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週刊レキデンス~第21回~ スタチンの使い分けヒント

スタチンは 1 次予防効果2 次予防効果がある事が分かりました。
そしてスタチンによる LDL-C のコントロールは低いほど良い
「the lower, the better 」が現時点では推奨されていることも分かってきました。

スタチン1次

スタチン2次

これらの効果が示されている事は、特に 1 次予防効果に関して LDL-コレステロールが高いけれども、現時点で痛みを抱えたり苦しんでいない人がどうしてこの薬を「飲み続ける必要があるのか?」患者さんと一緒に考えていく人生のヒントになるのではないかな? と私は考えます。

もちろん、医師薬剤師患者のみんなで話し合った結果、「飲まない」という選択肢も尊重されるべきです。

さて、日本で承認されている  6 種類あるスタチン 一体どうやって使い分けていけばいいのでしょうか? 

服用タイミング

スタチンは、作用時間で「スタンダード」「ストロング」に分けて考える事が出来ます。
プラバスタチンとシンバスタチン、フルバスタチンの半減期は約 2 時間前後で、アトルバスタチン、ピタバスタチン 、ロスバスタチン の半減期は 10-20 時間前後になります。前者を「スタンダード」、後者を「ストロング」と呼びます。
スタンダードの場合は、服用タイミングは主に時間薬理学で考えられている「コレステロール合成時期」に合わせた 夕食後に設定されています。
ストロングの場合は、半減期が長めのため 1 日の内のどこかで服用が出来れば良いと設定されており、特別タイミング指定はありません。(1)

時間薬理学( chrono pharmacology )とは
個体間変動(遺伝子)だけでなく、個体内変動に着目した投薬時刻や投薬のタイミングにより薬の効き方が異なる事が分かってきました。
生体リズムを考慮した時間制御型(DDS)や服薬時刻により処方内容を変更した製剤が開発されています。
日薬理誌 137,115-119(2011)

水溶性と脂溶性

スタチンには、LDL-C 値低下作用だけでなく、多面的効果があることが示唆されつつあります。①血管内皮機能改善、②抗酸化・抗炎症作用、③マクロファージ泡沫化抑制作用、④平滑筋細胞遊走・増殖抑制作用などが基礎研究で報告されています。
この多面的効果は、実は脂溶性だけでなく肝特異的と考えられている水溶性のスタチンでも観察されているのですが、脂溶性・水溶性の区別、また多面的効果の有無や強弱によって、疾患ごとに各スタチンのどれを選択するのがベストなのかについて公的基準などは現在のところありませんので、これからの研究に期待される分野のようです。(2)

スタチンの効果換算

通常は安易な換算表を作成するのは直接的な比較試験が行われていない場合が多く避けるべきですが、ストロングスタチンの場合は比較試験がありますので利用したいと思います。(3)

アトルバスタチン 10㎎/日、ロスバスタチン 2.5㎎/日、ピタバスタチン 2㎎/日
この3つに関しては、LDLコレステロール低下効果と副作用の割合に差はありませんでした。 ほぼ同等と換算して考える1つの手段として覚えておくとよさそうです。

スタチン換算

糖尿病発症リスク

スタチンを服用していた患者に対する糖尿病の発症リスクが懸念されています。2010年に発表されたメタ分析では、糖尿病発症リスクが 9 % 増加したと解析されました。(4)

しかし、スタチンを服用しない事で生じる「冠動脈イベント発生リスク」や「死亡リスク」などを加味すると、スタチンを服用した糖尿病発症リスクは比較的低めであると判断することも出来ます。
それでも糖尿病のリスクが高い(現時点で糖尿病ではないが、糖尿病予備軍など)がスタチンで LDL コレステロールを下げる治療をしたい場合は、プラバスタチンを選択するのも1つの手かもしれません。
プラバスタチンは他のスタチンと比較して発症リスクが低いと考えられています。 プラバスタチンと比較して、アトルバスタチン:HR:1.22 、ロスバスタチン:HR:1.18、シンバスタチン:HR:1.10 でした。(5)

スタチン比較

参考:

1.各種添付文書
2.日大医誌 73 (2): 81–84 (2014)
3.the PATROL trial. Circ J. 2011;75(6):1493-505. PMID: 21498906
4.Lancet. 2010 Feb 27;375(9716):735-42.PMID: 20167359
5.BMJ. 2013 May 23;346:f2610. PMID:23704171


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