フィネレノン は次世代薬剤になりえるのか?
2022 年 フィネレノン が日本で承認されました。 この薬は高血圧や浮腫に使用する既存薬 スピロノラクトン と同じミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(以下、MR 拮抗薬 別名:Mineralocorticoid Receptor Antagonists :MRA )なのに、何故か 「 2 型糖尿病を合併する慢性腎臓病」を適応として承認されました。 一体なぜなのでしょうか?
MR 拮抗薬は、アルドステロンの作用に拮抗することで、降圧作用を示します。特に低レニン性高血圧に対して効果が期待できるとされています。
スピロノラクトン
代表的な MR 拮抗薬にはスピロノラクトンがあります。スピロノラクトンは、1957 年アルドステロン拮抗物質についての系統的探索研究の結果、開発された薬です。
カリウム排泄を抑制する特性を持った利尿作用から、カリウム保持性利尿薬と呼ばれます。スピロノラクトンは MR 選択性が弱く、プロラクチン受容体(以下、PR )やアンドロゲン受容体(以下、AR ) に作用して性ホルモン系副作用(女性化乳房、男性化作用)を引き起こします。
エプレレノン
この現象を軽減することに繋がったのが、エプレレノンです。
エプレレノンは 1990 年代終わりころから 2000 年代初期にかけて開発された MR 選択性を高めたステロイド骨格をもつカリウム保持性利尿薬です。MR 選択性を高めたということは、性ホルモン系副作用は抑えられたのでしょうか? (1)
スピロノラクトンとエプレレノンの代表的な臨床試験結果を見てみましょう。RALES 試験(2)では、スピロノラクトンの女性化乳房発生率は、プラセボと比較して約7倍、EPHESUS 試験(3)では、エプレレノンがプラセボと比較して約0.9倍とされています。
これは個々の試験結果ですから、スピロノラクトンとエプレレノンの 2 剤を単純に比較するのは注意が必要です。そこで 2 剤を直接比較した試験(4)を見てみましょう。
結果は男性の女性化乳房発生率が 21.2% vs 4.5% P=0.033
有意にエプレレノンでの発生率が低い可能性があることが示されました。
因みに、2剤間の降圧力には差がありませんでした。(差:-6.9mmHg (-10.6 to -3.3) )
つまり、副作用発生率を抑え、主作用は同程度の薬であるだろうと今回の文献結果から判断が出来そうです。
スピロノラクトン、エプレレノンの大きな特徴は「ステロイド骨格」を持つ MR 拮抗薬で、高カリウム血症リスク増加や性ホルモン作用が生じてしまいます。この課題を少しでも改善しようと開発された薬が エキサセレノン と フィネレノン です。
参考:
1.Kidney Int. 2000 Apr;57(4):1408-11.PMID: 10760075.
2.N Engl J Med. 1999 Sep 2;341(10):709-17. PMID: 10471456
3.N Engl J Med. 2003 May 29;348(22):2271. PMID: 12668699
4.J Hypertens. 2011 May;29(5):980-90.PMDI:21451421
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