出産後に手首が痛い!?それ、もしかしたらドケルバン病かも!
リハビリセラピストとして勤務していると時折、腱鞘炎の患者さんを担当することがあります。その中で稀に“ドケルバン病”という疾患を受け持つことがあります。
この疾患は比較的女性に多く、出産後や50歳を過ぎたあたりに発症することが多いと報告されています。
私の妻も出産後から親指あたりを伸ばすように動かしたり、その周辺に触れたりすると痛みが出ており、同様の症状がありました。
出産後に同じような悩みを持っている方がいればと思い参考にしていただければと思います。
※最終的には医師の診断が重要です。数日で痛みがおさまらない場合は必ず病院で受診をして、適切な治療を受けてください。
出産後や50歳代女性に多い⁈
この疾患は統計的に妊娠や出産前後、また50歳前後に発症されることが多いです。完全なエビデンス(根拠)は今のところ見当たりませんが、性別・年齢や発症の起点から考察すると女性のホルモンバランスの崩れが一要因になっているのではないか考えられています。
(統計的な考察であり、ホルモンバランスを検査するのは難しいのです)
①出産後、睡眠不足な状況や身体的にも負担の大きい時期に赤ちゃん(子供)を抱っこする機会が増えて筋肉疲労由来の痛みが出ることも、この疾患の原因というように捉えられています。
②50歳代では今までと同様の生活をしている反面、加齢に伴う筋力低下を生じます。しかし、日常生活上の手への負担は減ることはなく以前と同様でその結果、手もしくは手首が腱鞘炎のように痛みが出るというようにも考えられています。
これら2つはいずれにしても、全て統計的に基づいているだけで科学的根拠は見つけにくいのが現状です。
ドケルバン病かも?どんな症状?
親指をそらしたり、伸ばしたりする際に指の付け根や手首のあたりに痛みを生じるとドケルバン病を疑うことがあります。
ドケルバン病とは1895年にスイスの外科医de Quervainが最初に報告した疾患です。
長母指外転筋腱と短母指伸筋腱という主に親指を伸ばしたり、外に広げる際に用いられる筋肉とそこをトンネルのように通過している腱鞘と呼ばれる場所に炎症が生じ腱の動きが悪くなることで発症すると言われています。
場合によってはロッキングといって指を伸ばす際にカクっというようなひっかかりが生じることもあります。
ドケルバン病の確認方法
イラストのように、親指を手のひらに握り込み、そこから手首を小指側に曲げたら痛みが増強するとこの疾患を疑います。
…が、この方法は正直健康な手でも痛みを生じることがよくありますので判別が少し難しいのが実際のところです。
痛みの場所、指を逸らす・伸ばす際に痛みが生じる、受傷起点がハッキリしないなど症状と問診によって原因を明らかにしていきます。
痛みがひどい場合や長く続いている際には、必ず病院に行って適切な治療を受けてください。受診をする場合は、整形外科を受診されることをお勧めします。
治療の方法・リハビリの実際
①安静
気になる治療の方法ですが、第一選択は主に安静です。要するに、経過観察といことになります。
痛い状態で我慢するのではなく、可能な限り痛みの生じにくい状況で安静に保つ必要があります。
ここで一つ問題があります。
そもそもこの疾患は手の使い過ぎによって生じることがほとんどです。
すなわち、痛みのない状況で安静に保つことが難しい人が多いということになります。
ではどのように安静を保つかというと、主に親指や手首が動かない状態に保つ為のサポーターや簡易な装具を作成し装着します。次の項目で説明します。

②固定
医師からサポーターを処方されたり、リハビリセラピストをによる装具作成といった方法があります。
このような物を使用することで強制的に手の安静を保つ必要があります。
これらのサポーターや装具は基本取り外しが出来るのでお風呂に入るときや、家事などの水仕事を行うことができます。
③温冷療法
患部に熱感があるときにはアイスパックや氷で冷やすことが有効になります。主に熱感を生じている際には炎症が非常に強い状況です。
患部を冷やすことで少なからず炎症を軽減させることが出来ます。
逆に患部が熱感がなく、筋肉や腱の柔軟性を改善させてい場合には先程とは逆の温めるという方法を用いることもあります。
温める場合、個人の判断で行うと最悪の場合炎症を更に悪化させることがあるので、十分注意してください。
④ストレッチ
炎症がひどくない場合にはやさしく筋肉に対してストレッチを行います。これもストレッチの強度や方法は人間の筋肉の付き方に応じて行うので、
かならず専門家に実施してもらうようにしてください。
⑤注射・手術
これらの方法でも痛みが取れず症状が続く際には腱鞘と呼ばれるトンネルに対してステロイドの注射を行いトンネルの中を通る腱(筋肉)の動きを良くして痛みを取る方法もあります。
上記の方法を行ってもどうしても痛みが取れない場合には、最終手段として手術に至るケースもありますが、たいていの場合は上記の方法で痛みが少しずつ軽減してくることが多いように思われます。
※一時的な痛み止めのお薬は非常に有効と思われます。痛みが強い状況は痛みを助長・増強させる恐れがあります。
“痛み”というのは考え方や思考によって、増強したり減弱する特徴を持っています。痛みについては次の項目で説明します。
“痛み”の特徴
少しややこしい話になりますが大事なことなので痛みについて出来る限り簡単に説明します。
痛みというのは痛い場所、要するに患部に生じています。
しかし、“痛み”を認識しているのは、“脳”なんですね。どういうことかよくわからない方もおられると思います…w
例えば、AさんとBさんが共に全く同じ場所に同じくらいの痛みがある腱鞘炎になったとします。
・Aさんは日頃から非常に痛みに弱く日常生活に大きく支障をきたしている人だとします。
・Bさんは非常に痛みに強く多少無理してでも動かすことが出来る為にあまり日常生活に支障をきたしていない人だとします。
この2人は同じ場所に同じくらいの痛みがある腱鞘炎にも関わらず、なぜ我慢できる痛みの程度が違うのかというと、痛みを認識しているのが脳だからと考えられています。
痛みというのは、それまでに経験してきた数々の痛みと比べて痛みの程度が変わったり、今までになんらかの怪我によって忘れられないほどの辛い思いをするほどの痛い思いをした人はトラウマのように痛みを、脳が覚えてしまって更に痛みを増したりと大なり小なり変化をします。
この章で伝えたいことが何かと言うと、先程に述べたようにあまりにも痛みがある場合は、慢性的な痛みに変化する恐れもある為に、一時的にお薬によって痛みを軽減させた状況で安静に保つのが大事という場合があります。
いずれにしても、痛みがある場合には必ず整形外科を受診して適切な治療を受けてください。
手の役割と使用頻度
日常生活を送っていく上で、ほとんどの活動・作業において手を使用します。
ドケルバン病というのは手をたくさん使っている人になりやすいのも事実ですが、手は今後もずっと使うからこそしっかりの治療してほしいと思います。
痛みを長引かせると慢性的な痛みに変わることもあるので、しっかりと適切な治療を受け、活動・作業の中でしっかりと手が使えるようになることを願っています。