亡国への道は
どこかで、226事件の生き残りだったかの人が、「自分たちは226事件を起こして鎮圧されたが、戦争に負けてGHQが来てやったことは自分たち226事件の一味が目指したことと同じじゃないか」と書いておられたのである。
無論、それは誤りである。いかに彼らが正義の心に燃えていてもそのことで他人の命を奪う権利などない。昭和帝が反乱鎮圧を命じたのは当然のことである。戦後にGHQが226事件の首謀者たちの主張と似たようなことをやったのはただの偶然である。
というより、当時の日本の問題は多くの人に見えていたというだけのことであろう。問題があったからとてその問題の解決に武力を用い、故なくして殺人を行うことで遂行しようというのは単に文明国のすることではないというだけである。
旧軍国主義日本の時代であってすら、日本には曲がりなりにも議会があり、言論の自由も一定程度認められていたわけである。定規で線を引くように解決に線を引いてもそこには崖があるかもしれないし、底なし沼があるかもしれないのである。
いやしくも文明国の人間であればたとえ少々回り道になろうとも多くの人が命を落とさずにその解決への道を設定するのが当然である。いかに非効率に、もしくは無駄に見えたとしても民主主義の手続きを重視するのはそういうことである。
以前、しばしばロベスピエールのことを書いたが、彼はフランス革命における急進派の弁護士であった。つまりインテリである。彼はフランス革命を速やかに遂行するために暗殺をしまくったわけである。けれどもそれは人々の恨みを買い、ついにはロベスピエール自身が暗殺されたのである。
日本だって幕末には天誅の名の下に例えば土佐の岡田以蔵や薩摩田中新兵衛などが斬り殺しまくったので欧州の新聞にも「ローニン」の凶行ということで報道されまくったので基本的に日本はヤバい国という欧州人への固定観念が出来上がったくらいである。
日本のテロリズムはテルアビブ乱射事件で再び欧州人に恐怖を思い起こさせたかもしれないし、その流れはオウム真理教の地下鉄サリン事件に繋がっているということであろう。つまり日本は世界的にテロリズムの総本家である。
そういう日本でテルアビブ乱射事件の主犯格が刑期を終えて出てきたわけである。もちろんご本人は反省もしておられることだろうし、二度とテロリズムに関わるつもりもないと信じている。けれどももう無邪気に周囲の人たちが伝説のテロリストとして持ち上げていたわけである。自分たちで地道に社会を変えようという気はなく、伝説のテロリストの銃弾一発で世の中を変えたいとでもいうのだろうか。そういう無邪気な信仰こそが危険なのである。
先日、安倍首相の殉難も一年を過ぎたが、その犯人とされる男への減刑嘆願が盛んだという。彼らはロベスピエールをもっと必要としているというのだろうか。
気に入らない奴らを力で押さえつけ、あるいは殺しまくっている国は東南アジアにある。ミャンマーである。ここはアウンサンスーチー氏の統治に反対する軍部がクーデターを起こし、アウンサンスーチー氏を有罪にして収監し、軍政に反対する市民をガンガン虐殺して反乱軍を鎮圧しているそうである。何ヶ月か前に報道特集でミャンマーの反乱軍の取材を放映したのを見たことがある。テロリズムを称賛する左派も流石に知っているのではないか。
スーダンの内戦では日本政府は帰国せよという命令をスーダン人に出したそうである。日本の大使館すら避難したスーダンに帰れというのは如何にも酷い話であり、例のスリランカ女性の死亡事例で騒いでいた弁護士さんたちも即座に反応したそうであり、日本の法務省もきちんと対策をとったようである。ああいうサヨク弁護士どももこういう事例できちんと仕事をしてくれると日頃の狂気に近いような主張も聞き流さなければならないのかもしれぬ。こういう異常事態発生の時に速やかに対応するためにメートルをあげていてもらわねばならないということである。
こういうグループはたとえ主張が奇矯であっても、とにかく人を助けたいわけである。あのスリランカ女性にしても彼らの無条件に釈放して在留資格を与えよという意見(でいいのかな)に反対している人だって死んでよかったなどと考えている人などいないだろう。日本での釈放にこだわらずに故国で健康に過ごした方が良かったのではないかと思う人がほとんどではないか。スリランカ人の帰国に賛成した人でも多くの人は内戦中のスーダンには無理矢理帰れとは言わないのではないか。
日本の難民申請を阻止するためには内戦中のスーダンに帰れ、それで死んでも知るものかという短絡的な考え方はテロリズム称賛の主張と通底するのではないか。無論、右派にも同様の主張はある。例えば「日韓断交」の主張である。これもかつては韓国側が親中政策を取り、むしろ北朝鮮との再統合を目指して日本を仮想敵国として日本に無理難題を吹っかけてきたことで、憤りのあまりつい口に出してしまった人もいるかもしれない。
けれども、現在は韓国もややしおらしくなって、例えばかの徴用工問題にしても韓国政府が代わりに支払うと言い出している。スジとしては日韓基本条約で韓国政府が日本から金を受け取ったのであるから韓国政府がそのお金を支払うのが当然であるわけである。そうであれば一応のスジを通した韓国政府を評価して、日韓断交などは取り下げるのがスジである。
現在は旧挺対協の周辺に北朝鮮の手が伸びてスパイだったのではないかということで裁判が行われている。挺対協の尻馬に乗って日本を叩いていた野党はどうかというと、日本にはスパイ防止法がないから取り締まれないということであろう。スパイ防止法絶対反対を叫んだ日本の某野党にとってみれば命拾いというところではないだろうか。
今になってなお、日韓断交を叫ぶ人はどちらの味方なのかもうわからないわけである。愛国者であれば日韓断交というのはすでに短絡であって、テロリストを称賛するサヨクたちと何ら変わらないのである。
引用はしないがかつて私たちと論争した某フェミニスト教授も他のフェミさんからキャンセルを仕掛けられているようである。これも同様の短絡であろう。こういう短絡に違和感を持たない人はロベスピエールと同じ暴走を行う危険があるわけである。フェミさんがこちらのような右派を叩く話ではないのである。一時は筋金入りのフェミニストと思われた人が同じフェミニストに叩かれる。仲間割れである。
仮に、あの226事件が成功して昭和維新が達成されても同じことが起こったかもしれない。仲間割れによる内訌である。幕末にも維新の先頭を切ると思われた水戸藩は少しの意見の違いで内訌により俊英が殺し合って人材が尽きてしまったことで明治維新の頃には存在感を失っていたという。
これからの日本は少子化で若者の人数が少ないのである。つまらぬ短慮で諍いを起こして殺し合うようであればもう水戸藩のように亡国しかないのである。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?