「勝手に DI 室」妊婦に NSAIDs どう考えるか
一時期、ワクチン接種やCOVID19の第 7 波によって、カロナールが欠品、品薄状態になっていました。
その代替薬の候補として NSAIDs 製剤をご提案する場面があったのではないでしょうか? その時、妊婦への変更について SNS などで一部話題になっていましたよね。
実は妊婦への NSAIDs への使用については、2021年 2月 25 日に、厚労省及び PMDA から、シクロオキシゲナーゼ阻害作用を有する NSAIDs 使用上の注意改訂について改訂通知が出ていました。 https://www.pmda.go.jp/files/000239396.pdf
どの様な内容?
シクロオキシゲナーゼ阻害剤(経口剤、坐剤)の妊婦への使用により、胎児の腎機能低下及び尿量減少、それに伴う羊水過少症が認められている旨、使用する際には必要最小限の使用とし適宜羊水量を確認する
が追記されました。
どうして改訂に至ったのでしょうか?
妊婦への投与例にて、胎児の腎機能障害及び尿量低下、それに伴う羊水過少症に関するリスク が報告されたからです。
また、米国 FDA にて、妊娠 20-30 週の妊婦に対する NSAIDs の処方を制限した影響で、日本における制限も検討する形になりました。
① ヒト胎児の腎臓においてシクロオキシゲナーゼ 2 発現が報告.(1)
② 早期分娩のリスクが高い妊婦を対象とした前向き観察研究において、シクロオキシゲナーゼ 2 選択的阻害剤で用量依存的な AFI*の減少が認められている.(2)
*AFI:Amniotic fluid index 羊水指数 (妊娠中の子宮の超音波検査で見られる羊水の量に与えられるスコア)
日本ではどのように制限をするか?
FDAでは、妊娠 20-30 週の妊婦を注意喚起の対象にしているが、日本では以下の点から妊娠時期の目安は設けず注意喚起することとなりました。
① 妊娠時期は一定の範囲に留まっているものの、早産の予防を目的として短期間投与した報告が多いことが影響していると考えられる。
② 胎児における尿産生は妊娠初期(8~11 週)から始まっており、胎児の腎血流を低下させる NSAIDs の作用が妊娠 20 週以前には生じないことを積極的に支持する知見は得られていないことから、妊娠時期により当該リスクの有無が異なるとまではいえないと考えられること。
低用量アスピリンについてはどう取り扱うか?
低用量アスピリン製剤は、全身性のCOX阻害作用を期待した薬剤であるため、当該リスクを情報提供する必要性はあるが、医師の管理下にて常用されると薬であることから新たな注意喚起は不要と判断.
局所製剤(貼付薬)についてはどう取り扱うか?
局所製剤は、全身性の作用が期待される製剤と比較して相対的に曝露量が低い事から、新たな注意喚起は不要と判断.
※ただし、ロコアテープ(エスフルルビプロフェン・ハッカ油製剤)は全身性作用があるため禁忌などの注意喚起が掲載されています.
参考
1:Pediatr Develop Pathol. 2001; 4: 461-6、Kidney Int. 2002;61: 1210-9
2:J Obstet Gynaecol 2004; 24: 226–9
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