかったダメージで、
うわーー!かゆい!! かゆ!うま!
などと喚いて過ごしましたよ、自宅では。

虫刺されがかゆかっただけではたぶん記事にしなかった。
同じ時期に、ほかにも自然の猛威をなんかあれする出来事が、わたしの身に起こったのです。ここから本題なの。

・鳥が死んでる事件

娘、ある日、
「車庫が変なにおいしない?」
と言い出す。

ええー?わかんね。つって二日後ぐらい。
娘とドライブに出て帰りにツルハ寄って、そろそろ帰るかー、って駐車場の自分の車に近づいたら、
マイカーの、グリルっていうんですか? 正面の網になってる箇所に、細長い雑草が刺さってた。
見てこれ!車に草が刺さってる!マジで草
って言いながら引き抜こうとしたら。

グリル?部分のもっと下に、何が鳥っぽいものがはさまってるのを見つけてしまいました。

よ、よし!草なんかウケるから刺しとくかー!とりあえず帰ろ!!
って、娘には何も悟られないようにして草も鳥もそのままで自宅まで爆走し
家で娘に飲み物など用意してから
ちょっと、なんか、あれだ…車の掃除してくるわ…
つって、車庫に駆け下りてよく見たら、
なんか挟まっちゃダメな所に挟まって死んでるんですよ…スズメが…
本当ごめん!気づかなくてごめんなさい!!と心に唱えながらほうきの柄で死骸を押し出して新聞紙に包みました。
スズメはカッサカサで、平べったかった。

ちなみにその時点で草は抜けてた。

娘が言う変なにおいがしてた原因がその死骸だとしたら、
わたしはいったい何日のあいだ、車にスズメを挟んで運転し続けてたのか。
ツルハの駐車場でグリルから草が飛び出てなかったらその後も気がつかずに死骸を挟んでたかもしれません。

ていうかどうしたら鳥が車に挟まって死ぬんだろうか。とは思います。

・ハチの巣事件

ある日、普通に玄関から家を出たら、
足元にスズメバチが死んでた。

よく見るとスズメバチの死んでるのは三体。
その後も玄関前のタイルを這っている似たやつを見かけた。

夕暮れ、まだ明るいうちに、自宅の外壁を端からよく見ていくと
…娘がよく使う部屋の窓の外枠にハチの巣っぽいかたまりが出来ているではありませんか。

業者!業者!!駆除業者ァァーー!!
とにかく危険だから!業者呼ばなきゃダメ!自力でやろうとしちゃダメ!あぶないよ!
早めに対処しよ!自分たちが刺されるのも怖いけど!近所に保育園あるし!!やばいて!!!

という、家族にたいする必死のプレゼンを経て、
次の日に仕事から帰ったらハチの巣は棒ではたき落とされて側溝に捨てられていました。

家族の誰もわたしの話をまともに聞いてくれてねえ…
とは思ったけど、
結果オーライでしょうね、これは。


現代の日本に住んでて
こういう、虫だとか鳥の死骸だとかに脅かされずに済む環境は結局あり得ないんだろうか…
大都会のタワーマンションとかなのか?それはそれで別の怖いことがありそう、大地震とか?

『風が強く吹いている』って小説で、
主人公が冒頭、自分のことを(動物みたいだな)と思う場面を思い出します。
彼は自分のことを走るのが速いだけが取り柄だと思っていて、でも陸上競技の部活動に馴染めなかったので、なんかひたすら街中を走り抜けてた。食べたいものがあれば走りながらかっぱらって、まあそうやって生きるしかないのかな…って思ってた、走りながら。

そこへのちに監督役になる青年がめちゃくちゃに自転車を漕いで追いついてきて、
「走るのは好きか?」
とか言って、主人公をなんかこうまっとうな生き方に引き戻していく。
っていうお話だったと思います。たしか。

わたしも何となく走りながら何となく誰かの作った制度や伝統的な雰囲気や、誰かの作った作品や展示の分け前をちょいちょいといただいて生きています。
(動物みたいだな)と、ときどき思います。

まあまあ楽しいけど、
この後どうなるのかは全然わからないです。ではまた。

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