オークラさんを知る【自意識とコメディの日々】

※書籍の感想を書いていますが、ネタバレをそれなりに含みます。
1mmも情報を仕入れずに読みたい!という方は、ぜひ本書を読んでからおいでくださいませ。







オークラさんとの出会い

放送作家、オークラさん。
バナナマンのバナナムーンgoldという深夜ラジオでよくお見かけする方で、どうやら「第3のバナナマン」とまで呼ばれる方なのだとか。
さらには源さんを本当にお好きだということで、何度か星野源ANNにも登場されています。
源さんの目の前で弾き語りを披露したり、お誕生日にはプレゼントを贈ったりと、本当に好きなんだなあという印象なのです。

星野ブロードウェイの脚本も!

※余談ですが贈られたプレゼントは色々あった末、放送作家のみゃーもりこと宮森かわらさん宅で使われています笑


正直、オークラさんという方をよく知りませんでした。
「第3のバナナマン」と言われているのだから、さぞ面白い方なのだろうという印象でした。
ただ時折源さんが「オークラさんは大御所」という発言をされているので、その道ではきっと凄い方なのだろうなあと。

そんな私がこの【自意識とコメディの日々】を購入したのは…

はい、源さんやSAKEROCKの話が書いてあると聞いたからです。
欲望に忠実でごめんなさい。

とはいえ、実際のところオークラさんとは何者なんだろうと興味があったのも事実です。
なのでこの本、探しました。
探しまくりました。
何件の本屋さんを巡ったか分からないくらいに探したんですよ。
どんだけ売れているのかと、途中で途方に暮れました笑
結局は在庫が復活したネット通販でゲットできました。
正直、源さんの書籍を探すよりも大変でした笑
これで面白くなかったらどうしてくれようか、と毒づきながら読み進めていったのです。

が。



思っていたのと違う

あのですね、私はこの本をエッセイだと思っていたんです。
や、エッセイなんですよ。それは合ってます。
ただ…内容がとんでもなく「哲学」でした。

実はこのタイトルを見た時も「どういうこと?」で止まっていたんです。
自意識とコメディの繋がりが全く予測できなかったし、オークラさんの人生がコメディだったのかな?くらいの認識でした。

けど、これを読み進めていくと、少しずつ見えてくるんです。
自意識が「お笑いを掴むための」自意識であり、コメディが「オークラさんの人生から作り出されていく」コメディであることが。
そして、要所要所で語られる「お笑いの分類」だったり「コメディのシステム」だったりが、とんでもなく理路整然としているんです。
これってもはや「学問」じゃないか…そう思わせるほどの知識が、惜しむことなく書かれているんです。
しかもお笑い素人な私が見ても「なるほど」と納得できてしまうほどの分かりやすさ。
確かにオークラさんが大御所と呼ばれる理由が分かった気がしました。

これ、お笑い関係者に限らず、万人が読んでも得るものがありそうです。


垣間見える文化、融合する人たち

読んでいくと見えてくるのは、当時の劇場やマスコミの様子でした。
私はただの星野源ファンなのですが、源さんが影響を受けたと思われるキーワードがゴロゴロと落ちています。
シティボーイズ、ティン・パン・アレー、ラジカル・ガジベリビンバ・システム、La.mama、大根仁…
これを読むと、今の星野源と交流がある方々が「いかに同じ土壌で生きてきたのか」が垣間見えます。
これはきっと当時の文化そのものでしょう。
同じ養分を得てきた方々がいかに「豊かな発想」や「自由な思考」そして「好きなものを好きと伝える思い」を持ち合わせているのかが分かります。
ちょっとした歴史書、とも言えるのかも知れません。


もちろんエッセイですから

実際の本は、オークラさんの日常もふんだんに描かれています。
ちょいちょいと「…ん?」みたいなツッコミどころがありますし、若気が至ってんなあと苦笑するシーンも多々あります笑
それがまた、オークラさんという人物像をふわっと浮き上がらせるのがまた面白かったです。
というかオークラさんという名前の発端が既にツッコミどころしかありませんでしたもの笑


予想をはるかにぶち抜いた

269ページという結構なボリュームですが、一気に読み終えてしまいました。
ただのエッセイと思うなかれ、この多層的な内容は良い意味で予想をはるかにぶち抜きました笑
お笑いの歴史としても面白いし、その構造に触れられる哲学的な見方もあるし、オークラさんという人物を知るエッセイでもあります。
かなり多数の有名人のお名前も出てきますので、それも一見の価値ありです。

私が読了した直後、頭に浮かんだ言葉はひとつでした。


「…オークラさん、とんでもない大御所だ」



読了とともに、オークラさんの「化物じみた偉大さ」を肌で感じました。
一見フツーのおじさんなのに、とんでもない人物でした。
これは確かに重版がかかる本ですよ。
メチャクチャ苦労して手に入れましたが、読み終わった後は「読めて良かった…」と素直に思えました笑

ちょっとまだ入手困難かも知れませんが、ぜひ見かけることがあったら手に取っていただきたいです。


これ、かなりの名作です。


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