日本に宗教右派なんていないのである

この本の著者の山口氏は米国在住だから宗教右派即ちキリスト教右派の存在は実感されていると思うのだけれど、日本ではキリスト教徒は人口の1%に過ぎない。その中でキリスト教右派なんてそれはもう芥子粒くらいのマイノリティに過ぎない。そう考えると宗教右派なんていないわけである。

そうなると彼女たちが戦う相手は非左翼日本人ということになる。つまり日本的思想、日本人の考え自体が宗教右派なわけである。

彼女たちはそういう思想で日本人に噛み付いているわけである。

フェミニズムを全面に押し出して、官制婚活を叩くわけであるが、そもそも婚活禁止!恋愛結婚万歳という風潮が1980年代より盛んになった日本では非婚化が進み少子高齢化が進んできたわけである。そこでもう一押しだ、結婚自体おかしいじゃないか。結婚自体が男尊女卑だ!そうではないでしょ!男が自分の人権を投げ捨てて女性の召使となって家族を養う性役割を堅持するだけでなくケア労働、家事育児介護全部やれ、というのが今のフェミニズムである。

そりゃまあ空想の世界ではそういうことも言えるだろうけれど、そんな言葉に翻弄された団塊ジュニアの女性たちは子供を産むことなく生殖可能年齢を過ぎてしまいつつあるわけである(一応まだ過去形にはしないでおこう)。いずれにせよ時間を逆転させて肉体を若返らせるわけにはゆかない。いくら高齢男性の精子からは発達障害の子が生まれると強弁しても女性が加齢して行くことによる妊娠率の低下を否定することはできないわけである。けれども、男を叩き、未婚を謳歌した結果、もはや婚姻自体困難になり、あるいは不妊に直面した女性たちが未婚小梨のおひとりさまの人生を他の若い女性たちに強制しようとしているのが今のフェミニズムと言える。

彼女たちの叫ぶバックラッシュとは日本の伝統的な家族観、結婚観であるため、官制婚活すなわちお見合いで相手を決定して女性は良妻賢母として家庭に入り、専業主婦として子育てを行うという価値観である。そのバックラッシュを排除するためには「お見合い婚禁止!専業主婦禁止!女性は男など足蹴にして模範的な労働戦士となって死ぬまで働き続けよ。子供など産み育てるのはけしからん!」という叫びが必要であるわけである。

これは左翼的正義であって、例えばルーマニアで独裁政権を維持していたチャウシェスク大統領は男女に関わらず模範的な労働戦士となることを求め、女性に避妊や中絶を禁止する一方で母親に援助は与えなかった。そういう子供たちは母親から捨てられ、孤児院に送られることになって劣悪な環境で育てられることになった。

そういう子供たちはネグレクトによって愛着障害を示し、また、劣悪な生活環境で成長障害を来し、世界的にも珍しい「愛情遮断症候群」の子供達を大量に生み出したわけである。

マスキュリズムとしても女性が未婚小梨万歳を叫ぶならば「どうぞ」というしかないわけである。これは男はフェミニストから「だが断る」と決然と去り、フェミニズムを否定する女性たちと結婚して幸せな家庭を築けばいいと言い換えることもできる。

こういうフェミニストさんが生きている世界とそれ以外の人が生きている世界はすでにずれているのが日本であるからである。

例えば、日本にはプロチョイスはあるけれど、プロライフなんてないのである。女性はそりゃ内的な葛藤はあるだろうが、人工妊娠中絶を否定されてはいないのである。逆に授かった命は母親の意思を否定してまで助けようなどという運動はない。養子斡旋のNPOは日本では破綻したのである。

障害者の生まれる権利という人権闘争は日本独自のものとして存在していたことは事実だが、出生前診断が解禁されると少なくともその一部は母親の意思で人工妊娠中絶に至ることは間違いない。日本での実証研究では出生前診断で異常が指摘された胎児ではその97%が中絶されたという結果がある。米国のような右派は日本には存在しないので、制度的禁制が解かれれば恐らくはプロチョイス一直線であると思う。

「いや、中絶には配偶者の同意が必要なのはおかしい。たとえ結婚していても夫の権利など否定されるべきで気に入らなければ妻は勝手に胎児を中絶する権利を持つべきだ。」とか「夫婦別姓にして子供の姓はその時の気分で決めればいいじゃないの。妻の姓を子供につけて何が悪いの?男は妻に献上するために金を稼いでくればいいんだよ。つべこべ言わずに男は家事育児をしろ。男のくせにワンオペ育児だとか泣き言言うな!そんな暇があれば料理を作って掃除洗濯しろ!」という話になればまあ明らかに結婚の利益を失った男たちが結婚を辞めるだけだと思われるのである。

実際のところ、男の生涯未婚率は既に28%である。女性の未婚率は17%であるので男の方が結婚に消極的になっているということである。今は結婚離婚を繰り返す男性が女性の未婚率の低下に寄与していると考えられるが、今後、法定養育費などで高額の養育費を政府が高利で強制的に元夫に貸し付ける形で母親に立替払いするような制度になると、元夫側は養育費の支払い負担によって、再婚する余裕がなくなることが考えられる。そうなると、男の生涯未婚率と女性の生涯未婚率が近づくことは考えられるし、女性は離婚することで経済的利得が得られるようになると、離婚へのハードルは下がる。

高収入の男ならばその負担にも耐えられるかもしれないがそうではない男性にとっては結婚に踏み切るかどうかの判断には離婚のリスクが大きく入り込むことになるだろうことは想像に難くないわけである。

そうなると、比較的高収入ではない男性は官制婚活などを整備しても結婚に踏み切れない事例がもっと増えてゆくことであろう。そうなると未婚で一生労働戦士として働き続けざるを得ない女性がもっと増えてゆくわけである。

フェミニズムの観点からするとこういう状態がバックラッシュから解放された状態であって、金持ちだけが結婚できて、そうではない男女は働きバチのように死ぬまでシングルで過ごさなければならないという絵図になりかねないわけである。

これはよくわからんけど、女性にとっては「おひとりさまで一生を過ごせる!」という至福の状況なのだろうか。実際のところはよくわからない。男はまあ、日本の女性と結婚することはハイリスクになることは間違いないので、積極的に海外に出て外国の女性(非フェミニスト)を探すのが良いということになるかもしれない。これは価値観の問題なので価値観の一致する女性を探すために日本男児は世界中を放浪すれば良いかもしれない。

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