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【初投稿】交通系ICカードでできる裏技を試みた話【大失敗】

時は2011年。中学卒業式と高校入学式の狭間の春休み期間。
中高一貫校に通っていた私の学校では普通に部活があり、午前練帰りに疲れた私は帰路に就くため最寄り駅のホームにいました。
同じ部活に所属していて、私の親友でもあるタツジ君も一緒に電車を待ちます。
どうやらちょうど改札を通ったくらいのタイミングで電車が行ってしまったようで、東京ながらもローカルなこの路線ではあと15分くらい次の電車が来ないようです。
部活帰りの我々はとてつもなく喉が渇いていました。
ホームには自動販売機が設置されており、タツジ君は迷わず120円のコーラを購入しました。
私も続けてコーラを買おうとしたのですが、120円という金額は中学生と高校生の狭間の私にとっては少し痛い出費でした。
どうにかしてタダでコーラが飲めないものでしょうか。
私も親友のコーラを無償でもらおうとは思いませんでした。
私にだってそれなりにプライドがあります。
都合よく自動販売機の下に小銭が落ちているなんてこともありませんでした。

ここは頭を使って問題を解決することにしました。
着目したのが交通系ICカードです。
当時、自動販売機でICカードによるタッチ決済が可能となり、世間にも浸透しはじめたくらいの時期でした。
たまに老人が「怪しい若者が自動販売機に不正を働いて万引きをしている」と警察に通報することがあるくらいの浸透度です。
私はこの技術を疑いました。
決してまだ完璧な水準ではないだろうと。
要するに、そのタッチ決済が想定していない動きをすれば、バグを起こしてタダでコーラが飲めると踏んだのです。
これなら120円の缶のコーラどころか150円のペットボトルのコーラだって夢ではありません。

今回私が試みた手段は以下の通りです。
① ICカード読み取り部にICカードをタッチする
② 機械が「ICカードがタッチされたことは認識したけど、完璧には内部データを読み取るには至っていない」というタイミングでカードを離す。
③ ①と②を何回か繰り返す

これには超人的な俊敏性が求められますが、幸い私は野球部でした。
つまり手首のスナップには自信があります。
私は自慢の手首のスナップを活かすべく、最大限のパフォーマンスが発揮できる態勢をとりました。
検証開始です。

「せいっ!!!!」
ホームに私の声が響きます。
タツジ君もようやく私の異変に気が付きました。
タツジ君の視線に私も気づきましたが、いまさら実験の手を止めるわけにはいきません。
数回試行しましたが、いずれも失敗に終わりました。
タツジ君が心配そうに私に尋ねます。
「え?なにやってんの?」
「手首のスナップを活用することでタダでコーラが飲めることを実証しています」
そう説明すると、なんかツボッたらしく、タツジ君は口に含んでいたコーラを全部噴き出してしまいました。

これには私も驚きました。
タツジ君は「貴殿が馬鹿だからこんなことになった」と笑いながらキレていました。
タツジ君は非常に真面目な性格で、噴き出してホームに飛散してしまったコーラの回収を試みていました。
正直、私の実験より難しいことをしていると思いました。

かたや自販機に向けてスナップをきかせ、かたや飛散したコーラの回収を試みるという悲惨な光景が繰り広げられていましたが、「まもなく電車が参ります」という案内がこの事態を解決しました。
タツジ君はなんとか迷惑にならない程度にはコーラを回収したようです。
私も80円の水を普通に買いました。

私の今回の実験は失敗に終わりましたが、昨今の自動販売機の決済方法は当時と比べ物にならないくらい多岐にわたっています。
きっと私と同じような思考に至った学生が様々な手段を試みているとは思いますが、コーラを公共の場で噴き出すというのはあまり褒められたことではありません。
親友の視線には十分な配慮をしながら、周囲に迷惑をかけない形で検証を進めてはいかがでしょうか。

※このエピソードはフィクションではありませんが、いかんせん昔のことなので色々曖昧です。






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