死者からの電話・粗探し編

夜半、腹痛を訴えて苦しむ私を、両親は車に乗せて病院へ連れていったそうな。
一歳ぐらいの頃のことで、全然覚えてはいない。
車から見たら外が真っ暗で、雨が降って濡れた地面に街灯か何かの光が反射していた、みたいな風景を思い出せるけど、たぶんもっと後の出来事を間違えて覚えているのだと思う。
だから、以下は後になって両親から聞いた話。

私が一歳なら弟はまだ生まれていない。両親と私が、母方の祖父母の家にいるときだった。
車でいくつかの病院、医院を回ったものの、診てもらえない。
諦めかけたとき、ある医院がコウコウと灯りをつけているのを見つけた。

「◯◯(町内名)の方から電話があったので、開けて待っていました」
と医院の人が言ったという。
「ひ孫が苦しんでいるから、という電話でした」
と。
私は診察を受けて助かり、その後40年以上長生きした(2019年調べ)。

帰るまでの間、両親は医院に出入りする人に注意していたが、他に患者はなく、わざわざ電話をかけた者が誰だったのかはついにわからなかったという。

◯◯(町内名)とは、曽祖母が死ぬ少し前に一人で暮らしていた所だそうだ。
死んだのがいつ頃かは調べてみないとわからないけど、この腹痛事件のときに故人だったことは間違いない。

両親は、死んだ曽祖母が医院に電話をかけてくれたのだろうと考え、成長した私にもそのように話した。

と、いうのが、私の唯一のガチ不思議体験である。
大しておそろしさはないけど、友達のいとことかじゃなく自身が経験した話というところが少し上等かなと思っている。

しかしこうして書いてみると、「?」ってなる部分が多い話ではある。

・夜中なので診てくれる病院がなく、いくつか回った件
→救急外来は存在しなかったのか?
→というか救急車は呼ばなかったのか?
→すごい田舎だけど「いくつか回る」ほど病院あるか?

・医院に電話がかかってきていた件
→上の項の続きになるけど、じゃあ両親も医院に電話かけることができたのでは…何でかけなかったん…
→もしかして祖父母のどちらかがかけたのでは。ひ孫が〜 は孫の聞き間違い。
→すると◯◯(町内名)は何なのかって話になるけど、両親が話を盛っている…?

・何故、私は腹痛になったのか?
→後年の母「晩ごはんに甘海老の刺身を食べたからでは」
→一歳児に! 甘海老の刺身を! 食べさすな!!

というわけで、真面目に考えると粗が多いというか、ナマモノを幼児に与える際には気をつけましょうって話になりそうで、そこは不思議体験でも何でもないな…。

しかしこの話を小学生ぐらいの純粋な頃に聞いたせいなのか何なのか、死んだ血族のなかでも取り分け曽祖母が自分を見守ってくれているという謎の思い込みがわたしには少しある。

母によると、美人だったが性格がきつくて皆から敬遠されていたそうだ。孤独の気配しかしないまとめ方である。
そんな人が心配して医院に電話入れてくれてたなら、なおさら有り難い。

ひいおばあちゃんありがとう。と一応は思っている。
婚家の仏壇に手を合わせるとき、相乗りで実家方面のご先祖様のことも少し思い出してますよ。雑でごめんね。

#不思議体験 #甘海老 #お盆

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