ep.16 記録 読書の夏'24
お盆休みは「読書の夏」にしようと決めて実行したということで、読んだ本(漫画小説問わず)について書き記しておこうと思う。
(読了順)(敬称略)
『綾香ちゃんは弘子先輩に恋してる』(Sal Jiang)
前々からXで広告が流れてくるたびに気になってた漫画。何を読もうか情報収集してるときにまた広告が現れて、「この機会に読もう!」と思い全3巻をまとめ買い。数日かけて読んだ。
オフィスラブ×同性愛と言った漫画なんだけれど、キュンキュンというよりはとにかく「いけー!頑張れー!」と応援したくなるような内容だった。
この漫画を読んでると「時代と共に考え方が変わっていくこと」について考えたくなる。
例えば自分はまだネットに氏名などの個人情報を晒すことに不安を覚えたりする。けれど今の子はきっとネットで個人情報を晒すことにそこまで抵抗感はないんだと思う。知らないけれど。位置情報共有アプリやBe Realが流行るのって、そういうことなのかなぁと思ったりする。
こういうのって、当たり前な期間が長いほど考えを変えていくのが難しい。自分はまだわりと柔軟に取り入れることが出来る方だとは思うけれど、この先その新しい価値観をどう入手して、柔軟に対応していくのか。その点は常に模索していきたい。
『正体』(染井為人)
ちゃんと読み終わることが出来た〜!500ページ以上あるからお盆前に買って少しずつ読んでいたのだけれど、無事に全て読み終えることが出来た。一安心。
映画化も控えているということで、気になって購入した小説。内容としては、少年死刑囚が脱獄して逃亡する先々での様子を描いたもの。
読了後の感想はとにかく「虚しい」に尽きる。
これ以上はネタバレ有でしか感想書けそうにないので、最後にとっておきます。
『砂漠』(伊坂幸太郎)
とにかく大好きな本。定期的に読み直していて今回が3回目。
メインとなる5人の大学生のうちの一人"北村"視点で語られる大学生活のお話。
最初に読んだ時は記録上高校生だったらしい。その時の感想は残っていないけれど、2回目に読んだ大学生の頃の記録は残っていたのでまずは抜粋したい。
上に出て来る西嶋というのは5人の中で一番曲者で、アクが強い登場人物だ。この5人で集まり始めたきっかけも西嶋であったし、そこから起きる色んな出来事の大半はやはり西嶋が発端であることが多い。
そんな西嶋になることが出来ないのは、高校生の自分でもわかっていた。誰かを強烈に巻き込む台風みたいな力なんて自分にはない。
だけれど、その周りで一緒に楽しむことなら。西嶋以外の4人にならなれるんじゃないか。大学生活をこんなふうに楽しめるんじゃないか。
そんな憧れを抱いていた高校時代が懐かしくなったのが、この2回目に読んだ大学生の時。
自分は結局、大学生になってもやはり北村たちのようにはなれなかった。
「その方が楽しいだろ」って電話で遊びに誘ってくれるような友達もいなければ、自分から誘えるような性格でもなかった。それどころか、大学の友達と学校の外で会うことはほとんどなかった。
だから「こんな生活できたら良いな」と思えていた高校生の頃が懐かしく、大学生の時はひたすら羨ましかった。
社会人になって改めて読んだ今はもう、憧れもない。ただただ「こんな時もあったな」と遠い記憶を見ているような気持ちでいる。
ただ何度読み返してもこの言葉が刺さる。
北村視点で描かれるこの小説。北村には途中で彼女ができるけれど、出会いや具体的なエピソードなど詳細が語られることはほぼほぼない。基本的には西嶋をはじめ、友達である他4人とのエピソードが中心で描かれる。
ただ、北村は友達にも彼女にも一途だ。友達がこの4人から増えることも減ることもない。彼女が変わることもない。
一方、そんな北村とは対照的な人間関係の描かれ方をしているのが莞爾(カンジ)だ。
彼は「幹事役の莞爾です」という自己紹介の通りの性格をしている。周りにはその場を盛り上げるたくさんのお友達がいる。そして長くは関係が続かない恋人も。
自分はどちらかといえば北村側だけれど、到底5人のような関係には及ばない。だからこそ、莞爾の言葉が刺さる。
学生生活で得ないといけない最大のものは、こんな人間関係だったのかもしれない。
『六人の嘘つきな大学生』(浅倉秋成)
前々から気になっていてようやく読めた!『正体』と同じく今後映画化が予定されている小説。
舞台は就職活動の最終選考で行われたグループワーク。読んだ後の感想はとにかく感情が疲れた。ネタバレ含む感想は、また最後にとっておくとして。
それにしても就活って独特な時期だったなぁと、この小説を読んで思い出してきた。
急にやれ自己分析だエントリーシートだと言われて。「自分ってこう言う人なんだっけ、、、?」と思いながら面接でエピソードを話す。そんな嘘とも本当とも分からないエピソードと各診断で未来が決まってしまう。
たくさん自己分析していたはずなのに、一番自分を見失っていた時期かもしれない。
改めて就活時期の日記も読んだ。エントリーシートでお祈りされるのと、最終面接でお祈りされるのではドン底度合いが違う。内定0の状態で、最終面接のお祈りメールが届いた日の日記はもう読み返したくもない。
そういう特殊な環境下を味わったうえで、この本を読むのと読まないのでは、またこの趣が全然変わってくるのではないかなぁと思う。
以上漫画3冊と、小説3冊を読み終えたお盆でした。ちなみに今はミステリばかり読んでるのもどうかな、と思って『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(七月隆文)を読んでる。久しぶりの恋愛小説だ〜!そういえば、ケータイ小説ってどこへいったのだろう。
やっぱり仕事がないと読書が進む。自分の仕事的に書類をたくさん読む必要があるからなのか、平日はどうしても「活字をこれ以上読みたくない!」という精神に陥ってしまう。
だからなのか、この連休はどんどん読むことができた。身体的には家のソファーにいるだけなのに精神的には随分色んなことを思えて良かった。良いお盆でした。
おわり①
ここからはネタバレ有の感想です。
✴︎ネタバレ有『正体』
この本の登場人物で何でだろう、誰よりも一緒に暮らしていた安藤さんに感情移入してしまった。
彼女は最後まで、自分は彼にとって恋愛対象外だと決めつけたまま、それでも必死に助けた。語られてはいないけれど、きっとあの後の生活は相当大変なものだったと思う。
殺人犯を匿っていただなんて、周囲に顔向け出来ないだろうし、当然会社にもいられないだろう。実際、喫茶店で舞が出会ったときはフリーライターだった。もうすぐ子供が生まれる実家の弟家族にも影響があったかもしれない。
そこまでして助けた彼の、安藤さんに対する思いを聞けないままでいるなんてあまりにも虚しい。
亜美ちゃんが聞いた、彼のこの言葉が忘れられない。
この言葉がどうか、安藤さんに伝わっていますように。そう願わずにいられない。
自分はこの言葉で、彼はなんというか「人間味があったんだ」と思った。
この本を通して彼は日本全国民から追われている身であり、とてもじゃないけれど誰かと心を通わせる余裕なんてないはずだ。そんな状況で人助けするのは、少しの親切心と、後々のことを考えた「義務感」みたいなものもあるのかと思っていた。
安藤さんの章を読んでいる間も彼側の視点で語られることはないから、「彼女を利用するために親切にしている」と捉えることもできた。
ただこの言葉で、ちゃんと感情があったんだなと、本当に親切心で全て動いていたんだなと思った。あまりにも惜しい人を亡くしたね。
✴︎ネタバレ有『六人の嘘つきな大学生』
とにかく六人それぞれの好感度が上がったり下がったり。作者の思うがままに振り回された。
友達であれば何か悪い噂を聞いてしまっても「理由があるのかもしれない」ってすぐ考えられたりする。
実際、羽田野くんは手紙でこう言っている。
あの場でこう思えない、切り替えられなかったのはやっぱり就活最終面接のグループワークという特殊な時期の特殊な状況下であったのは大きいと思う。
就活ってなんであんな変なシステムなんだろう。通常時であれば、すぐこの考えに至ったであろうに。
ただここからは自分の悪いところだなと思う点でもあるけれど、他人や「あ、この人理解できない」と思う人に対しては途端にシャットダウンして考えることをやめてしまう時がある。
人を理解するのって正直大変な行為だ。その人について色んなことを聞いて、知って、ようやく理解できる。そのベースがあるから何があっても「理由があるかもしれない」って思える。
そこを面倒臭がっては、人間関係下手くそにしかならないんだろうね。反省。
ただ何にせよ大前提として人には色んな面がある。そう常に思うことが大切なのかもしれない。
おわり②