診療報酬の引き下げは医師の心を折りそう

まあ、こういう煽り記事で開業医を速やかに引退に追い込むというのが財務省の目論見かな。w

国民皆保険の保険料を上げて開業医を辞めさせる方向に持っていけば、もう儲けきった爺医は悠々自適で引退できるだろうし、開業で借金したのをまだ返せていない金のない医者は資金がショートして医院を閉めて勤務医に戻らざるを得ない。医師会などより看護師会の方が票も大きいわけである。勤務医を奴隷医として扱き使い、勤務時間以外は自己研修の時間として働かせ続ければ要は単なる無給のサービス残業として酷使できるわけである。無論、名目上は残業なしの明朗会計、基本給だけの薄給でこき使えることになる。

医師はもう開業という逃げ道を塞がれたことになるので過労死か過労自殺のどちらかを選ぶ自由が与えられるわけである。国民はザマアミロと医師に自由に石を投げることができるので、医師はいわゆるローマ帝国の臣民にとってのパンとサーカスということになる。

みんなが開業医にならなくなれば病人は病院に殺到することになるわけである。その患者たちを過労で意識絶え絶えの医師が診察するという美しい光景が展開されることになる。

患者たちは1日をかけて50キロ、いや100キロも離れた病院に受診に来るのだからそれなりの成果を持って帰りたい。医師の方はそういう患者を百人くらい見なくてはならないので、超高速で診察する必要があるわけである。例え3分診療であってもそれだけで単純に百人なら300分、つまり、5時間かかるわけである。当然、初心の人にはもっと時間をかけなければならないし、検査が必要な人にはその説明や検査結果説明の時間が必要になるわけである。しかも、多くの病院医師は当然ながら入院患者を受け持っている。普通の人は医師の仕事は外来診療だけと信じているので5時間診察するだけなら簡単な仕事だと考えがちであるがそれで済むわけがないのである。

しかも、今回のコロナみたいに急患が飛び込んでくるとその対応もしなければならないし、家族への説明も必要である。

日本は主治医制をとっている病院が多いので受け持ち患者がいると土日であっても出勤する医師は多い。もちろん当直医はいるのだが、本人や家族に時間をとって説明するとなれば休日の方が都合が良いこともある。平日は家族が忙しいと来てくれなかったりする。

でも医師って高給なんでしょと言われるわけだが、実際、医師の給与水準は30年前から上がってはいないのである。これは医療費の高騰分の多くは薬剤費の高騰で説明できるから人件費はそれほど増えてはいない。そりゃ長年やっていると職階は上がって行くのでその分給料は上がって行く。けれども、それは一般企業でも同じことだろうし、その水準もそう上がってはいない。

薬剤の開発は現在、巨費が必要になっているので、その分、高騰し続けているのが現状である。なので、診療報酬を下げたとしても薬剤費の上昇でそんなわずかな節約は吹っ飛んでしまうことは想定の範囲内であろう。

つまり、医師を悪のイコンとして石礫を投げて一般市民の溜飲を下げることは一般市民のフラストレーションやルサンチマンを一定程度解消するであろうが、その分、医師のやる気は削がれ(自分に憎悪をもって石を投げつけてきた人を良心的に診察できるであろうか)、それまで荒稼ぎしていた爺医の抜けた穴はもう収支がペイしなくなって誰も塞ごうとしなくなるであろうから医療過疎が酷くなって困るのは市民自身になるわけである。

何年か前に弁護士さんもたとえば稼げない国選弁護士の当番になる人は成り手が少なくて困っているとかいう話を聞いたが、あれも要はペイが少ないところには人が集まらないというだけのことであろう。同じことは医療でも起こり得るわけである。

サヨクの人たちには医師のプライドをズタズタにして心を折ってやればもうサヨクの奴隷になってどんな無茶な命令でも従うはずと楽観的に考えている人もいるかもしれないが、むしろ、医師を続けて行くにはモチベーションこそが大事なのである。おっさんやおばはんのきったねえうんこやしっこをとって血液や髄液、汚い膿も調べてなんとかその人の病気を治そうというのである。

患者様である。患者様を神様と思え、医師は下々の奴隷だから平伏して治療せよ、患者様の汚え足を喜んで舐めろってサヨク様はいうかもしれないけれど、そんな汚えものを見たくはないので謹んで辞退させて頂きますと多くの医師は言ってしまうかもしれない。

多くの医師はやっぱり、自分を尊敬してくれて自分の病気をなんとかしてほしいのですと頭を下げてくるような患者さんには「いや頭なんて下げる必要はないですよ、病気をなんとかするのは医師の仕事ですから」というんじゃないかと思うけれども。

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