3年目のデビュー感想文
日向坂46のドキュメンタリー映画『3年目のデビュー』を見てきたので、感想文を提出しておく。少しの間お付き合いして頂けると嬉しい。
※ネタバレしかないです。ご注意ください。
前提として、僕はドキュメンタリー映画というものを見るのが初めてだった。
普段映画を見る際はストーリーへの没入感を大事しているのでやったことはなかったのだが、今回は途中から、初めてメモ取りながら映画を見てみた。
手もとが見えないまま書いたのでぐちゃぐちゃである。
上映中に気になったシーンを書き留めたこのメモを参考にして、一つ一つ振り返りながら感想を書いていきたいと思う。
また、映画全体の構成については〈ショウさん〉の書かれているこちらのnoteが大変分かりやすかったので、ご紹介させていただきます。
【1】 けやき坂46時代
冒頭はけやき坂時代を振り返る内容。
これは『46分の予告編』とほぼ同じ中身であったし、『日向坂46ストーリー』でも綴られていた話が中心だったので、落ち着いて見ることができた。おひさまとしてはもう何度も聞いた話だったが、日向坂を知らない人に向けてとしては、とても丁寧な導入だったと思う。
何度も見た映像となると、やはり目線は「推し」にいってしまうもので、印象に残っているのはなっちょの表情だ。
TIF事件や、武道館3DAYSに向けての挨拶などでのキャプテンの言葉を聞くなっちょの表情は、とても真剣なものだった。口をつぐみ、地面を見つめて、「うんうん」と頷く姿は、一つ一つの言葉を大切に噛み締めているようにも見えた。
相手の思いを汲み取って、寄り添おうとするなっちょらしいなと思った。
あとは、みーぱんが所々で良いガヤを入れていた気がする。ほぼ忘れてしまったが、めみが誕生日ケーキのロウソクを消す時に時に放った「16歳の"フー"は?」 が一番面白かった。
そして構成について。
『日向坂46ストーリー』を読むと、各メンバー個人の成長には「演技」が深く関わっていたことが推測されるのだが、それらを省いて、映画の縦軸となっていく「メンバー同士の絆」と「ライブでのパフォーマンス」に内容を絞っていたのが良かった。
あくまでもこの映画は、日向坂46の"グループとしての成長"を描いたものだというのがよく分かる展開だったと思う。
けやき坂時代のメンバーの映像を思い返すと、すぐに「涙」を流す姿が目に浮かんでしまう。
それは彼女達の苦悩と葛藤の象徴だった。
【2】 日向坂46の誕生
日向坂46への改名が決まり、迎えた〈デビューカウントダウンライブ!!〉。華々しいライブの裏で、彼女達は最初の「別れ」を経験する。
長濱ねるによる、欅坂46卒業の告白。
各々が立ちすくんだまま、動かずにその話を聞く様子は、ねるとの間に生まれてしまった"心の距離"をそのまま表しているようで悲しかった。
この後、1期生がねるを取り囲んだと思うのだが(『日向坂46ストーリー』参照)、そのシーンをカットしたことは演出上とても効果的なことだったと思う。(※理由は後述)
そして続くように柿崎芽実の卒業へと話は移る。
ここでは、ひらがなけやきへの未練を必要以上に強く感じさせるような編集に少し不満を抱いた。しかし、改名によるメンバーの葛藤を描く上での、1つの重要な側面ではあると思うので、演出上としてはこれも良かったと思う。
彼女達が迎える2度目の別れ。
ささく、かとし、まなふぃの口からその思いが語られる。
「もっとできることはあったのでは無いか。」
それは言わば、私たちがめみを"見捨てて"しまうことになってしまったのではないか、という後悔の念だ。
もちろん、『立ち漕ぎ』でのささくのインタビューや卒業の際のめみのコメントを聞けば、その別れは明るいものだったと分かる。
それでもやはり、印象に残っているのは彼女達の流す 「涙」 だ。
僕はここまでを見終えた時、このままでは日向坂46の持つ「ハッピーオーラ」という魅力が観客に伝わらないのではないか、という一抹の不安を覚えていた。
しかしそんな不安は杞憂だと言うように、彼女達はここから大きく成長していくこととなる。
【3】 激動の中での成長
観賞前、日向坂46のパートはセンターである小坂菜緒の成長を描いていく流れだと思っていた。
しかしこの映画は、グループ全体の成長譚なんだということに、徐々に気付かされていくことになる。
日向坂46というグループの強さは、仲間が傷ついた時にこそ発揮されるのだ。
特に驚かされたのは、水疱瘡でライブの不在を余儀なくされたこさかなの代わりにセンターを務めた、丹生明里と、河田陽菜についての裏側。
『セルフDocumentary』や『日向坂46ストーリー』でも「成長できた経験だった」と語っていたとは思うが、あれほどまでに切羽詰まった中での努力があったとは知らなかった。普段の無邪気な明るさとは打って変わった2人の真剣な表情や、パフォーマンスにかける思いと悔しさを知って、心が打たれた。
そうした2人やグループの成長をこさかなが見届ける。そしてそれは、彼女自身の成長にも繋がっていくのだ。
またその姿を見守る金村美玖も、彼女を支えるため、グループを大きくするため、力を蓄えていく。
「近くにいる人の支えで、人は頑張れるっていうのをみんなが経験したから」
ここでもなっちょの言葉が胸に刺さる。
日向坂46というグループは、お互いが支え合って成長していく、まさに相互補完型アイドルグループなのだ。
また、ここに関連するシーンの中で見ていて嬉しかったのが、スタッフの皆さんと日向坂メンバーの連携の様子だ。
というのも、『日向坂46ストーリー』を読むと、けやき坂時代に何度かスタッフとメンバーの間ですれ違いが起こっていたことが分かるので、僕自身あまりスタッフの皆さんにいいイメージを持てていなかった。
しかし、厳しい言葉を掛けながらも、メンバーと向き合いながらより良いパフォーマンスを目指していこうとするスタッフさんの姿を見れて、メンバーとスタッフが一丸となって日向坂46を作り上げてくれているんだなと、実感することができた。
紅白出場決定時の言葉や、画面の奥でダンサーさんと会話するささくなど、各所でスタッフとメンバーの信頼関係を確認できたことは、この映画を見た中での嬉しい収穫だった。
そして次なる成長を見せるのが上村ひなのなのだが、その前に触れなければならないのが、井口眞緒の卒業についてだ。
彼女の卒業は、ひなのにとっても大きな出来事だった。
実はグループ最年長だった井口と最年少の上村は、不思議と通じ合うところがあった。
*
ふたりの会話を聞いていたほかのメンバーが、「ひなのの唯一の理解者は眞緒」と言うほど感性が似ていた。
*
柿崎芽実、濱岸ひより、井口眞緒。なぜか上村にとって大切な人ばかりが遠くに行ってしまう___。
(『日向坂46ストーリー』より)
井口眞緒が皆に週刊誌に撮られた事実を告白するシーンで、僕の目線は自然とひなのの方へ向いていた。
ひなのは瞬きを堪えるように潤んだ瞳大きく見開き、一瞬少しだけ口角を上げた。それは涙を流すまいと、悲しみを認めまいと、必死に笑顔を作ろうとしているようにも見えた。
そして、活動自粛を報告した井口をメンバーが取り囲むシーンが映る。井口に向かって厳しさと共に、優しさを込めた言葉をかけるささくやおたけの様子は、めみの卒業を乗り越えた彼女達の、もう"誰も見捨てない"という決意の表れのようだった。
その後、井口は卒業することになる。
卒業を報告する場面で映されたのは、笑顔で井口に飛びついていくメンバーの姿だった。
長濱ねるの卒業の際に生まれていた距離、柿崎芽実の卒業の際に感じた後悔、2つの大きな「別れ」を経験した彼女達がとったのは、笑顔で仲間を送り出すということだった。
悲しみさえも笑顔に変えていく、それがどんな時も光満ち溢れる、彼女達の"ハッピーオーラ"の力なのだ。
もちろん、ねるもめみも最後は笑顔で送り出したはずだ。だが、「涙よりも笑顔で」という思いはメンバー自身の成長だと思うし、編集の仕方として、「メンバーの卒業による成長」という物語を上手く演出できていたと思う。
だからこそ、井口の卒業シーンは一番の感動ポイントだった。今も書きながら涙腺が緩んでしまっている。
そして、話は上村ひなのに戻る。
大切な人達がいなくなってしまった彼女を助けたのもまた、小坂菜緒や渡邉美穂を初めとしたメンバー達だった。
特に、やはり美穂については触れなければならないだろう。多くの方が仰っていた、めみの卒業セレモニーでささくのもとへ駆け寄る姿などからも分かるように、彼女の仲間を思う気持ちはとても強い。
練習の中でひなのの隣に立ち彼女を支える姿を見て、『アザトカワイイ』での隣同士の関係にも納得がいってしまった。
"もし仲間が倒れた時は 僕が背負うから"
『約束の卵』にあるこの歌詞を最も体現しているのが美穂だと、再確認することが出来た。
だというのに………〈ひなくり2019〉の映像で、彼女がこの歌詞を歌った時の表情をカットしてしまったのはなぜなんだ!!!!最高の顔だったのに!!!!
そこだけ未練が残ってしまっている………
そんな美穂などのメンバーの支え受けてステージに立ったひなのによる〈SSA〉でのコール&レスポンスは、彼女の成長の証だったと思う。サトミツさん号泣だろうな、と思いながら見ていた。
多くの壁にぶつかりながらもそれぞれが成長し、グループとしても大きく成長を遂げた日向坂46。その成果は、年末にかけての怒涛のパフォーマンスの中で現れていく。
生歌を大きめに調整した〈ひなくり2019〉での『約束の卵』や〈レコード大賞〉での生オーケストラ『ドレミソラシド』は、映画館の大音響ならではの迫力と感動があった。
そして、彼女達の成長の全てが実を結んでいくのが4thシングル制作、そして『青春の馬』だった。
【4】 青春の馬
4thシングルの制作は、フォーメーション発表から始まった。
はい!!!ここで突如供給される「ザ・菜の花」要素!!!!!
見事に不意打ちを食らってしまった。3列目の発表が終わった時点で泣いてしまうおすずと、「すずちゃんと同じタイミングで2列目にいけて嬉しい」と話すなっちょ。は〜〜〜尊い。
なっちょとおすずはフォーメーションにおいて切っても切れない関係性なので、ぜひ『日向坂46ストーリー』の333ページと、『月刊エンタメ5月号』のインタビューを読んで頂きたい。
そして初フロントに選ばれた、金村美玖と東村芽依。2人のコメントに込められた意気込みからも、その成長が伺えた。
そして日向坂46は『青春の馬』に出会う。
その曲が示してくれたのは、「人の背中を押せるような存在になる」という、日向坂の目指す新たなパフォーマンスの答えだった。
そして、振り付けをしたTAKAHIROさんからも『青春の馬』についての思いが語られる。
「日向坂46は、困難を包んで全力でぶつかっていくグループ。そしてこの曲は、今の日向坂だからこそ最大限にパフォーマンスできる曲なんです。」
さらに、もう1つ紹介しておきたい。
《松田好花》
TAKAHIRO先生がおっしゃっていたのは、
「アイドルがキラキラと輝いているところだけを見せて、頑張ってと応援されても、どうせ立場が違うと思われてしまう。そうじゃなくて、実際にメンバーも苦しんでいて、それでも立ち上がって、上を目指すんだという姿を見せるんだ。そのためには全力で踊ることによって伝えるんだよ。」
ということでした。その言葉を胸に踊りました。
(『BRODY/4月号』より)
"君は絶対諦めるな 何があったって"
ここまで映画を見てきたから分かる。日向坂46は誰も"諦めていなかった"。
"足を止めちゃそこで終わる もう走り出せない"
日向坂46は誰もその "あゆみ"を止めなかった。
『 青春の馬』は日向坂46が求めていた答えであると同時に、日向坂46にしかそのパフォーマンスを届けることができない曲だったのだ。
間近に迫った〈DASADAライブ〉。
映画の撮影があり、リハーサルにはセンターの小坂菜緒の姿はない。しかし、こさかなにも、メンバーにも、もう悲しみを感じさせる表情は見られない。彼女達はお互いを信じ合いながら、ただ全力で前を向いていた。
デビュー目前、『キュン』のMV撮影現場には、一人俯く小坂菜緒の姿があった。それから約1年。
彼女は雪山にまた一人。
でももう "一人じゃない"。
仲間たちが待っている大好きな居場所が彼女にはあるから。
ライブ当日、復帰ライブとなる濱岸ひよりに声をかける、にぶちゃんとおすしがいた。映画の中で何度も見てきたメンバー同士の支え合う姿であり、2人の成長した姿だ。
確かに感じるクライマックスの予感。
そしてついに『青春の馬』のパフォーマンスが始まった。
おすしの心の炎を青く燃え上がらせたような激しいダンスや、メンバー全員の表現する"全力の姿"に釘付けになる。
そしておすしがひよたんの手を取ってのペアダンス。ひよたんの目に、メンバーの目に浮かぶ涙、それは日向坂46の"絆"を確かに表したものだった。
けやき坂46としての苦悩の3年、日向坂46としての激動の1年、その全てが集約されたパフォーマンスは、力強く僕の背中を押してくれた。
こうして、日向坂46は"3年目のデビュー"を駆け抜けたのだった。
【5】 2年目に向けて
日向坂46はデビュー1年目を精一杯走り抜けた。
そのスピード感とは対照的に、映画のエピローグは一息つくようにゆっくりと進んでいく。
久しぶりにこさかなと再会したメンバー達の様子は、とても暖かい笑顔に包まれていた。そのあどけない表情は、彼女達がアイドルであるのと同時に、普通の女の子であることを僕らに思い出させる。
河川敷で束の間の休息を過ごす中で、松田好花が皆の思いを代弁したかのように言う。
「なんか円陣したいですね。」
そうして彼女達は円陣をする、2年目に向けて。
空まで届け! ぽかぽかキュン!
1人じゃない
仲間と共に
高く跳べ
日向坂46!!! ヒー!!!
仲間と共に、さらに高みへ。
日向坂46なら叶えられるだろうなと思う。
エンディング曲は『車輪が軋むように君が泣く』だった。
涙を浮かべながらも、諦めず、これからも夢を追いかけ続ける日向坂46のストーリーに、ぴったりのエンディング曲だと思う。歌詞の「古い列車」に合わせて、背景に列車が走っていくのも素晴らしいカットだった。
そしてラストのシーンで、彼女達が一列に並び一斉に跳ぶ姿が後ろから映される。
デビュー曲『キュン』のアーティスト写真が、同じ構図を正面から撮ったものだったのに対し、後ろからの撮影。
それは、
デビュー1年目に飛び込んでいく様子
に対して、
2年目に向かって跳び上がっていく成長した背中
を映していたように見えた。
"簡単な道に意味は無い"
日向坂46の挑戦はまだ始まったばかりだ。
終わりに
僕は『3年目のデビュー』を見終えた後、ティザービジュアルに載っていたキャッチフレーズを思い出していた。
"私たちは誰も諦めない、誰も見捨てない"
本当にこの言葉通りの姿を見ることができた。日向坂46というグループは、誰一人諦めず、誰一人見捨てないグループだった。
コロナの影響で公開が延期になってしまった今作だったが、ラストの展開が「2年目に向けて!」という形だったからこそ、予定通り3月に見てみたかった思いもある。
特に〈ひなくり2019〉での影山優佳が映るシーン。東京ドームが決まったことの祝福に対して、おたけが「かげもでしょ!」言った後のかげの「もちろん!」というセリフが彼女の復帰前に聞けていれば、さらに復帰の"満を持して感"が高まったんじゃないかなぁと思う。
もちろん『アザトカワイイ』のフォーメーション発表のおかげで得られた感動も沢山あったのだけれど。
さて、本当に一つ一つ振り返っていたら原稿用紙16枚に及ぶほどの量を書いてしまった。ここまでお付き合いして下さり、ありがとうございます。
また、noteでは多くの方が『3年目のデビュー』の感想文をあげています。このまま下にスクロールしてハッシュタグを押してもらえれば、書き手の思いが込められた沢山の感想文に出会えるはず。
時間があればぜひ読んでみてください。
日向坂46の更なる活躍を願いながら、ここらで終わりにしようと思います。
最後まで読んで下さりありがとうございました。
それでは。