偽りとともに向かう先は【17才の帝国 #4】※ネタバレあり
※盛大にネタバレ含みます。ご注意ください。
実験都市ウーアの支持率は51%を示しています。
それはAIソロンと真木総理の政策を「良し」とする市民が、少なくとも半数以上いるということです。
市議会の廃止、市職員の50%削減、そして狸穴商店街の再開発計画。
波乱を巻き起こす政策も多い中、この支持率は確かに大したものです。
真木総理の相棒は地下に眠るAI「スノウ」。
それは補佐官サチと同じ顔を持ち、10歳で亡くなった真木の大切な友人「雪」のAIでした。
雪は、鷲田総理の不正献金疑惑で一家心中した白井秘書の娘でした。
言ってしまえば、鷲田総理は真木総理にとって「友人を殺した人物」でもあるのです。
あまりにも残酷な展開。
老人たちが生きてきた「政治」の世界では、そう珍しくもない事件かも知れません。
ですが、17才の真木総理はどう思っているのでしょう。
老人たちは戦います。
デモ隊で官邸に突撃し、秘密裏に真木総理の排除を目論み、ウーアは失敗だと言い切ります。
「ウーアの向かう未来に、我々は入っているのか」
保坂の言った言葉は、あまりにも辛い言葉でした。
そう言いたくなるような不安を、老人たちは望まぬ変化とともに受け止めるしかないのでしょうか。
スノウは言います。
「【大人のいない街】を作ろう」と。
そこに、老人たちは入っているのでしょうか。
若者たちは戦います。
AIを携え「透明な政治」「謙虚な政治」「救う政治」を行うために。
未来を見据え、住民全員をもっと幸せにすると信じて。
純粋な気持ちと、揺らがない信念を抱えて。
【嘘のない世界】を、このウーアに作るのだと。
しかし、そんな総理の傍らにいるのはAI「スノウ」でした。
彼女はもうこの世にはいません。
言うなればスノウは【偽りの生命体】です。
【嘘のない世界】を。
【偽りの生命体】と作る。
こんな矛盾が、17才の心を蝕んでいくのでしょうか。
若者でも老人でもない彼は、ひとり戦います。
真木を裏切り排除するのか、それともウーアと真木を守るのか。
鷲田総理の言葉の端々には平への圧力と脅迫が見え隠れしています。
真木を排除するのなら、その「次世代の総理候補」という肩書は守られるでしょう。
しかし…構想の立ち上げから関わってきた実験都市ウーアの核とも言えるソロンは、真木を選びました。
真木を裏切ることは、ソロンの意思をも裏切ることになります。
何よりも、平は真木総理の圧倒的な「純粋さ」に惹かれているように見えるのです。
目の前で苦しむ自分に対して、ためらいなく「救いたい」と言える真木総理に。
その行為はあまりにも若さに満ち溢れていて、否応なしに心が揺さぶられます。
しかし。
真木からの「17才の時どんな感じだったんですか」という問いかけに、平は答えませんでした。
その気持ちを抱えながら、平がソロンに問いかけたのは「なぜ自分がソロンに選ばれなかったのか」でした。
答えは明確でした。
「理想を語りながら、そこに真実はありませんでした」
正義とは。
命より大切なものは。
人生の価値とは。
平が答えたその内容に、非の打ち所はありませんでした。
けれども、その言葉は。
【偽りの言葉】でした。
「あなたは自身で気づいているはずです。
あなたにもあったはずの大切なものを、既に失っていることに」
ソロンの言葉は残酷でした。
平がその理想を掲げるためには、自分を偽るしかなかったのです。
心のどこかに存在する、嘘や偽りや偽善、そして建前。
それを持つことが俗にいう「大人」であり、高齢者が占める鷲田内閣を生き抜く平にとっては必要な武器だったはずです。
けれども、その武器を持つということは、とても大切なものを手放すということ。
「僕の17才は、もうとっくに終わってる」
純粋さを持ちつつ、その渦に飲み込まれていく真木総理。
変化を否定しながら、在りし日の郷愁に涙する保坂。
純粋な「正義」を夢見ながらも、齢を重ねた「建前」しか持てなかった平。
たくさんの嘘が蔓延する世界は、AIとともに全ての人を幸せにできるのでしょうか。
「青春SFエンターテインメント」と称した番組ですが、全世代に響くのではないでしょうか。
それがまだ見ぬ青春への憧れか、あるいは過ぎ去った青春への郷愁か。
見る人によって変わるとは思いますが、なんとも壮大なドラマだなあと改めて感じています。
次週は最終回です。
とうとう平は7年前の献金事件の鍵を手に入れるようです。
予告ではスノウの暴走を示唆する内容も。
真木総理は目指す街を作れるのでしょうか。
最後までどす黒い渦を進む平さんは、いったい何を選択するのでしょうか。
保坂さんはウーアで笑顔になれるのでしょうか。
公式サイトには「少年は夢を見た」という文言があります。
少年の「夢」は、この街で実現できるのでしょうか。
もう心境がグチャグチャすぎて、終着点の想像すらつきません。
どうか、たくさんの人が幸せになれますように。
そう切に願いながら最終回を待とうと思います。