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正義の人

Quoraの質問で「自分はテレワークで1日家にいることになったが、近所の新築の家の建築工事の音がうるさい、どこに文句を言いに行ったら良いのか」という質問を見つけた。質問者にしてみれば私はコロナで自粛してテレワークをしている、三密を避け、8割の接触を減らすというStayHomeを実践する正義の人である。それに引き換え、工事を自粛することもなくうるさい音を立ててなんだ!少しは正義の自分に遠慮して工事を自粛しろ!という気分なのだろうか。

たぶん、今、新築工事をしているということは2月3月は工事の資材を作る中華の工場が武漢発の感染流行の余波を受けて止まってしまい、延期を余儀なくされていたに相違ないのである。ウチも奥様が「トイレを新しいのに変えたい」といって春休みにリフォームの工事を始める予定が「工場が止まったのでモノが入りません」と延期を余儀なくされている。中華様の工場が動き出したので、という連絡が来たけれど緊急事態宣言でまたストップである。ゴールデンウイーク明けかなと言っていたが、緊急事態宣言はさらに延期されるようだから奥様念願のトイレが据え付けられるにはまだ時間がかかりそうである。トイレ様が壊れているわけではないので私としてはまあどうでもいいのではあるが。

新築の家であれば引っ越しの準備もあるだろうし、のんびりと延期を待っているわけにもゆかないのではないか。もし新築の家を待つ間、ホテル暮らしでもしていようものなら出費も随分と嵩むことだろう。できる限り早く家を作って貰わなければ落ち着かないことであろう。

騒音の話といえば他にもある。数年前、「保育園落ちた日本しね」とブログに書かれたことが話題になって、野党が「待機児童をどうするのだ、今すぐ保育園を作れ」と大騒ぎしたことがある。そして、東京だったか、住宅街の真ん中に保育園を作る話が持ち上がると、今度は地域住民が「保育園ができると園児の声がうるさい」と反対運動を始めたというのである。

高齢者の多い静かな住宅街であったらしく、反対する住民の気持ちもわからないではない。住民にとっては静かな環境を守るのが正義だったということであろう。一時期はテレビのワイドショウで紹介されたけれどもそんなにテレビばかり見るわけにもいかず、結局顛末はどうなったか分からない。

私にも似たような経験がある。もう10年近く前になるが、我が子を保育園に預けていたのだが、その保育園は向かいの大きな団地の方に向かって園庭に防音壁が建てられていたのである。1歳時からお世話になったが年中年長になればヤンチャになって、午後6時頃になんとか迎えにゆくと、我が子が保育園の前の駐車場で同じようにお迎えを待っていた友人たちとキャーキャー騒ぐわけである。

私も仕事の疲れもあり、子供たちは保育園から解放されて嬉しいのだろうとその様子をぼんやり眺めていたら、保育園の先生が中から出てきて血相を変えて「早く帰ってください」と言うわけである。流石に怪訝に思って帰宅後、妻に尋ねてみると真相はこうであった。その大きな団地に一人の男の人が住んでいて、夜勤の仕事をしているために昼間は眠らなければならない、その時に園児の声がうるさいので眠れないと言うらしいのである。そのために保育園は団地に向かって園庭の園児たちの声が聞こえないように防音壁を建てざるを得なかったようなのである。保育園の駐車場は団地の目の前なので、夕方とはいえ、園児たちの騒ぐ声が聞こえるとまたクレームが来るかもしれないと慌てて保育園の先生が出てきたということのようである。

「ええ?子どもたちなんて騒ぐのが仕事じゃないの?」と言ってはみたが、防音壁を建てさせるほどのクレームである。尋常なものではなかったのかもしれない。

そういえば、最近、岡村氏が不景気になると可愛い女の子が風俗に入ってくると下卑たトークをして女性たちから猛批判を浴びているらしい。まあ、その辺のエロオヤジが言いそうなセリフではある。年齢的にはもう50歳近いとおっさん以外の何者でもないのでエロオヤジで何が悪い、と言いたいところだが、エロオヤジにクラスチェンジするにはそれなりの修行が必要なのであろう。私もエロオヤジ的言動をしてみたい時があるが所詮は鬼にはなれず、生成(なまなり)にしかなれないのだろうと思う。生成ならば女性たちの「正義アタック」には敵わない。この「正義アタック」はかの禁酒法を生み出したのと同種のパワーであろう。正義のためにはギャングどもがはびころうともお構いなしなのである。

まあ、この世は今や右を見ても左を見ても正義ばかり、正義の押し売りには事欠かない世の中になってしまった。その割に世の中は良くならないのが面白いところである。いや、私の目から見ると結構いい世の中なのだが。正義の彼らには不正義の人たちが下僕として正義の人にご奉仕しないのが不満なのだろうと思う。かくして彼らは不満ばかりを積み上げてゆくのだろう。

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